新座の赤池くん - 高三引退後の思い出
赤池です。二年になるまで出番無かったよ・・・
はい、リコさんと同じ大学の二年です・・・場所も新座で一緒なんですが・・・
まあ、会いませんね。野球部は野球部で閉じちゃってますから。
・・・
高校三年のときはジョージのお陰で県大会でもまずまず行けた。
普通、公立の進学校なんて初戦突破できれば万歳ってとこだ。
ジョージは色々と器用なやつだが、野球、特にバッティングについては極めて不器用だ。
三振かホームラン、まあ、ホームランまでいかなくても長打にはなる。
打率は約三割。まあ、充分だ。
そして、10打席に1本が柵越え、ホームランだ。
ムキムキになった体、元からデカい背を最大に活かして豪快に左打席からライトスタンドを狙っていく。
同じく10打席に1本か2本が長打。ライトを抜けば積極的に三塁を狙うスタイルだ。足は速いし、ベーランだけは苦手じゃない。
しかし、10打席のうち5~6打席は三振!!
あとは内外野へのゴロやフライとかかな・・・あ、ナイス叩き付けというのもある。
これは主に高めの球を全力でグラウンドに打ち付けて、ゆるくて遅いショートゴロ・・・明らかにショートフライの捕球体勢だが、一旦グラウンドでバウンドしている以上、ショートゴロ・・・を打つものだ。
もともとダメモト打法でもあるので、ツーアウトフルベース(じゃなくてもベース上にランナーがいる状態)でフルカウントなんていう、全自動でエンドランが掛かる状況で出るとデカい。
なんせ、上空に球が漂っている2~3秒は守備側にできることがない。
ジョージは狙ってできる。成功率も悪くない。3回に2回程度は成功する。
三振はホームランまたは長打狙いのハズレで起こる。
ジョージの三振が多いのは悪いことじゃなかった。
なんせ、併殺打がほとんどない。
「内野の間を抜く」とか「内野の頭を越える」という概念がないからだ。
つまり、基本的にはフライしか打てない。アッパー気味のスイングだ。
じゃあ、その力を全力で地面に向けたらどうなるか?という実験が、ナイス叩き付け打法だ。
チーム全員でマネしようとしたが、出来たのは体格が良い組ばかりだった。やはり力がいるのだろう。
あと、左で足が速いというのも必須だ。
なので結局、オレが三年のときには、実質オレしか習得できなかった。
それから、ジョージは盗塁ができない。走り出すタイミングが分からないみたいだ。まあ・・・バッティングだけ超鋭い『初心者』だから・・・そもそも野球のルールは複雑怪奇だしな。
まあ、強豪高以外なら、190近くて筋肉質なバッターが打席に立って思いっきりフルスイングするのを見た時点で。さらに、そいつが10打席に一本ホームラン打つ、という事実で。・・・うん、ビビると思うよ?
後者は強豪高でもちょっとビビる。
しかもいきなり三年で出てきているので対策資料もないwww
県大会はもう一つは行きたかったな・・・という気持ちもあるが、当たったのがセイヤのところでは勝ち目がない。優勝校に負けたのであればしかたない、というあたりで済ますしかなかった。
10回試合すれば1回は勝てる可能性が無いわけでもないが、それが公式戦のときに回ってくることなんて無い。
そんな負け試合でもジョージはホームランを一本打ったけどな。
オレも打った。実は三年夏大に向けてオレもジョージタイプのバッティングを身に付けたのだ。
しかもその後にもオマケがあった。
どういうことか?
あの学校でも第一所属の運動部は、だいたい夏大が終われば引退だ。
それは野球部もそうで、8月一杯は引き継ぎも兼ねて練習参加するが、基本的には二年の新チームのお手伝いだ。
9月からは受験一直線・・・のはずだった。
・・・
よう、マイちゃん、まだマイちゃんって呼んじゃだめか・・・
「モル・・・お主、もうそう呼んでるではないか」
マイちゃんが返事するからだろ?
「まあよい。明日の第二だが・・・」
え? もう九月なんだけど・・・
「九月でも第二はあるだろう?」
いや、・・・無いという決まりはないな・・・
第一が引退したら第二も引退しなきゃいけない、なんて事は無い。
「急に私のシートを止めたら実力が落ちないか?」
うーん・・・落ちるだろうけど・・・これはどっちかというと慣習もあれば、各学年のメンツとかケジメみたいなのもあって、ちょっと難しい問題なんだよ。
「よくわからぬが・・・」
高校野球では、新チームという呼び方をするんだが、夏が終わったら、二年が中心になってチームを盛り上げていくんだ。
三年が二年にお願いされて手伝いするのはアリなんだが、三年が主体的に練習をリードしていくのは、新チームのためにもあまりよくない。
「第二にはあまり関係なくは・・・ないか。私の場合」
だな。第二はキャッチボールやランニング、たまーにバッティングってのが普通なのに、第一相手に公式戦より強いピッチャーをやってくれたマイちゃんが例外すぎる例外だからな・・・
「わかった。代替わりしたので、上のものが口を出すのを差し控える、という文化だな?それは理解した。しかし・・・投げる予定にしてしまったので投げたいんだが・・・」
ジョージは来るのか?
「予定では」
じゃあ、グラウンドの隅でオレが打とうか?
「ん?モルは第一では?」
第一を引退して第二に鞍替えってのは故障した先輩でも普通にいたからな
「ああ、いたな・・・閣下こと鳥居原先輩もそうだったかな?あの人のことだから最初から第二で外野守っててもおかしくないが・・・なるほど、ヘリクツだ」
まあなwww
「しかし、受験勉強は大丈夫なのか?」
あのさ、三年ずっと受験勉強みたいな学校にいてなんも準備ができてないわけはないだろ?Cクラスとは言え、例のリオンさんの『ももリコ特訓講座のオコボレ頂戴組』をナメないでほしい!!
「それはまあ、努力はしてないわけではないが・・・別に塾なり個別なりで補強が必要だぞ?」
してる。ウチの学校なら野球部の第一でも普通に塾とか個別、人によってはカテキョとか。オレもだ。
それにな?月に2回か3回、一回30分程度のお遊び程度の野球も禁止しなきゃならないような状況じゃぁ、いいトコに受かるなんて不可能だ!!
「・・・ふむ、一理ある。確かにその程度の運動すら・・・というなら確かに」
実際オレだって大学で野球部に入りたい気持ちがあるから、基本的な運動や筋トレとストレッチはずっとしてるし、それこそ入試前日でも無ければ毎日する予定なんだ。
「半年も休めば相当鈍るな」
ああ、中学のとき思い知った。合格後に練習しだしたら、体が重くて重くて・・・
「成程、同じ轍は踏まぬというわけか」
そうだ。学ばなきゃバカだからな。で、第二に来て投げるんなら・・・
「ジョージが来るか、と聞いたということは、ジョージに受けさせて自分は打ちたい、ということか?」
流石だな。二人がOKしてくれんならだけど。
「しかし、家でもトレーニングはするのだろう?」
するさ。エアロバイクもあれば、チンニング・・・懸垂だな、あといろいろできるホームジム的な全部入りのやつとか・・・手軽にリストローラーとかな?わかる?
「わかる。やはり背筋は重要か。モデル稼業でもお胸は重要なので広背筋はしっかり鍛えないとならぬ」
お胸ね・・・ご立派なこって。広背筋が重要なのは一緒なんだな。
まあ、全身の筋肉くらいなら家庭用の機械でもそれなりには鍛えられるが・・・
目はな・・・
「俗に言う『生きた球』というやつか」
そうなんだよなーー。あればっかりはなぁーー
「月二回でもか?」
無いよりずっといい!!
あればっかはバッセン行ってもダメなんだよ。
しかもオレ、マイちゃんの球打ててないじゃん、結局。
「はて?シートではそこそこ打たれたと思うが?」
あれは打たせるように投げてるのを打ってるだけ。
セイヤのとこの二巡目以降に投げたみたいなのは打てないんだよ!!
「当てる、と前に飛ばすまではできるだろう?」
ファールや凡打でもよければな。
「まあ、そこまで当てられるやつはそう多くはないぞ?」
やっぱ強引に勧誘したり、高野連の役員に見せたほうがよかったかもなあ・・・
「勧誘したかっただろうに口に一切出さなかったのには感謝する」
ずーーっと喉から出かけまくりだったよ!!ガマンしたけど!!
「まあ、その礼としてバッピを真面目にやるくらいならな。第二の時だけな?」
おう!!
「モル、返事は静かに。二年や一年がやりたがったら?」
貴重な30球をやらせねぇよ・・・まあ、オレとマイちゃんの予定が一致しなくて、マイちゃんとジョージだけ来てオレがいなきゃ、声を掛ければあっちで列を作って並ぶと思うよ?
「私は下の代に口出し・・・口じゃないが・・・していいのか?」
最初から最後まで第二ならいいんじゃないの?そもそも公式戦に出られない存在なんだし。
「私も全ての第二に出れるわけじゃない」
そらそうだろ。夏休みもそうだったが、また飛行機乗りに行くんだろ?
「まあ、そうだな」
・・・
そんなやり取りがあり、出来無い時期もあったが、オレは月に一度か二度、あのマイちゃんの超絶ピッチングを打つ、という練習ができた。
彼女の本気はすごすぎた。
普通、コントロールのいいピッチャーはフォームを固める、といって、一定のフォームやリズムで投げてくる。
なので狙いが当たると痛打されることもある。
ところが、彼女のピッチングフォームはバラバラだ。手元が見にくい、は徹底しているが、一番分かりやすい腕の角度からして違う。
腕の振りも違う、ということだけは分かるし、多分、リリースポイントも変えられる。それでもコントロールはバッチリなのだ。
コントロールがバッチリなのがなぜ分かるかというと、ジョージに口に出してもらうようお願いしたからだ。
対左打者の彼女の決め球はインハイのどっちとでもとれるスライダー。
顔に向かってくるように見えてインハイのストライクゾーンに来る球。
初見は絶対避けて尻もち級だ。慣れても見送るだけでも勇気がいる球。
逆に言えば、投手もよっぽどの自信が無ければ怖くて投げられない。
外れれば一発危険球だからだ。
これがどの投げ方でもキッチリ右上角に決まる。少なくとも、オレが区別できるだけでも 5種類のフォームがあり、どれでもカッチリ決まる。
しかも外からストライクゾーンに曲がってちょっと落ちてくる球だから、ギリギリでもストライクとコールされやすいだろう。
それを理解したときには「こんなん打てるかよ!!」と、思った。
しかし、ジョージが喋りながら受けるときには、例のマイティサインと違い、球種もジョージが言う。
そこまで分かってやっと打てる代物だということが理解できた。出来すぎだわな。こりゃ無敵だわ・・・
だって、そこに伸びてくるバックスピンや外角から切れこんでくる高速シュート。はては天井から落ちてくるようなファストシンカーまで投げられるんだもん・・・なんなんだ、コイツ。
その上、スローカーブやチェンジも得意。
試しに、マイティサインにしてもらったら、まったく打てなくなった。
しかし、年が明けて、この練習も、もう、あと何回もできないんだろうな、ってころに攻略法を思いついた。そして、実行してみたら打てた。
・・・
うん、今日は打てたな。
「打たれたな・・・」
まあ、でも打率にしたら一割台だろ?マイちゃんには敵わないよ。
「30球だからな。基本的に三球勝負だから・・・10打席と考えなかったのか?」
そう思ってたんだがちょっと考え方を変えたんだ。どうせ追い込まれたら打てねえからな。
「ほう?」
こっちが初球打ちなら、30打席あるだろ?
「確かに・・・」
で、今までのビデオもある。
「まあ、撮っても構わぬと言ったからな」
わかったことは、球は分かんないが、ジョージのリードが単調でクセがあるってことだ。
「そっちか」「あああ、すみません!」
初球はヤマが外れても空振りすれば、二球目は結構読めるんだよ!!
「なるほどな」「本当にすみません!!」
まあ、結局15打数で2安打だからな。0.133だなーーー
「しかし、判定アウトとは言え、結構前には飛ばせていたな」
うん。オレ的にも少しは満足できた。
「だが、モルは一般入試だろう? 今、分析などしているヒマはあったのか?」
大晦日、今日くらいはいいだろ?って家族がテレビ見てるときに、そっと抜けて、こっちはマイちゃんのビデオ見てたんだよ。
で、近所の神社に速攻で初詣に行ってからさらに見て、ジョージのクセに気付いた。
だから勉強への影響は最小限だ!!
「集中力という意味では訓練になったか」
更にこれもビデオに撮ってる!!どんな方法でも結果は結果だ!!
この災害級ピッチャーからでも1割打てるって結果も記録してる!!
「まあ、結果が全てなのは入試も同じだな。がんばれよ」
おう!!神宮がオレを待ってるぜ!!




