氷と雪の国のペンギンたち
旅人は出会うシリーズ12話目冬になるのを待っていました。
皆さんに一番好評だったリスの回は冬の国
ここは氷と雪の国是非寒さの中に温かさを感じていただけると嬉しいです。
幸せになるための旅を始めた僕は荷物の中から方位磁針を取り出して見た。
方位磁針の赤い針が指す方とは少し違うところに黒い長い髭がくっついていた。
戻りたくなったらこっちなのかな?そんな事を思いながらも赤い針が指す方へ向かった僕は自分の事を少しずつ思い出して苦しむことになるとは思わなかった。
幸せになるための旅かぁどんな場所でどんな出会いがあるんだろうなぁ。
そう思って着いたのは冬の国を超える寒さの氷と雪の国だった。
入国料は無料ただ注意書きがあった。
「この先極寒が出口まで続きます。生きて出られた方には出国時に素敵なプレゼントを差し上げます。頑張って生き抜いてください」
脱出ゲームのようだなと思いながら歩を進めた。
入口ゲートをくぐると一瞬で吐いた息は氷となり足元はとても滑りやすく何よりもとても寒い。
慌てて荷物から少しでも寒さをしのげるモノを探しすっかり着ぶくれた僕は雪がわたがしのように降っている空を見つめ、足を一歩一歩踏みしめるように進んだ。
「わぁ!首だけのオバケが出たー!」と子供の声が聴こえて、それから沢山のペンギンたちが現れた。
「これはこれは旅の御人の亡霊の様じゃな」と長老のようなペンギンが僕を見て言うので、ハッと気がついた。
僕は【めぐる】から貰った透明マントまでも着こんでいたせいで生首のような姿に見えてしまっていたらしい。
何か除霊みたいな事をされる前にマントを脱いで、ペンギンたちに挨拶をした。
「初めまして、この国があまりにも寒かったのでうっかり透明マントを着てしまって驚かせてごめんなさい」と言うと子供たちはマジックでも見たかのように喜んでくれた。
「亡霊ではない旅の御人よこの国はそんな薄着では出口まで辿り着けまい、われわれの集落で少し過ごしてから身体を慣らしてみてはいかがかな?」と長老風のペンギンに言われ、お願いすることにした。
とはいえ、彼らは氷と雪と冷たい海に平気で入っていける種族。
それに比べて僕はなんて脆弱なのだろうと思いながらも幸せになるってことはもしかしたら、何かを乗り越えた先にあるのかもしれないと前向きに考えてあるペンギン夫婦の傍に案内された。
「おや、珍しいじゃない旅の人なんて、そんな薄着で生きて出られるの?」と奥さんペンギンに言われた。
「僕もどう慣れたらいいのか分からなくて・・・・・・」と言うと、
「ここには雪も氷もいっぱいあるからまずは住む所を精一杯作ってごらんよ」と奥さんペンギンは言うので、ほぼ寒さでかじかむ手に最低限の手袋をしてその辺の雪をとりあえず大きな雪玉にしようとすると、
子供たちペンギンが「カマクラ作るの?僕たちも一緒にやるよー」とみんなで適度な大きさになった雪玉を集めては、また走り回り随分と大きな雪玉が出来た。
「次はこれを固めてガチガチにするよ!」と子供ペンギンがペチペチと叩いていくので僕も真似てペチペチと叩いて固めた。
「ここからはちょっと大変なんだよね。おかあさーん!」と奥さんペンギンを呼ぶと、
「おやみんなで立派な雪玉になったじゃない、協力して作ったんだからきっと暖かいカマクラになるわね。欲しいのはこれね?」と氷のシャベルを渡してくれた。
「ここからは僕たちじゃ出来ないから旅の御人頑張ってね」と子供ペンギンたちはそれぞれのお母さんの元に戻って行った。
さて、これをどうするか。とりあえずサクサクと氷のシャベルで下の方を掘ってみた。
外側はペチペチと叩いて固めたので最初の方は頑張って掘っていたが、中は結構柔らかく思っていたよりは簡単に掘り進めることが出来た。
途中雪に埋まりそうになりながらも、なんとか外に掻き出して広々とした空間を作ることに成功したあたりで、
「おうおう、旅の御人しばらく楽しんでいってくれや!カマクラの形はほぼ完成したみたいだから仕上げをしてやらー」と多分旦那さんペンギンが話しかけてきた。
「仕上げですか?」
「これはマホウの水で熱を使うと雪を硬くしてくれるんだとかでこういう時には仕上げに丁度いいんだ俺が塗っちまうけどいいよな?」と言うと、返事も聞かずに内側の雪にマホウの水をまんべんなく塗ってくれた。
カマクラが完成すると子供たちも長老風のペンギンたちもみんなが集まってくれて完成を喜んでくれた。
「子供たちも皆さんも手伝ってくれたから完成したんです。ありがとうございます」と言うと、
「何かを作る時にはチームで作らにゃならん、一人でなんとかできる事なんかほとんどないんじゃぞ、それにそのカマクラは旅の御人君のためだけに作ったわけじゃないんじゃよ」と長老風ペンギンが言う。
「君が旅立った頃空き家になったら是非ここいらの夫婦の孵化の間に今後も使わせて欲しいからみんなで作ったんじゃ礼はいらんよ」と言われ、なるほどと思った。
「ねぇ、旅の御人さっきまで寒かったのカマクラ作ってちょっと慣れたんじゃない?」と奥さんペンギンが言う。
そういえば散々雪玉を集めてペチペチして穴掘りをしていたら身体はいつの間にかポカポカになっている。そしてお腹も空いているし、喉も乾いた。
「火を焚きたいんでしょ?」と子供ペンギンが沢山の緑色の紙を持ってきた。
「何でか分からないけど凧のようにしょっちゅう飛んでくるんだこの緑色の紙と白い毛糸がセットでね」そういえば僕の荷物にも一時これが入っていたような気がする。
ありがたく受取りカマクラの中で火を焚こうとすると、カマクラの一部に突然穴が開いた。
「火を焚く前には換気孔開けないと生きて出ていけなくなるぜ」と旦那さんペンギンが開けてくれたのだ。
奥さんペンギンは魚を持ってきてくれて、焚火をして鍋に雪を溶かして荷物の中からキャットニップを取り出してお茶を作った。
それにしても奥さんペンギンと旦那さんペンギンは一緒にいる姿をあまり見ないな仲が悪いようにも見えないんだけどと思い、ふと
「聞きたいことはちゃんと言葉にして相手に聞かなきゃ失礼よ」と言う言葉を思い出して奥さんペンギンに聞いてみた。
「あたしが卵を暖めている間、夫は食料調達に行かなきゃいけないし、返ってきたら今度は夫が卵を暖めて、あたしが食料調達に行かなきゃいけないから一緒にいるのはあまりないかもしれないわね」と言うので、寂しくないかと聞くと、
「こんなに子供たちが賑やかなのに寂しがっていられないわよ、それにあたしたちは家族っていうチームだから子供たちは子供たちでちゃんとあたしたちの姿を見て育っていつか自分の家庭を持ってちゃんとチームワークが出来るように教育していることにもなるのよ」と言う。
確かに子供たちの一見遊びに見えるチームワークでカマクラ作りは始まったようなものだ。
沢山の夫婦の形は見てきたような気がしてたけど、家族の形はちゃんと見て来なかったなぁと少し後悔をした。
「ペンギンの夫婦は離れていても浮気の心配とかしない一途な夫婦なんですね」と聞くと奥さんペンギンの表情が変わった。
「ほとんどのペンギン夫婦は浮気はしないけど、夫婦となってしばらくしても子供が生まれない場合は別れてしまうものだし、子供が居て浮気なんかしようものなら血みどろの喧嘩になるわね」と目が笑っていない笑顔で答えてくれた。
焼いた魚でお腹いっぱいになってカマクラの中に寝袋を敷いて眠りにつこうにも、なぜか今日の出来事が心に引っかかって眠れない。
外に掻き出した雪を集めて固めて氷のシャベルで優しく少しずつ形を整えながら、
「そうだ僕には家族がいなかったんだ」と呟いた。
そこから僕が何故旅を始めたのか色んな事がフラッシュバックしてきて苦しくて、それでも今までの出会いがとても暖かかったことに救われてきたから忘れて居られたんだ。
作り上げた雪像と一緒に透明マントを頭から被り冷たい雪像にキスをした。
僕は家族が欲しい。その為には先に進まなきゃ。方位磁針は次の場所を指している。
翌朝ペンギンたちにお礼を言ってカマクラを是非孵化に使って欲しいと言うと
「旅の御人はみんなすぐ次の場所に向かってしまうわね。頑張って作っていてもなかなか渡せなかったけど、あなたには間に合ったわ。これ使ってね」と白い毛糸のパンツをくれた。腹巻にもなっている毛糸のパンツだ。
「いつか家族が欲しいならあなたはあんまり身体を冷やしちゃいけないからね」と言われありがたく頂戴した。
「出国のプレゼントってこれの事ですか?」と聞くと奥さんペンギンはウフフと笑って、
「ここは氷と雪の国よ、ここはほんの一部あなたが生きて出国出来る事をみんなで祈っているわ」と子供ペンギンたちや長老風ペンギンを集めて見送ってくれた。
冬の国とは違って壮大な広さのようだけど、頑張って進もう!
「ねえ、おかあさんあのカマクラの前にある雪像は何?」と子供ペンギンが母に尋ねると、
「お母さんも分からないけどきっとあの子の大切なひとなんでしょうね」とお母さんペンギンが答える。
おしまい
しばらく旅人シリーズ立て続けに書いて参ります。
楽しみにしてくださる方が居たらとても励みになります。
ご拝読いつもありがとうございます。




