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ファイティングガール  作者: Jack…
大学二年
66/72

新座の赤池くん - 経緯はともかく、レギュラー獲得は自力だ!②

赤池です。


まだ一年の話です。

           ・・・


Aチームでの最初のオレの扱いは、「気持ちよく受けてくれるカベ」だった。

カベ、とはブルペンキャッチャーという意味だが、Aチームであれば、試合や遠征にも帯同できる。


一般入試の一年としては破格の扱いだ。


だが、カンタンな打ち合わせだけで、クセ球でもなんでもいい音をさせて受けるというのは意外と難しい。


古くはU15の全日本で、その当時の中学ベストレベルの複数のピッチャーの球を、その後も変則サウスポー揃いのチームや、究極のクセ球ピッチャーであるマイちゃんの球を受けてたオレにとっては、「いつもの調整」に過ぎなかった。


U15の全日本というのも、ある意味クセ球の嵐だ。

打ち辛い球を普通に投げれる投手=いい投手なんだが、

打ち辛い球というのは基本的に捕りにくいのだ。

分かりやすいのが剛速球。

高校レベルで160越えというと全国レベルだが、これを捕りながら捕手としての役割を果たすとなるとなかなかにしんどいものがあると思う。

人は二つも三つも同時に集中できないからだ。


U15でも140を投げる投手はいた。ただ単に140のキレーなバックスピンなら、U15、中三でもトップレベルの打者なら前に跳ね返すまではなんとかなる。つまり、運次第でヒットは出る。

単に140というだけではなく、動く球、ムービングファストは簡単には打てない。そして捕るのも難しい。

そして捕りながら一塁牽制したり盗塁に対して素早く二塁送球をする、これまた難しい。

それを国際試合の重圧の中で、ほぼフル出場して体験できたのはオレにとってものすごくデカかったと思う。

たぶん、あの数試合で捕手としての能力、経験値とも非常に上がったと思う。


あの大会で打点王になったのもそれが大きい。正直、配球が読めるとまでは言わないが、高めに来たらレフトに流す、内の球はコンパクトにライトに引っ張るなどで長打を量産したのが大量打点のネタだったからだ。

不完全ながらも「場合の手」を理解できて、ある程度実行できたということだ。

ジョージもホームランか三振か、に見えて案外頭を使ったバッティングをしていた。

簡単なところではゲッツーの可能性が高いところでは高目だったら普通に打てそうでもナイス叩き付けを選んだり、きわどい球で入っているのは素直に三振したりしていた。

逆にツーアウトなら、全球フルスイングだ。失敗して内野ゴロになっても結果は変わらないからだ。

オレもそれを見て、色々気づくところがあった。やっぱ、マイちゃん試合に出てほしかったよ・・・


ともあれ、オレは「便利なカベ」として、活躍できた。特に二年、三年のピッチャーにとっては、四年の怖い先輩や難しい先輩と組むよりは一年のオレと組むほうが気楽だからだ。


その先輩が試合に出てうまく投げられなかったときに「捕手との相性」という話が出てくる。正直、それはある、とオレも思う。

一年のときは猫をカブって、ひたすら明るいデカいやつ、として振る舞ってた。ピッチャーからしたらやりやすく、マトもデカいし、変化球もしっかり捕ってくれる。

明るく元気で便利な一年キャッチャーだ。


紅白戦ではすぐ起用された。

キャッチャーとしては基本的にピッチャーを盛り上げるスタイルで入ったが、先輩がちょっとだらけてんな、と思ったら一塁牽制も入れるし、盗塁も五分五分くらいには阻止できた。

バッティングではランナー一塁、または一二塁なら左打ちを徹底した。

一二塁の場面では例のナイス叩き付けもそれなりに使った。

そうでない、比較的自由に打ってよい場面ではジョージのマネでフライアーチ打法、マイちゃんのマネのポール狙い打法も披露した。


ある日の練習後、コーチに呼ばれた


           ・・・


「おい、赤池!」


はい、コーチ!!


「あれ、狙ってできんのか?」


ショートへの内野安打狙いの叩き付けのことでよいでしょうか?


「そう、それだ。あれはグラウンドの状態にもよるから、やれない球場もあるってことには注意しろよ? で、狙ってやってんだよな」


はい!!結果ショートゴロでも進塁打になる可能性がありますし、ヒットになればラッキーです。


「普通のヒッティングから切り替えてできんのか?」


高目ならなんとか。低めはちょっと難しいです!!


「そらそうだな。ボール球でもいけんのか?」


ウエスト球くらいになると厳しいですが、ボール一個なら外角でも行けます。内角なら二個くらいっす!!


「左のくせに内角をショートに打てんのか?」


走り始めながら打てばいけます!!


「・・・そうだな・・・打てるかもな・・・高校のころから練習してたのか?」


はい!!貧打チームでしたので、ゲッツーは絶対イヤでしたし、一点でもいいからしがみついて取るとなると、消去法でアレになることも多かったです!!


「確かにな。一三塁であれをやられると守備側も難しいよな」


はい!!


「で、もしもだが、サインが出たらどれくらいの確率で成功する?」


高目なら・・・結果ショートゴロの一塁ランナーは二塁へ、を含んでいいなら7割5分は行けると思います!!


「なんでフォースアウトを考えてないんだ?」


そのサインが出るということは自動的にエンドランが入るからです!!


「・・・なるほど、そう考えるのか。まあいい。低めはどうだ?」


低めだったら・・・


「低めは、アレ、難しいよな?」


はい!!思いっきり強振します!!


「ベンチのサイン無視ということになるが?」


そうならないように、そのサインが決められた段階でコーチに相談します!!


「なるほどな。相談はいいことだ。で、なぜ強振するんだ?」


空振りでも盗塁援護になります。外野へのポップフライならランナーが安全に戻れます。ライナーでも外野ならなんとか戻れるでしょう。そして落ちればヒットでエンドラン成功です!!


「じゃあ、内野へのライナーでゲッツーの可能性はどうする?」


それは練習することで発生確率を下げたいです!!


「だが、ゼロにはならないだろう?」


はい!それは私個人としては結果を出すために受け入れるべきリスクです!!

チームとしてはそう考える私を使うリスクを取るか、外すか、の判断になると思います!!


「その結果、お前外すことになるかもしれないが?」


はい!それはそのサイン以外が出たところ、特に打て、が出たところでなるべく打率を残し、外されにくいように努めます!!


「お前、口が回るな・・・まあ、いい事だ」


           ・・・


そんな会話の後に、まずは対外練習試合で先発マスクで起用された。

打順は8番だが、出られるだけで充分だ。


細かい試合結果は書かないが、見事勝利し、オレも二安打二打点を挙げた。


そして、一年秋の公式戦。基本的には四年の先輩が先発マスクだが、オレも二番手~三番手扱いでちょこちょこマスクをかぶらせてもらった。


意外だったのは代打での出場がそれなりにあったってことだ。

そして、代打、外野、さらには三塁での途中出場も経験した。


コーチが、「お前、サード行けるか?」と言ったので、クセで「行けます!!」と答えてしまっただけだ。


実際には高校時代の練習試合も含めて・・・紅白戦ですらサードをやったことはない。まあ、シートバッティングで入ったことがある程度だ。


ただ、捕手としてはサードの動きを良く見ていたのは事実だ。

「落ち着いていけ、間に合うぞ、あわてんなよ」という心境でだ。


なので、ショートの先輩に「きわどいところはお願いします!!」と挨拶し、苦笑で返され、来た球を掴んでから、落ちついて一塁に投げただけだ。

一イニングだけだったので、守備機会は一回だけだったが、まあ、エラーにはならなかった。

キャッチャーボックスで見てるのと、実際に守るのじゃエライ違うもんだな、とは感じたが、盗塁の二塁刺殺よりはタイミング的には楽だった。右バッターだったしな。


終わってから、その時ピッチャーをやってた井沢先輩に、小言を言われた。


「ずいぶんゆっくり投げてくれたもんだな・・・間にあったからいいけどさ」


すんません!野球生活初のサード守備でした。


「おいおい・・・高校のころ守ったとかそういうのじゃないの?」


シートで入ったことがあるくらいで・・・試合では小学、リトル、シニア、高校、大学通じてお初です!!


「それでよく『行けます!!』って言ったもんだな!」


先輩、コーチに『行けるか?』と言われたら、五分五分なら『行けます!!』と答えるべきじゃないんですか?

それに、二塁刺殺より姿勢も楽ですから・・・


「確かにな・・・つい言うか。言うな・・・距離は大差無いかもだけど・・・まあ、エラーしなくてよかったわ。次はキャッチャーで頼むわ。オレもコーチに進言しておく」


はいっ!!ありがとうございます!!


           ・・・


そんな感じで危なっかしいながらも実績を積み、ピッチャー横へのビデオカメラ設置が許可された。


フレーミングの練習だ。


流石にこれは一悶着あった。


当時四年でキャプテンの柘植先輩が「自分勝手すぎねーか?」と言ってきたのだ。

正直、もっともな言い分だ。


これを擁護してくれたのが、当時三年、現在四年でエース格の一人、井沢先輩だ。


「柘植さん、オレの球はご存じの通り、流れるんですよ」「知ってる」


「こいつは綺麗に捕ろうとしてくれるんですよ」「オレへの皮肉か?」


「んなことないっすよ。コイツの変化球への執着はちょっと異常ですよ?」「そうなのか?」


「明らかに捕った後で内に動かしたら、ボールって言われるじゃないっすか」「そりゃそうだろ?」


「こいつ、審判には『ミットが少し外に流れてますよ』って風に見せて内に動かしてんですよ」「・・・どうやってんだ?」


「球を中心に手首だけ外に動かしてんです」「ん・・・あ・・・こういうことか・・・そうか・・・おい、赤池」


はい!!


「狙ってやってんのか?」


はい!!


「高校のころに出来てたのか?」


はい!!


「何年から出来てた?」


はい!! U15の代表戦のころに出来るようになりました!!


「それを持ち出しやがるか・・・生意気というかちょっと卑怯だな・・・」


すんません!!


「投手が協力したくないときには無しだぞ!!」


はい!!もちろんです!!


「井沢の球は練習しないとそれが難しいのか?」


はい!!よく動くので!!


「今は完璧じゃないってことか?」


はい!!アンパイアから見て、ミットを内に動かしているように見えるかもです!!


「直せるのか?」


直せると信じてます!!


「絶対直せると言え!!」


絶対直します!!


「よし!!聞いたぞ!!井沢も自分の球を綺麗に受けてもらえるからって、あんまり甘やかすなよ!!」「はい!!」


はい!!ありがとうございます!!


           ・・・


こういう経験を通じて、さらに上の先輩に先輩と一緒に怒られる、というのは先輩と仲良くなる方法として有用だ、ということを学んだ。


そして、秋シーズンも終わり、怖い柘植先輩は、引退式とともに非常にやさしい先輩になった。


キャプテンで正捕手というのは・・・あんな公立高校ですら大変だったんだから、こんな名門大学では想像を絶するプレッシャーと常に戦っていた、ということなんだろう。


「できるとは思ったし、必要か不要かで言えば必要だろうなぁ、とは思ったんだが他の四年の手前、あれが限界だったんだ。悪かったな」


いえいえ、とんでもないです。許可していただき、誠にありがとうございました。


「他のキャッチャーはやってんのか?」


やってないですね。


「だよなぁ・・・実は、オレもフレーミングは苦手だ。特に井沢の球はどこまで切れてくか不明な・・・いや、凄いスライダーなんだがな?」


はい。U15は中三時点でのバケモンピッチャーの巣窟でしたから・・・曲がるにしろ落ちるにしろ速いにしろ・・・すごかったんですよ。


「井沢はそれに匹敵すんのか?」


スライダーだけなら・・・


「おい、聞こえてんぞ!!モル!!」


殴らなくてもいいじゃないっすか!!


「ハタいた程度だろ!!」「それくらいにしておけ。オレも同意見だからな?」


「ヒデえ・・・そりゃないですよ、柘植さん」


他の球を活かすためにも三つめのスライダーも練習してみませんか?


「結構駄目出しされるとメンタルに来るんだけど」「じゃ、あとは、現役に任せた。オレは行くよ」


「ありがとうございました」ありがとうございました!!


「で、やんのか?」


今日は引退式で学ランじゃないっすか・・・このあと追いコンでしょ?オレは飲みませんけど・・・


「まあ、いろいろウルサイから一年はだめだな」


当たり前っすよ。明日から楽しい練習ですから、明日やりましょう。飲み過ぎないでくださいね。


「わーったよ」

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