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吉村先生、博士号を取る

教諭をやりながら博士号に挑戦していた吉村です。


正直、嬉しさ半分、申し訳無さ半分というところですが、物理学の論文が認められました。


論文の審査費用等々、大学院への支払いは正直、痛くない、と言えばウソですが、博士課程後期修了退学、という状態から、博士号を取得できるのは相当レアなのです。


その嬉しさに比べれば数十万円は安いものです。いや、正確に言いましょう。

喉に刺さった小骨を取るのに数十万円は安くないと思いますが、それをしなければ一生苦しんだかもしれない、後悔し続けたかもしれない、その気持ちを拭い切れるのであれば、決して高い買い物ではなかったと考えています。


ましてや、高校と言えど、教師として就職してしまった以上、それなりに激務であり、研究を続けるのは睡眠時間や休日を削るしかないのが実情です。


この高校に来て、理学部顧問sのうちの一人、という立場は高校の部活の顧問の中では相当に楽なほうだと思います。


理学部、文学部はコングロマリット部活なので、顧問もかなりの人数がいます。

なので、一人の顧問に負担が集中しないという意味でも楽なのですが、理学部はほぼ学内自治組織として動いてます。


生徒の選挙で選ばれる生徒会長率いる生徒会組織が正式な学内自治組織ですが、生徒の赤点をあやつるHGIS 、理学部と文学部の共同組織ですが、理学部3に対して文学部1くらいの権力比率です。人数比では2:1くらいなんですけどね。


成績優秀者ベスト30のうち、20名以上は理学部が第一で、ベスト10はほぼ理学部ですから、まあ、しょうがないです。


歴代の理学部部長は、ほとんどが男子で、かつ、運動能力にも優れたもの・・・つまり、この学校の新歓の一位は文武両道の男子ばかりだった、とのことです。


なので、歴代の生徒会長も理学部執行部には頭が上がらず、学校行事の実行部隊としては活躍していてもカリスマ的リーダーという立場ではないようです。


まあ、学校行事については高嶺祭にしてもある程度ベースフォーマットのあるものであれば、この学校の生徒ならどうにかできると思いますので、それほど心配していません。


ただ、理学部部長に三年居座った彼女の卒業後は混乱があるかもしれないな、などと考えておりましたが、理学部顧問12人のうちの一人としては、彼女が理学部執行部実践ガイド的なものを整備しているのを見て、流石の上にも流石、がまたひとつ増えたな、と感じています。


そんな感じで、理学部顧問というのはほとんど負荷がないのです。


まあ、天文班とか、合宿を伴う班、部内の部、などの担当顧問はそれなりに負荷があるのですが、天文はだれかしら好きな理系教師もいるので、同じボランティアならそっちのほうがいい、と買って出てくれるかたもいらっしゃいます。


さらに、理学部部長である彼女も高一のころから何故か博士論文を書いており、年齢的には倍近い私と、放課後に考察を加えたり、見せあったり、お互いに批評や助言をやりあったりしています。


そう、私が彼女に助言しているだけでなく、彼女が私の論文に助言もしてくれています。


物理学の内容の深いところには流石に触れて来ませんが、興味を持った分野にはグイグイくるので、彼女も私の研究分野には多少詳しくなってしまいました。


それどころか、数学的なちょっとしたミスの指摘、あとは論文英語の書き方なんかについては私より遥かに上のレベルでした。


「教諭、この書き方では突っ込まれるだけだ。英文の論文での関係代名詞の使い方だが、こちらを先に書いて、そこにこの後置修飾を加えたほうがよい」


などと添削してくれました。正直、弱いところだったので助かりました。


なので、半分くらいは彼女のおかげで査読が通り、論文誌への掲載も決まったというのが実情です。


私が彼女にしてあげた最大のことは、大学院時代ののツテで、某アメリカの有名大学に勤めている友人を紹介してあげたくらいのものです。


彼女はバンバン投稿をしているので紹介は容易でしたが、彼からは、


「おい!!これ本当に高校生かよ!!院生でもとても不可能な論理展開をしているぞ!!いや、この論文自体は可能性があるんだがな・・・」


というものでした。


Web MTGで英語で会話しているところを横で聞かせてもらいましたが、私にはまったく内容が分かりませんでした。英語で話しているってところは分かるんですけどね・・・


           ・・・


あとで聞かされた話ですけど、アメリカの一部の大学で彼女ブームが起きているようです。


「あれは何者なんだ?本当に女子高生なのか?確かに最初のころの論文は修士や博士過程に入りたてって感じだが・・・」


それは中二のころに投稿したものだと思うよ。


「女子高生どころか女子中学生かよ! まあ、それでも立派なもんだ。特に英文が立派だ。すごく綺麗、と感じるぜ?」


まあ、多言語得意で200言語くらい読み書きできるらしいからな。


「ぶっ飛んでんな! でも文章が綺麗というのは有利だよ。読み易くないと評価が上がらないからな。お前もそうだったろ」


ぶっちゃけ、そこは生徒、彼女に教えてもらっているよ。今のやつなら教授に見せてもそれほど怒られないだろう?


「まあ、見せてもらった。オレの専門分野じゃないから査読が通るかはわからないけど、『へえ、昔と違って綺麗にまとまってんな』とは思ったよ」


まあな。国際学会なら苦しくても、出身大学の博士号なら、満期修了だし可能性はあるだろう?


「そうだな・・・みんなそれを目指すんだが、就職してそれを完遂できるやつは・・・ほとんどいないよ。お前も知ってはいるだろうが・・・まあ、友人としては誇りに思うよ。よくやった」


まだ確定じゃないけどな。


「で、ちょっとした彼女ブームが起きててな? 紹介して欲しいとよく知らない先生方からメールやメッセをもらうんだが・・・紹介できないか?」


ああ、ウチに来ないか?というやつか?


「英語はまったく問題ないんだろ?まさか、日本人にありがちな、文章は完璧なのに会話がさっぱりってやつでもないだろ?」


おい、お前話していたじゃん。完璧だろ。


「おぅ・・・そうだったな。ちょっとあれこれ投稿を読みすぎて、文章に惹かれまくって忘れてた」


あのな・・・まあ、一応日本の私立大学への進学は確定しているそうだ。

大学+自校または国立大学の大学院の授業料は無料。都内の住宅も大学院修了までは無償提供だそうだ。


「なかなかの大盤振る舞いだな。返還不要の奨学金までは出ないのか?」


なんというか彼女は金持ちで、いや、親じゃなくて彼女個人が数十億の資産を既に運用中らしい。親はさらに一桁上らしいけどな


「高校生で資産運用中? さらにぶっ飛んでんな。まあ、そっちにも能力があるってことか。逆に金があってこの才能なら、有名大学でも簡単に合格できるぜ?」


なんか聞いたことあるな。まあ、彼女なら金なんかいらないから来てくれ、と言われても驚かないけどな


「まあ、そっちだろうなぁ・・・惜しいな、日本の大学に進学するのか・・・」


でも、今はそっちにいるらしいけどな。


「は?短期留学とかか?」


いや、飛行機。


「は?飛行機・・・操縦免許ってことか? 確かにこっちじゃ比較的簡単に取れるみたいだけど?」


そうだってね。彼女は今事業用の操縦免許を取りに行ってるって聞いてる。


「自家用じゃなくて事業用か? それは面倒なんじゃないか?」


なんで、定期的に高校を休んで飛行時間を稼ぎに行っているみたいだよ。


「そういうことか、まあ、あんなのが書けるんなら、高校の英数物化くらいは何の問題もないだろう」


まあね。定期試験の日に来てさえいれば問題ない。

それどころかウチには新歓という4月の頭にやる大規模な実力テストがあるんだけどさ、大学院の試験レベルの問題を入れても余裕で解いているよ。


「おいおい・・・無茶な実力テストがあるなぁ・・・」


まあな。難関大学を受験して合格する実力があれば、各科目80点は取れる。

100点は大学院レベルで取れるかどうかだ。少なくとも数学と物理はな。

その試験で全科目100点を取られたよ。実質的には、高一からずっと取ってる。


「恐ろしいな・・・」


数学と英語のレベルは高一入学直後の時点で僕より上だったよ。今では遥か上だ。


「文系科目も完璧なのか?」


完璧超人だな。


「そういや、さっき言ってたな?今はこっちか。東か?」


いや、カリフォルニアだと聞いてる。


「縦に長いけどどっちにしろ西か。じゃあ遠いな。しかし何で飛行機?しかも事業用?」


さあ、超人の考えていることなど凡人にはわからないよ。


「それを言ったらオシマイだろwww」


           ・・・


みたいなやり取りがあり、彼女の名は少なくともアメリカの一部に鳴り響いているようです。


結果として私の博士論文は受理されて、母校から博士号をいただきました。


正直ちょっと複雑ではありますが、まあ、これも私に巡ってきた運だと思うことにします。


私の論文の内容についてはかなり詳細に説明を求められ、今では彼女はこの分野においてはちょっとした専門家レベルになっていると思います。


ま、それで工学の博論も書き始めたわけですし。

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