申し分のない経歴と覚悟www
ちょ・・・ちょっと・・・ちょっと息を整えさせて・・・
「承知」
みんな、見えた?
「はい・・・横から見たらわかりますけど・・・正面からだと分かりずらいと思います」「っすね」「そう思うですよ」
あなた、何て呼べばいいの?
「皆はマイティと呼ぶ。本名でもなんでもないが、もうそれで15年ほど呼ばれているので違和感は無い。最近では特に仲良い友人が『マイちゃん』と呼んでくれることもある」
アタシもマイちゃんって呼んでいい?
「いきなりか?・・・まあ、良いが・・・」
マイちゃんは女子プロレスラー志望でこのジムに来たわけじゃないのよね?
「そうです。格闘的な意味でのエクササイズ入門として、普通のジムよりはこういうジムのほうがよいかと・・・代表の方も総合格闘技経験もおありのようですし」
ああ、少しだけね。女子の総合格闘技は今はあまり試合がないからねぇ・・・
まあ、いまのキック一発で入門者なら仮入門オッケーって感じなんだけど・・・
「やはり、ここでも勧誘されるのか・・・」
あー・・・そういうことね・・・何をやっても本気でボクシングやってみないか、とか、柔道でも空手でも言われたんだろうね?
「おっしゃる通りです」
まあ、サウスポーの・・・流石にボクシングは詳しくないから何スタイルとかわかんないけど・・・攻撃的な構えだよね。
しかもそこから一瞬でオーソドックスに切り替えることで一瞬で距離を縮めるって凄いテクニックだよ・・・左利きなの?
「ああ、右利きですが・・・ペンも箸もバッティングもピッチングも左でできます」
野球もやるの?!ピッチングって・・・サウスポー・・・ああ、ボクシングもサウスポーって言うか・・・
「はい。左投手でした。バッティングのほうが得意ですが」
何キロくらいでるの?硬式なの?
「硬式です。真っ直ぐのバックスピンで140をちょっと越える程度です」
誰か・・・女子野球やってた子いる?
「はい。やってましたが、女子だと、125を越えれば日本じゃ速球派って認められますよ?140を越えたら・・・多分女子世界一です。アメリカとかの大柄な選手でやっと135とかですから・・・」
えっと・・・頭が混乱してきた・・・何をしたいの?てゆーか野球はしないの?
「まあ、最大140とは言え、私は一日30球制限です。こちらも関節が持たないんですよ。なので先発じゃなくてリリーフですね。ちゃんとアイシングすれば毎日・・・はキツいですが、週休二日なら投げられると思います」
で、バッティングのほうが得意と。どんくらい?
「竹バットでライトやレフトのポールに当てる程度です。一応両翼100メートルくらいまでなら」
「ムリムリ!!竹バットなんて内野の頭を越えるのが関の山でしょ!!」
竹バットって・・・金属バットなら小道具的にはプロレスでも使うから知ってるけど・・・たぶん、金属より飛ばないんだよね?
「まったく飛びません!!木のバットよりもマスコットバットよりも飛びません!!その上、芯を外すとめっちゃシビれます!!ウチの昔いたチームでは、怠慢プレーの罰則やシゴキ的な感じで竹バットでのバッティング練習があったくらいです!!」
「金属では全弾スタンドでつまらぬではないか!!多少難易度があるほうが遊びとしては楽しいだろう?!」
遊びなんだ・・・
「・・・ウソを言ってるようには思えないんで・・・本当だとしたら・・・野球でも相当の規格外です・・・このひと・・・」
金属って全弾スタンドとか狙えるの?
「オールジャパンの最強打者でも無理です!!練習ならともかく、試合じゃ金属でも普通にセンターかレフト前ヒットとか狙いで、間を抜けたらラッキーのツーベースです!!」
スタンドイン、つまりホームランは?
「大柄な人がドンピチャでバチコンと当たれば入ることもありますっ!!という感じで・・・女子で狙ってホームランなんて人はそうはいません。女子でホームランといえば、広い球場で外野を転がっているうちに俊足を飛ばしてランニングホームランのほうが多いです・・・男子の野球でいえば、常時前進守備みたいなもんですから」
球場の大きさは一緒なのよね?
「大会次第ですけど・・・ラッキーゾーン的な物を作るにも時間とお金がかかりますから・・・白線を引いてここから先はホームラン的な大会も聞いたことはありますけど、都市伝説かもです。はい、基本的に一緒の大きさでやります」
えーと、マイちゃん?竹バットって重いの?軽いの?
「重さは規程があるので、金属も木も竹もそんなに差はない・・・です」
で、飛びづらいと。
「昔の金属よりは遥かに。最近の低反発金属と比べても飛びませんし、木よりも飛びません。その代わり、めちゃくちゃ折れにくいです。木はすぐ折れますし、金属も扱いが悪いと、わりとヒビが入りやすいですから」
その、あの娘がいってる内野の頭を越える程度が関の山、のバットでライトポール・・・あのスタンドに立ってるファールの目印の旗竿みたいなやつ、でいいのよね・・・に当てると。
仮にそれが本当だったとして、何故、その、ポールを狙うの?
「非常にシンプルな理由として、両翼100mくらいだとプロでも広めのグラウンドですが、センターだと、少なくとも120m以上、場合によっては130m程度の広さがあります。なのでホームランになりやすいのです」
ああ、そうなんだ・・・まあ、近ければフェンスを越えやすい、は、分かりやすいよね。
「でもさ、マイちゃんでいい?切れない?」
「うむ。それは打ち方で打ち消せる。左バッターが普通に振ってライトポールの方を狙うと切れがちだ。だから、そこではシュート回転を掛けてやる。そうすると切れそうで切れないとか、ファール側から戻ってポールに当る、手前で横切ってホームラン、という打球になる。レフトポールならスライダー回転だな」
えーと、野球の技術はわかんないけど・・・超高度な技術じゃない?
「えーと・・・伝説の落合さんとか、イチローさんレベルかと思います・・・」
「そうなのか・・・自然とやってみたら出来たが」
「・・・」
もしかして、さらに理由とか技術とかある?
「シンプルに・・・目印に向かって打つのは楽だから、くらいですね」
まあね。そうかもね・・・センターとかの旗は?
「あれは普通に遠すぎますよ。ライトレフトのポールなら地上10mで充分ですから」
野球もすごいってわかったけど、ここは女子プロレスリングのジムだから・・・
プロにならないとしたら、ウチで何を練習したいの?
「一応大学生なんですが、考古学で博士号に挑戦しようと思っているんです」
博士号?頭いいのね?でもレスリングと考古学?あまり関係あるようには・・・
「ああ、考古学というか、その内でも発掘作業ですね」
へ?発掘・・・まあ、するんだろうね。ニュースやテレビで見たくらいしか知識はないけど。
「二~三年後くらいに行ければと思っているところがありまして、アフリカで・・・内戦とかで戦闘が普通にある地域なんですよ」
内戦って、国内で武装勢力同士が戦っている、って意味での内戦?
「おっしゃる通りです。その内戦です。外の国もちょっかい出してきますので普通の国家間紛争のこともありますが」
銃や戦車の前じゃ、レスリングは無力だよ?
「ピストルやアサルトライフルは、アメリカの民間軍事会社で訓練してます。銃も重要ですが、最終的には取っ組み合いの喧嘩にも強くないといけません」
わからなくもないけど・・・その民間軍事会社さんではそういう訓練はないの?
「今の民間軍事会社は普通に会社員でもあるようで、セクハラなどで訴訟などを受けることを非常にいやがっていますので・・・格闘コースが受けられませんでした」
まあ、軍隊上がりの人が多いとしたら、圧倒的に男ばかり・・・セクハラされまくりそうな気はするよ。
「厳密に言えば女性同士でもセクハラは有り得ますが・・・対男性よりは圧倒的に少ないと思います」
そうだろうね。ウチもそういうコンセプトでフィットネス、エクササイズコースを開設してますから。
「はい。で、少し前に実家で・・・実家イコール父の会社の社員寮、くらいの意味なんですが、姉様、女性社員の方から、聞きまして・・・あの、アスカさんのファンだそうです・・・こちらを紹介された次第です」
え?このジムの社長、代表じゃなくてアタシのファンなの? 自分でいうのもアレだけどレアだよね?
「ファンとしては・・・そっちのほうがコア感があってよいものではないかと」
アタシのファンねぇ・・・うれしいけど・・・ちなみに、名前わかる?
「ああ・・・名字が思い出せぬ・・・常時名前のみで呼んでおった故に・・・名前は瑞希だ」
・・・んん・・・あっ・・・背の高い子!!。178くらい?大学院生だったと思うよ?私的にはタッグマッチながらベルトも巻いてた時期だったかな?
大きいけど細くて美人さんだったと思うよ?
「では瑞希・・・瑞希姉様と呼ぶこともあるが・・・彼女で間違い無さそうだな。ウチの会社では真ん中より大きい程度だが・・・今でもファンなので会えたらよろしくとのことであった」
そうなんだ。サインとかいる?色紙もあるけど・・・そこにある物販ブース、サイン色紙は一応ショップで売ってるものなので有料でお願いしたいんだけど・・・
「それは問題ない。姉様にとってもお土産としては最高の部類のものだろう。あとでお願いする」
ああ、話の途中だったね。あの子は頭もよかった。単なる道場やジムじゃなくて軽い女性向けエクササイズをやったらいいんじゃないか?みたいなアイデアのコアは彼女が出してくれたんだったと思うよ?まあ、大手がそういうの作っちゃって喰われてはいますけど・・・
でも、レスリングならともかく、戦場の格闘技まで言われちゃうと自信はないなぁ・・・
しかし彼女が真ん中よりちょっと上って・・・ずいぶんデカい人ばかりの会社なのね?
「そういうコンセプトだ。女子では私が一番か二番程度にはデカいが、男子では私より大きい社員も普通にいる。半分よりは少ないとは思うが」
引越しとか?でも瑞希さんって理系の大学院生で、女子じゃ珍しいな、と思った記憶があるから、そんなガテン系じゃないよね?
「ん?ああ、今ではエッセンシャルワーカーという呼び方をするほうが多いと思うが・・・違うな。コンピューター、IT関係の会社だ」
うーん。みんなカタカナにしちゃうんだね・・・
「漢字だと現場系という呼び方もあるようだが・・・」
現場・・・まあ、現地集合のバイトとか行ったことあるよ。ここも倉庫会社が多いから、現地集合でバイトしてる子多いしね。
「はいっ」「うすっ」「・・・」
返事はいいから(笑)。えーと、強引にまとめるね。
マイちゃんは何でも見様見真似で県警の警官とも戦える程度の天才だけど、戦場に行くとなると流石に練習無しで行くのは危ういから、その練習をしたい。
その候補としてウチのジムに来た。そういうことでいい?
「天才かどうかは置いとくとすればその通り」
じゃあね。さっきのキックを見て、本気で人を蹴れる人だってのはわかったけど、格闘戦、特に試合とかじゃなくて、街中でのケンカでもいいから、それについて聞くね?いい?
「特には。できれば通報等は御遠慮いただきたい」
しないよww。ということは実戦経験はあるんだ。
「中坊のときには近くの工業高校のイキったガキ共がよく来たので、ぶちのめしてはいた」
っ・・・おい、イキナリ本格的だね。向こう側は凶器は持ってた?
「角材くらいだったな。あとはステゴロというやつだ」
でもモデルさんなら拳にキズ付けられないよね?まだやってなかった?
「モデルは小五からやっていたので、中坊の時はホームセンターで職人向きの頑丈な手袋をつけてやっていた。最初は掌底を使っていったんだが、それでも素手だと手に傷は付くのでな」
イキりガキを倒すと、イキった20代とかの若者が出てきたりしない?
「した。対ナイフ戦はそれで覚えた」
暴力団的な組織とかは?なんとか連合みたいな暴力団じゃないやつは?
「あーー、中三になる直前に・・・普通に暴力団にカチコミ食らわせて・・・対日本刀戦は覚えた」
えーと・・・その言い方だとマイちゃんのほうから行ったってこと?いきなりボス戦で一気にカタを付けたとか?
「ボス戦というほどでもなかったが・・・まあ、こちらから行ったな」
でも、流石にカチコミなんかしたら・・・補導とかされなかったの?
「一応、自分なりに県警や市の治安委員会、市や県の議員連盟、あと念の為自衛隊にも連絡をして相談しておいて、段取りを付けてからだから・・・補導はされなかった」
中坊って中学生のころよね?よくそこまで考えられたね?
「それなりにな。今思えばかなり甘い考えだったが・・・結局県警の刑事なんかにもそれなりに迷惑かけたし・・・警官との乱取りも、一種の『かわいがり』に近いものもあったと思う」
ああ・・・そういう・・・でも投げたんだよね?黒帯の警官を。
「まあ、人体の構造的に、ここをキメれば投げられる、というのは理解していたしな。当時も183cmは越えてたし、増え切ってないものの60~65kgくらいはあったと思うので、最大2倍くらいの体重までならなんとか・・・いや、110kg越えると結構ツラかったから、1.5倍くらいまでだったかな・・・」
・・・黒帯の警官にそんだけやれれば上等だよ。
「全員黒帯というわけでもないし・・・苦手な警官は腰が引けていたから簡単だったぞ?」
そんな人に何を教えればいいのか迷うんだけど・・・
「多人数対応は是非習いたい。正直、敵対勢力だけじゃなくて、海外への発掘調査と考えると味方も信用しきれない」
そういうものなの?
「まあ、戦争でも発掘調査でも若い女自体が珍しいから・・・多人数、例えばゴツい男ばかり5人がかりでのレイプにも対応できないといけない」
ああああーーーー!!そっちかぁーーーー。
話もどるけど、警官で乱取りなら一対一の連続になったってこと?
「そうだな。ちなみにイキったガキ共もなぜか一対一での対決が多かった」
タイマン気取りというやつね。わかんなくはないけど。
ちなみに、殴る蹴るができるのはわかったけど、刺せるの?
「ああ、ヤンキー共にはナメられない為にも奪ったナイフで太腿などあまり危険度の高くないところを刺しといた。抜いたときにショックが起こるからそれで待避可能だ。ヤクザの時は本拠地に乗り込んだから向こうも複数人でかかってきたが、日本刀を奪ってからは結構ケンカになってたな・・・内臓とかを刺すと死ぬから、痛いだろうけど致命傷にはならないように腕や足を浅く切ったくらいだ」
ねえ、本当にアタシが何を教えればいいかわかんないんだけどwww。
アフリカの発掘調査の現場、戦場かもしれないところではそういう配慮はできないんだろうね?
「ああ、PMC、民間軍事会社のことだが・・・そこでの訓練でも戦場では情けを掛けるな。躊躇したら死ぬのは自分だ、と教えられたし、基礎の格闘戦・・・それだけは受けられたが・・・でも、ちゃんと防具を付けているから躊躇せずに体を刺しに来い、と訓練後の反省会でしつこく指摘された」
本当に何を教えたらいいかわかんないんだけど・・・
せっかく動ける服装で来てるみたいだし、着替えもそのバッグに入ってるんでしょ?
「うむ・・・ではない、はい、教官!」
教官じゃないんだけど・・・まあいいか。
柔軟とか体力とか見てみるから、地下のリングに行こうか?
機材もあるし、一階だと外から見ようと思えば見えちゃうからさ。
「承知いたしました。教官!」
だから・・・まあ、いいか。




