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ファイティングガール  作者: Jack…
大学二年
65/72

新座の赤池くん - 経緯はともかく、レギュラー獲得は自力だ!①

赤池です。


抜擢はマイちゃんのインパクトのおかげだった、というのは否定できない。


実際、先輩もどこからか・・・というか動画サイトから、彼女の練習動画を見付けてきて、「ホントかよ・・・」と言っていた。


あれは・・・本人の声、歓声が入っていたから丸分かりだな・・・零さまファンクラブ筆頭のマリカさんだね。


ピッチングのほうは普通に打たれている動画しかなかったようだ。そりゃそうだ。第二の練習をシートやケースバッティングにしているんだから、打たせに行っているからな。

あとは最後のセイヤの壮行会的なやつで、あれも一巡目は打たせに行ってるから、打てて当然。まあそれでも下位は空振り、凡打を量産していたけどな。


オレのほうだが、最初からAチームに入れてもらうことができた。


ギリギリ生きてたらしい、U15代表の後光もあるとは思うが、中央高時代の野球部での練習も生きている。


マイちゃんやジョージに刺激されて鍛えた長打力。

正直、竹バットの練習はツラかった。だけど、感覚が研ぎ澄まされてからは、低反発金属でのバッティングってこんなに楽なんだ、と、思うようになった。

大学は木製バットだが、これも竹に比べれば楽だ。


得点力不足を補うための盗塁やエンドランの技術。

基本的に私立に比べて打線は弱い。ジョージは長打力だけ見ればオレより強いが塁上に残ったときには、牽制にも対応できないし、盗塁もできない。

よって、リードが小さい。他のメンバーはよくてシングルという感じだ。

但し、当時のチームは全員足が速かった。なので、基本は「ダブったらしゃーないエンドラン」作戦ばかりだった。

個人技としての盗塁もできるやつはがんばるしかなく、オレもがんばった。


ヒットが繋がるときは、ジョージが長打でランナーを一掃して、そのジョージがセカンドあたりにいれば、オレがエンドランを仕掛けて、ジョージをホームに迎え入れる、ということもできた。

まあ、そんなことはあまりなく、典型的にはオレが長打を諦めて、ナイス叩き付けでの内野安打⇒単独盗塁⇒エンドランで、実質ワンヒットで一点、というのもよくやった。


捕手としてはこれが一番嬉しいが、フレーミングやピタ止めの技術。

打力だけでなく、高校のときのチームは投手力も弱かった。

クイックと言えば聞こえはいいが、要は手投げで野手投げのジョージですらリリーフ要員にせざるを得なかったほどだ。まあ、クイックで140出れば手投げだろうがなんだろうが下位チームには通用するけどな。

これと、例のごとく変則サウスポーの投手群で凌ぐわけだ。

つまりはユルい変化球でいかに仕留めるかがキモになる。

これと、マイティサインでの捕球練習はオレのフレーミングの基礎になっている。

マイティサインは、球種が捕球する直前まで分からない。まあ、遅い球、スローカーブなら投げた瞬間だけど・・・いや、グーチェンジとサークルチェンジは手元までわかんないな。

なので、「しっかり入れる」「どっちとでも取れる」をストライクにするには捕手のアピールが重要だ。マイちゃんの速くて打者から逃げていく外角のスライダーやシュートは迂闊な捕り方をすると、「しっかり入れる」でも、ミットがボールゾーンに逃げてしまう。

そうなると彼女は「しっかり捕れ!!」と、怒る。まあ、当たり前だ。

有名人の動画を見るだけじゃなく、自分でも自分の動画を撮って、練習した。

結果、マイちゃん含めた野球部のピッチャーの球は効率的に捕れるようになった。

内から外に逃げていく球と外から内に入ってくる球では捕り方・・・というかミットの動きに工夫が必要だがこれも自然に出来るようになった。


ただ、盗塁を刺すときは別だ。その時はフレーミングを捨てて最速で投げるほうがいい。これも毎シートのたびに、そして試合で工夫を重ねて技術が向上していった。

ま、大学野球のレベルだとまだまだだとは思うけどね・・・


この、長打力、得点力アップの工夫、捕手としての技術はギリギリセーフ的な評価をしてもらえたみたいでAチーム所属となった。

まあ、最悪カベでもいいからAチームに入っていればチャンスはある。

マイちゃん一人で、普通のピッチャー数人分の変化球がある。それに左の変則だらけ、という偏った投手陣を率いてきたから、大概の変化球は捕れる。

彼女の140は普通の150より速いタイミングで手元に来るから、160超えといわれると自信は無いが、普通の速球派までなら捕れる自信がある。


一年で最初の評価は「誰でも捕れる一年生」だった。まあ、上々だろう。


寮での一日はだいたいパターン化されてきた。

上級生による理不尽なシゴきもない。


朝: 早朝の掃除と点呼。

メシ

午前: 新座で練習。

メシ

午後: 練習または池袋で授業。

メシ

先輩とキャッチャー談義をしたあと就寝。


メシばっかじゃねーか、という話だが、メシは非常にうまい。

もちろん、午前中に授業を受けることもあるし、午後も通しで練習になることもある。

あと、池袋との移動時間が地味にキツい。

授業だが、公式戦以外では公欠は認められない。なので出席重視の講義はなんとかして出る必要がある。そういう大学だ、というのは野球部内でも認識されているので、そこは配慮してもらえる。

逆に試験一発の講義は対策資料が野球部内で先輩方から申し送り事項として伝達されるので、HGIS での補習体験も役に立っている。

まあ、公欠が認められてたとしても試験の成績は重要で、やはりここでも申し送り事項が重要になってくるわけなんだが。


           ・・・


「お前、成績いいんだな?」


そうですか?護先輩、2割くらいはFなんですが。


「モル、経営学部でそれなら上等だよ」


はあ・・・


「あのなぁ・・・野球部で経営学部がそもそもレアなんだよ」


みたいですね。


「怒るぞ!普通、野球部員はこっちのキャンパスの学部なんだよ。しかも経営は一般の中でも難しいんだよ!」


いやー、確かに受験の時は受かるかどうかまったく自信なかったっすね。


「まあ、いいや。お前はそういうヤツだ。高校も進学校だったんだろ?」


はい。まあ、オレはCクラスで落ちこぼれ直前組でしたけどね。


「落ちこぼれ直前でウチの経営に受かるとは、どういう落ちこぼれなんだよ!!」


どうもこうも・・・定期試験で平均点を越えたことはほとんどないっす


「赤点だったのか?」


赤点も無いっす。HGIS っていう点数を取らせるための生徒互助組織みたいのがありまして・・・成績優秀者がオレらみたいな凡人に効果的な点数の取り方を教えてくれるんです。

英語と数学は滅茶苦茶鍛えられました。


「なんじゃそりゃ?外の塾とかじゃなくて、互助組織?」


もちろん、その時間は短いんで、何を教えてくれたのか復習するために塾の個別指導も行ってましたけど・・・


「ん?何を教えてくれたのか?・・・が、分かりづらいのか?」


彼ら、彼女らは易しく教えているつもりのようなんですが、オレらには高度だったりするんで・・・個別指導やカテキョの先生に噛み砕いてもらうんっす。


「それが現役の高校生なのか?」


はい、ウチは習熟度がSABCDの5クラスに分類されててDは事実上吹き溜まりなんで、運動部は行ったらオシマイ、という感じでした。


「じゃあ、Sのやつが先生をやるのか?」


いや、Sは日本語も英語も通じないです。Aの生徒が先生、メンターをやります。


「・・・ん・・・どういう意味だ?」


あーー、なんて言うか・・・Sの連中が英語の補習の先生になるとすると、難しい英語を比較的カンタンな英語で解説してくれるんですが・・・超早口だったり発音が本格的すぎて聞き取れないとか・・・中には数学も英語で解説するやつとか・・・そんな感じなんですよ・・・日本語で解説してくれないとわかんないっす。


「・・・なんじゃそりゃ・・・まあ、そりゃそうだよな・・・Sってのは本物の天才のクラスなのか・・・」


まあ、そうですね。320人中、数名って感じですから。Aになると30~40人くらいですね。


「じゃあ、Dってのはどういう連中なんだ?難関高校なんだよな?」


あーー、Dってのは一時的にやる気を無くしたけど、実力はB上位以上あるって連中です。ココで言うところのケガしてリハビリしながらCチーム的な話です。


「あー、メンタルやっちゃったとか・・・学力にもイップスってあるのか?」


あるみたいっすね。オレらみたいにギリな連中がDに行こうとすると教師が全力で止めにかかります。


「でも、テストで点が取れなかったら落ちるんじゃないのか?」


それを防止するのがさっき説明した、HGIS てやつで、もう何の略称だか忘れましたけど、低空飛行だったとしても赤点には接触しないようにしてくれる組織なんですよ。


「ふーん・・・赤点の基準って・・・例えば平均点の半分とか、そういう風に基準は決まってたのか?」


はい、決まってました。校内偏差値30未満が赤点です。


「偏差値30だと、ウッカリで取ることもありそうだけどな」


それがおかしな学校で・・・定期試験でも範囲外が半分出るんですよ。例えば一年の最初の中間テストで大学入試やそもそも大学でやる範囲とかが。


「なんじゃそりゃ?」


半分は授業でやってないところが出て、半分は授業でやって「テストに出るぞー」とか教師が言ったところが出ます。

なんで、平均点は30点代、40を越えることはほぼないですね。


「えーと、普通に考えたら60~80相当ってことだよな?」


まあ、そうっすけど、そう単純でもなくて・・・さっきのSの連中はそういうテストでも普通に90点とか100点を取ります。


「また・・・フザケて優秀な連中なんだな・・・AとかBは?」


Aは確実に50を越えてくる、Bは50を越えることもある、が、直感的な感じですかね。


「じゃあ、SとAの時点で段違いに格差がある感じか?」


ですね。Sは存在しない学年もあります。どの学年も半数以上がCです。


「はー・・・なんだか不思議な学校だな。仮に平均点が35だったとして、赤点の偏差値30は何点くらいになるんだ?」


えーと、35っすっか・・・毎回違いますが、ヒトケタだと確実に赤点です。15点でもヤバいときがありますが大丈夫な時もあります。


「ん?35で15で大丈夫なのか?」


はい。先輩方が『偏差値』を悪用する手法を編み出してます。


「どういうことだ?」


偏差値ってのは母集団が正規分布に従うことを前提としてるんですが、ウチの半分範囲外かつそれで50点以上を取る生徒が一定数いる、ってのはそれを崩すんですよ。正規分布のグラフみたことありますよね?


「・・・真ん中が高くて丸くて裾が広いやつだっけ?」


はい。それっす。それの上位、右側だけが拡がった分布になると偏差値の意味が崩れるんですよ。


「・・・分散の平方根が偏差値だってことしか思いだせねー」


標準偏差っすね。それで充分です。平均点からのプラマイで偏差値が決まるんですけど、上だけ伸びてると下の評価が微妙にオカしくなるんすよ。


「上だけじゃなくて下の幅も実際より広くできるってことか?イマイチわからんが・・・」


オレも分かってないですが、Sの連中が大丈夫って言ってましたし、実際大丈夫でしたから。


「モルの実際の点数はどんくらいだったんだ?」


まあ、20点台ですね。よくて30点ギリって感じです。


「それはCの中ではどういうレベルだ?」


Cなら真ん中の下から真ん中の真ん中ですかね。でもHGIS の課題をしっかりやれば取れましたよ?


「野球の練習より勉強時間のほうが長そうだな・・・」


野球部の練習、というならHGIS +塾のほうが長いですね。野球部は二時間しか練習できませんでしたから。

自宅での筋トレとか、行き帰りのランニングやチャリを入れていいなら別ですが・・・


「よく、そんなんで、あんだけ野球できんな?」


まあ、強豪校みたいに練習ですり潰されることはありませんでしたから。


「ぶはっwww。 確かにそれあるよなwww」


           ・・・


まあ、あれだ。あの高校がオカシイだけだ。


実際、大学一年次の試験でも野球部の先輩方から引き継いだ対策資料があれば特に困らなかった。

逆にオレが大学の同期に教える側に回っていたくらいだ。


英語でも数学でもあの高校では二年までの間に高校三年までの内容を余すところなく全て教える。そしてテストで理解しているか確認する。普通の高校では選択で教えるところも選択ではなくて全て教え込むのだ。

理系でも古文や漢文を読めるのは当たり前だし、地理、歴史に詳しいやつも普通だ。

文系でも数学IIIのレベルまで終わって、微積分までわかるほうが一般的だ。

そういや、ヤケに図書館の歴史にだけ詳しいミツキさんなんてのもいたな。彼女はAで、HGIS のメンターとして非常に優秀だったよな。結局つくばに行ったんだっけか?


そりゃぁ・・・普通の高校生よりは成績がいいにきまってるよな・・・

Cクラスの下位でも偏差値60の私立大学に受かっちゃうんだもんな。

最後まで復活できなかったDクラス・・・先生曰く元・成績優秀者の吹き溜まりでも偏差値50~55の大学なら受かるらしい。

まあ、だらだらやっているというだけで、まったく勉強してないわけじゃないらしいし。


元は成績優秀者だしな。


そんな感じでオレの大学一年は続いていった。

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