ホントに飛んじゃうマイティさん
そう、マイティさんは授業中にやることがありません。
中学どころか小学校卒業時点で高校での学習内容を全て終えており、大学入試どころか大学入学後の勉強を始めていましたから。
ちなみに、授業中は授業とはまったく無関係な大学・大学院でやるであろう勉強をしています。彼女は試験前にちょっと復習すれば、テストの点は取れるので問題ありません。
まあ、英数の三年Sクラスだと大体似たような感じなんですが、さらにそれを超越した感じですね。
そして、マイティさんが高一の冬のころ、何かの企画でグライダーの試乗体験をしました。
そしたらツボに来た、というか、大変ハマってしまったらしく、寮のリビングの一角、にフライトシミュレータっぽい何かが出来ました。
そして、マイティさんだけでなく、社員の方も結構ハマってしまったようです。
最初はモニタと椅子と操縦桿とベダルくらいだったのですが、いつのまにかモニタは角を利用して大きな三面になり、以前のモニタは計器のための画面としてメイン画面の下に配置されるようになりました。
ペダルや謎なレバーも左右にどんどん増え、小さな計器用モニタも追加され、なんというか本格的なコックピットっぽい何かになりました。
まあ寮の住民、会社の社員は理系ですし、そういうのは基本的に好きだったようです。HLS は ICT の SI 会社ですから、みなさん、知識もあるでしょうし。
かなり初期のころ、社員の皆さん、マイティさんが言うところの兄様姉様が、自費で買ってフライトシミュレータに追加した周辺機器のうち、マイティさんが気にいったものは、全部買い取ってました。
「これからは MMC の経費で買うから欲しいものは言え」
ということで、大画面モニタやらなんやらは全部マイティさん個人会社のほうで買って設備として登録しているようです。
基本的には、マイティさんのモノなんですが、空いているときに社員の方が使うのは特に問題がない、ということで、一時期は空き枠の奪い合いになってました。
今は落ち着いていますが、それでも平日に休んで朝からフライトシミュレータをやっている社員の方もいらっしゃるようです。
まあ、有給は完全消化が奨励されていますけど、それほど旅行も好きじゃないし、街に出てもなあ、という社員さんもいらっしゃるんでしょう。
実際、僕も何度も遊ばせていただきましたが、すごくリアルで面白いだけでなく、とても高揚感があるゲームなのは確かです。
街にいくより、これやってジムワークしてのんびり昼間から長風呂・・・夕飯前にもうひとっ飛び、という休日のほうがいいや、という意見も理解できます。
この寮は設備が整いすぎていて、外へ出たくなくなるという説すら・・・
と、言いつつもメインユーザはマイティさんです。
充分うまくなった、と確信した彼女は、TSA (米国運輸保安局) による AFSP (Alien Flight Student Program) への登録と、その承認を取得し、サンフランシスコに出掛けました。一年の春休み、二年になる直前です。
「ここが金の使い時、使い所だ」と言い残して・・・
まあ、二週間で帰ってきましたが。
その後も二年のゴールデンウィークに一週間ちょい、夏休みに四週間通い、見事に自家用の飛行機免許を取得してきました。
その後は秋に自主的に一週間休み、冬休み中はほぼ丸々、春休みも二週間、そしてゴールデンウィークに一週間、サイパンで飛んできたそうです。
なぜサイパンなんですか?と聞いたら
「時差と飛行時間だ。サンフランシスコは12時間くらいかかるし、時差も8時間くらいあってキツい。サイパンなら楽だ。アメリカの免許なのは同じだしな」
なるほど・・・と頷くしかありませんでした。まあ、長身なマイティさんには長時間の飛行機は辛いでしょうね。僕もですが。
ただ、冬休みが終わってから、
「サイパンではモデルの仕事があってな。近年では海外撮影など珍しいが、春休みはモデルの仕事と飛行時間稼ぎにサイパンに行ってくる! しかもビジネスクラスで行かせてくれるとのことだ!!」
と、喜んでました。そう、彼女はそれなりにお金持ちですが、基本的にエコノミークラスを使ってます。新幹線も普通車です。
ちなみにHLS、マイティさんの父上の会社も、社長含めて基本エコノミー、普通車だそうです。
一度、あなたの身長だとエコノミーは辛いでしょうし、お金はあるのだからアップグレードしたらどうでしょう?と問い掛けたときには
「その金で飛行時間を何時間伸ばせると思う? 前にも述べたと思うが、金には使い所があると考えておる。私は金を使うなら自分の操縦時間を伸ばすほうに使いたいのだ」
とのご意見でした。何というか、マイティさんらしいとは思いました。
ちなみに、飛行訓練をする会社も土日は休みだそうで、サイパンでの撮影は土日にしたそうです。何かと徹底してます。
でも、ゴールデンウィークにサイパンから帰ってきたときには、
「やはり、ビジネスクラスは快適なのは認めざるを得ない・・・しかし4時間弱であの料金差はもったいない。まだお酒も呑めないしな・・・」
と呟いていたのは聞こえてしまいました。
去年の秋も、今年のゴールデンウィークも、マイティさんは学校の休日を無視してサイパンに行ってます。
まあ、授業に出ていても、実際には自習しているようなものですし、学校側、というか先生方も、別に彼女なら出てなくても・・・という雰囲気です。
実際試験のときにはちゃんと学校に来ていて、素晴しい点を取るので、事前に通知しておけば問題無い、という流れになっています。
本来おかしなことなんですが、マイティさんの周囲は全てがおかしなことだらけなので特に本人も気にしていなく、周囲からも気にされていない、というのが事実です。
そんなわけで期末試験も終わり、マイティさん一位、ユカさん二位、そして、なんと僕が三位という結果・・・まあ、新歓も中間も同じ順位でしたが・・・になりました。
ユカさんがいつもおっしゃってますが、一位と二位は点差以上の差がある、のと同様に、二位と三位の差も点差以上の差があります。
そんなとき、偶然放課後にユカさんと僕だけが教室に残っている、ということがありました。




