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赤池くんの不穏なお願い

オレの夏は準々々々決勝で終わった。


要は、ベスト16進出だ。

相手は例のセイヤ、横溝のいる強豪高で、10回やって、1回勝てるかどうか、という実力差だった。


一応キャプテン、部長としても努力したんだが、オレのワンマンチームにしてしまうのが精一杯だった。


U15世界三位兼打点王の名は、地元では未だ効くので、二年の頃から、中学にスカウトにも回ったが・・・学力的にムリすぎる、という答えをもらうばかりだった。

もちろん、強豪が声を掛けてきそうな超有望選手のところには行ってない。


学力的にも上のほうで、野球続けたさそう、とか、高嶺祭にわざわざ来て、挨拶してくれたシニアの後輩など、受験できる可能性のある選手のみだ。


何人かは受験もしてくれた。その結果、全員が併願の私立に行くことになった。


「センパイ・・・こんな受験勉強してホントに受かったなんて・・・信じられません・・・すんませんっした」


と、わざわざ謝罪に来てくれた後輩すら居た。まあ、気持ちは分かる。オレも受かるかどうかなんて賭けだったしな・・・悪いことしたな・・・まあ、野球やるなら私立のほうが設備は整っているとは思うが・・・


そんなこんなではあるが、オレがそれなりに名が売れてるせいで、二年、三年時には、予想以上に新入生を一部でゲットできた。


まあ、厳しすぎるチームやコーチ、親にイヤになった面々であれば、ウェルカムだ。そんな指導はしないしできない。


元々、甲子園を目指すという目標は下ろしてはいないが、現実的に私学に勝つのは無理、というのも理解している。最低でも三回、下手すると五回奇跡を連続して起こさなければ県大会優勝などできない。


当然、そんな奇跡が自分の時に起こるわけがない。


正直、ベスト16だって出来過ぎと言ってもいいくらいだ。


今年、いくらか勝てたのも閣下先輩方式を使ったからにすぎない。


と言っても、マイティさんは絶対に出てくれない。ホント、出てくれれば・・・と部長になってからは言いたくて言いたくて仕方無かったが、我慢に我慢を重ね、代わりにジョージに選手登録をお願いした。


ジョージもオレがマイティさんに出て欲しいと言いたいのをガマンしまくっているのは見抜いていた。


「モルくん・・・僕では力不足ですが、一応、マイティさんと一緒に週一のティーや、毎日のキャッチボールはしてますので、代打と外野守備くらいならいくらかは役に立てるかもしれません」


いや、その程度じゃないだろ? 第二の日に普通にシートに参加していて、マイティさんの本気の球すら前に弾き返してんじゃねーか。


「今ではモルくんもショートの頭を越えるヒットを打てるようになってるじゃありませんか?一部のメンバーにはかないませんよ?」


あれは本気じゃねぇよ。ちょっと抜いてる球だよ。お前は本気の球を打ち返してるんだよ。少なくともオレが受けてる時は抜いてるか抜いてないかわかる。


つまり、打力なら第一第二全員の中でお前が一番だ。


「そうはいっても・・・マイティさんの球しか打てないかもしれませんよ」


じゃあ、練習試合に出ろよ?ちなみに身長と体重は?


「188cmで、えーと・・・88~90キロくらいですね。一応鍛えられてますんで」


もう、微妙にだけど、オレを抜いてんだよ!!まったく!!


そんなやりとりのあと、ジョージは練習試合に来てくれた。マイティさんは来なかったが、まあ、予想通りとも言える。


そしたら、まあ打つこと打つこと!!


一番レフト・・・連携がいちばん少ないからな、レフト・・・に入れて、「好きに打て」を決め打ちにしたら、明らかなボール球以外は全球狙っていくし、フルスイング!!


ジョージは相手にはまったく知られていなかったが、デカイ三年が一番レフトで出て来たら、普通に警戒する。

その時点で守備じゃなくて打撃で出ていることはカクジツだからだ。レフトだしな。


マイティさんのように全球オーバーフェンスという離れ業はできないが、0-2でも当てられると踏めば躊躇なくフルスイング!

ホームランにならなくてもライナーじゃなくてフライでフェン直なら脚の速さで三塁打を狙う。

まあ、三振も多いし、バントもまったくできない。

盗塁もやり方がよくわかってないようだが、当たれば二塁打なので、あまり関係ない。


意外なことに、変化球やチェンジをまったく苦にしない。


「あー、それはですね。マイティさんのティーはタイミングずらしがデフォルトですから。姉様も投げるフリなどのフェイントを掛けてきますからww」


そんなティーは聞いたことねー。実際やって見たら当たらねえこと当たらねえこと・・・

つまり、ティーのつもりで打てば打てるってことか?


「空振りも多いですが、三回に一回当たればいいとなれば気も楽です。九回に一回当たれば三割打者ですからww」


無茶な理屈に聞こえなくもないが、この体格のバッターが思いっきり振り回してきたら、空振れーー、芯外せーーって祈るしかねえな。


「マイティさんは当たるように修正しちゃいますけど、今の僕には難しいので絶対当たらないほうにズラしたり、あと空振りであちこち痛めないようにケアしてます」


凡打より、空振りでもう一度チャンスのほうがいいってことな。そりゃそうだ。しかし、あの豪快な空振りでそんなケアまでできるんかい。


「一応。でも当たらないようにズラしたつもりが当たっちゃってライト前に落ちちゃうこともあります」


あんなん見せられたら、お前が出たら外野下がるからな。で、ケアした分伸びなくてポテンヒットってわけね。結果オーライだね。


というわけで、三年デビュー、試合相手にとっては恐怖のDHが中央高野球部に誕生した。


           ・・・


しかし、その程度の補強で勝てるようになるわけじゃない。


ジョージのおかげで、ピッチング専業のピッチは使いやすくなったが、やはり投手が力尽き、ベスト8争いで負けた。


その試合後は時間も無く、挨拶もできなかったが、あのやろう。夏大優勝しやがった!甲子園決定だ!!不祥事起こすなよ!!!


なんて不貞腐れながら受験勉強をしていたとき、セイヤから電話が掛かってきた。


おう、優勝おめでとう、不祥事でも起きたか?


「アホ抜かすな。おこさねーよ」


じゃあ、何の用だ?一応夏休み中までは部活に所属するけど、受験勉強はとっくに始めてんだよ。


「練習にも練習試合にも参加するってゆーてたやん?」


なんで関西弁風なんだよ。


「大阪組がウチにもおるからな。そいつに言わせりゃ不自然な関西弁みてーだな」


オレが聞いても不自然だよ。


「そうそう、あのお前と同じくらいのデカさのブンブン丸くん元気か?」


ジョージのことだな。あいつは笑顔と元気が取り柄のハズだったが勉強も怪物になりつつあるよ。学年三位だ。


「げ、中央で学年三位でホームラン王?すげーな」


ま、確かにずっと出てたらウチの中ではホームラン王か。ともかく飛ばすからな。


「正直アセったぜ? まったく出てなかった三年が突然出てきてガンガン打ちだすんやからな?」


前にも説明したと思うが、ヤツも第二だ。月に二回のシートノックしか出てきてねーよ。


「彼女もスゴかったけど、そいつもスゲーな。まさかとは思うが彼氏彼女だったりするん?」


そのまさかだよ。一年のころから公認だ。


「中央・・・コワいわ・・・魔の巣窟やん。で、できればのできればでいいんだけど彼女さんにお願いできないかなーー」


二年前のアレ以来、一試合も練習試合には出てないよ。


「でも練習は出てるんやろ?」


まあな。


「なら、練習で投げてもらえんかな?」


は?


「甲子園抽選決まったやろ?」


まあ、決まったことだけはテレビで見たが・・・さすがにお前んとこの相手の高校までは調べてないな。


「まあ、そんなとこだろ。相手のエースな、長身のサウスポー。速くて伸びるストレート。見分けの付きにくい高速スライダーが武器なんだよ」


・・・バッチリっちゃバッチリだな。だた、前に言ったと思うが、彼女のはプロのモデルだ。もし、そっちに一日行かせるとなると、一日30万はかかると思うぞ?


「30万?!ムリやわ・・・なあなあ、二年前のアレ、ウチの第一球場で、お前の先輩達の引退式をやったのって、貸しということで数えてくれねーか?」


まあ、数えられなくもないだろうが・・・


「こっちから行くから。球数制限の最大限でいいから、スタメン連中だけでいいから投げて欲しい!!長身のサウスポーなんて練習相手おらんけど、出来ることはしておきたい!!」


気持ちはわからなくもないが・・・


「な、わかるやろ?第二とやらでタマには来るんやろ?その時に本気で投げてもらって、オレらが打席に立つだけでいいんだよ!!」


まあ、先輩の恩もあるし、交渉だけはしてみるよ・・・正直、あまり期待しないでほしい。土下座もロクに効かないし、金や力で言うこと聞かすことができる人でもなんだよ。彼女・・・


「そうかもしれんけど、頼むわ!!」


その・・・半端な関西弁、うざい。


「わりぃ!!ともかくお願いします!!」


はあ・・・わかったよ・・・



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