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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第三章

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芸術家の巫女(別視点)


「ラーザさん、そんなに緊張しないでくださいね」

「は、はい」


 それは無理というもの。教皇様から話があると言われて来てみたら、神殿の中庭でお茶会とか聞いてない。しかも次期教皇様やさらにその次を予定している皆様がいる。教団の幹部中の幹部に囲まれて緊張するなと言うのが無理。それに皆さん同じ顔。初代教皇様を忘れないように魔力で姿を維持しているとか聞いたことがあるけど、本当にそっくりでびっくりだわ。


 それに教皇様とそのご家族と言ったら二千年続く教団をまとめてきた教団そのもと言ってもいい。私が神様の声が聞ける巫女だからって私自身は格式のある家に生まれたわけでもない木っ端貴族でしかないのに。だいたい、この聖国が一番長い歴史がある最古の国。その辺の国の王と謁見するよりも緊張するわ。


 しかも、マリアさんは朝早く国へ帰ったって言うじゃない。色々と依頼通りに描いたのに恩を仇で返された気分よ。絵に関して推薦してくれたとは聞いてたけど、そういう場合は推薦者もこの場にいるもんじゃないの?


『が、頑張ってラーザちゃん……! 私も昔、上司から理不尽な目に遭ったけど頑張れたから大丈夫!』

『ミリリン様、神様の上司ってなんです?』

『ミナイル様って神のこと。悪い神じゃないんだけど、なんというか、こう、我が道を行くって感じだったなぁ……たまには立ち止まったり、後ろを振り返ったりして欲しかったよ……』


 神様ってだいたい我が道を行くって感じですけどね。詳しくは知らないけど、神様にも階級があるらしいわね。ミリリン様の上司がミナイル様で、そのミナイル様と友人だったのがエスカリテ様だとか。どうも最近までエスカリテ様は天界で行方不明というか、消息不明みたいな感じでマリアさんが巫女になったころに戻って来たとか。寝てたとも言ってたけど、これは何かの揶揄かしら?


「それでラーザさん」

「は、はい、なんでしょう?」

「突然呼び出してごめんなさいね。マリアさんから簡単には聞いていると思いますが、私のご先祖でもある初代教皇コト様が考案した饅頭を教団として売り出す予定なのです」

「はい、それは聞いております」

「今回、マリアさんが売り出した饅頭には猫の絵を描いてくださいましたが、教団が売り出す饅頭には教団のシンボルを入れたいと考えています」

「教団のシンボルというと、騎士の男女が剣を掲げ、それを女性の神が見守る印のことでしょうか?」

「そうです。ただ、それをそのままではなく、あの猫の絵のようにもう少し単純化したものにしたいと考えています」

「単純化ですか」


 よく分からないけど、そういうのっていいのかしら。あの単純化に元の絵を貶すような印象はないから大丈夫だとは思うけれど……まあ、印もこの神殿でしか見ることが無いようなものだし、教皇様の依頼だから問題はないとは思うけど、ちょっとだけ心配ね。


「ここまで言えば分かると思いますが、その絵をラーザさんに頼みたいと思っています」

「それはとても光栄な話ですが……私でよろしいのですか?」

「もちろんです。マリアさんもラーザさんを推していましたよ。芸術家には譲れないこだわりがあるはずなのに、自分の依頼を全て受け入れてくれた芯の通った優しい方だと言っていましたね」

「そんな風に言ってましたか……」


 いや、褒めすぎじゃない? それに芸術家って。確かに巫女になる前から絵は嗜んでいたけど、芸術家を名乗れるほどじゃなかったわ。ミリリン様の指導や助言のおかげでなんとかなっている状況なのに。それに巫女という立場だからこその評価でしかないからちょっと複雑ね。


「それに感情を揺さぶる素敵な絵を描いていた方だとも言ってました」


 ……その場にいたら照れ臭さでひっぱたいていたかも。そういうのは本人に言いなさいよ。ああ、ひっぱたかれるかと思って言わなかったのかしら? 今度会ったら文句の一つでも言わないと気が済まないわ。


 でも、困ったものね。今日、マリアさんのことを見送ることなく、昨日の会話が最後だったわ。というか、絵本とか漫画ってなによ。描き続けていつの間にか徹夜しちゃったし、教皇様に呼ばれるまで食事もせずに工房に閉じこもってたわよ。護衛にも迷惑をかけちゃったわね。まったく、マリアさんは余計なことをしてくれたわ。


「ラーザさん」

「は、はい」

「教団も二千年という長い歴史の中で色々と変わってしまいました」

「と、言いますと?」

「困っている人がいるなら助ける、それが巫女の本分だとラーザさんは言っていたそうですね」

「え? あ、はい、そんなことをマリアさんにいいましたが……」

「それに関してもマリアさんは素晴らしい考えだと言っていましたよ。私はその考えこそが教団の始まりであったと思います」

「そ、そうですか……」

「実を言えば教皇である私もその考えを見失っていました」

「そんなことは――」

「あるのです。聞いていると思いますが、数日前、マリアさんをさらおうとした者たちがいました」

「……はい、聞いています」


 結構あとになってから聞いたけど、本人がケロッとしているからそれを聞いたときに何の冗談かと思ったわ。でも、マリアさんをさらって大司教様に言うことを聞かせるなんて、そんなことが上手くいくとは思えないけど誰が考えたのかしら? そもそも古代帝国の巫女のように世界を支配するなんて無理でしょうに。そんな派閥があるって噂には聞いてたけど、本当にあるとは恐れ入ったわ。


「そんな考えの者たちがいたのも、私の責任でしょう。なので教団が変わるという意思表示としても、しっかりとした考えを持ったラーザさんに絵をお願いしたいと思っています。どうか、引き受けてもらえないでしょうか」

「ちょ、あ、頭を上げてください! 受けます! 受けますので!」

「ありがとうございます。おそらくですが、その絵は教団の今後の二千年を示すものとして残るでしょう。ただの饅頭の絵ではなく、教団が生まれ変わるために描かれた絵だと私達が伝えていきますので」


 そんな節目となる絵を単純化していいのですかと、声を大きくして言いたい。そんな勇気はないけど。しかも教団の今後の二千年? 実際にそこまで使われる絵かどうかは分からないけど、責任重大過ぎない? お饅頭の絵を描くのに人生懸けなきゃいけないほどの難易度だけど、大丈夫かしら……?


『ラーザちゃん、やったね! すっごい名誉なことじゃない! 私の巫女がそれに選ばれるなんてすっごい嬉しい!』

『ミリリン様……』

『気負い過ぎなくていいからね! 私も手伝うし、二千年続くすっごい絵を描こう!』


 そういえばそうだった。私は一人じゃなくて、芸術神ミリリン様が一緒だ。私はミリリン様の巫女、決して一人じゃないし、神様と共同制作の絵なんだからもっと自信をもって描かないと。それに推薦してくれたマリアさんの期待にも応えたいし。よし、なんかやる気が出てきたわ。最高の絵を描いてやろうじゃない!


「良い顔になりましたね」

「あ、す、すみません。はるか先の未来に残る絵ということで気合が入りました」

「頼もしいことです。ではお任せしますね。もちろん依頼料は払いますので」

「はい、ありがとうございます。頑張ります」


 さっそくいくつか候補の絵を描いてみようかしら。単純化するからこそ、しっかりとした特徴をとらえた絵にしないと。そもそもの成り立ちも調べておく必要があるわね。単に単純化するんじゃなくて、なぜ今の絵が教団のシンボルになっているか、そこからしっかり考えないと――あら? 教皇様がソワソワしているような気が……?


「ラーザさん」

「はい」

「実はそれとは別に個人的に頼みたいことがありまして」

「個人的に? 何でしょうか?」

「単純化した猫の絵以外にも動物は描けますか? もっと細かく言うと犬の絵とか」

「え? ええ、まあ。マリアさんに練習用と十二体の動物を描かされまして犬もありましたから」

「ならばぜひ、ダックスフントの絵をお願いできないでしょうか。個人的にお金を払いますので」


 ダックスフント……胴が長い犬だったかしら? 耳が左右に垂れ下がっている感じの犬よね。行ける気はするけど、教皇様ってダックスフントが好きなのかしら?


 というか、幹部の皆さんがずるいとか言い出したんだけど、なにこれ? え? 皆さん、それぞれ描いてほしいの? 饅頭に焼印して売る? え? どれが売れるか勝負するの?


 ……これからの教団ってどんなふうに変わるのかしら。変に変わった教団のシンボルを描いたのが巫女ラーザって未来で言われたりしないわよね?


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