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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第三章

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アトリエにお邪魔しよう


「これがラーザさんの描いた絵ですか」

「ええ。芸術神ミリリン様の巫女として依頼を受けているの」

「技術的なことは分かりませんけど素敵な絵ですね」

「技術なんて分からなくていいのよ。好きか嫌いか、重要なのはそれだけだから」


 ラーザさんと会った翌日、ラーザさんが拠点としている家にお邪魔することになった。家というよりも、アトリエなのかな。風景画や人物画だけじゃなくて、宝飾や服飾のデザイン画とかも請け負っているようで、アトリエには多くの作品が置かれている。昨日買って運んだ物もインスピレーションを得るために置いているのだとか。埴輪を見てなんのインスピレーションを得るかは分からないけど。


 聖国に拠点を構えているのは、ここには色々な物が集まるかららしい。確かにいろんな国の服や工芸品があるから、参考になるのかもしれないね。それにここでは王族も貴族も偉そうに振る舞えないという理由もあるとか。どこかの国に住んでたら、そこのお偉いさんを贔屓しないといけないらしいし、ここなら権力を使った横入りもない。なるほどなぁと感心した。


 ラーザさんが言うには、ミリリン様は戦闘系の神様ではないけれど、芸術で多くの人に感動や安らぎを与えられる。だからこそミリリン様にお仕え出来て幸せらしい。見た目や言動とは裏腹にちゃんとした人なんだなと思う。司祭様にいきなり荷物持ちをさせようとしたのも、単に遊んでいるだけだと思ったからだそうだ。確かにあの時間帯は普通なら仕事をしているはずだよね。


「私の絵のことよりも、エスカリテ様ってすごいのね」

「え? なんです、いきなり?」

「昨日、ミナイル様の家にあったという芸術関係の本を受け取ったけど感動したわ」

「それは良かったです」

「今は失われたとされる大昔の絵画や石像、それに普通じゃお目にかかれない宝飾などの絵が細かいメモ書きと共に載っていたの。それを見て泣いちゃったわ」

「それほどでしたか」

「ええ。ミリリン様も感動していたわね」


 感動して泣くっていうのはあまり共感できないけど、芸術家あるあるなのかな。でも、失われた絵画が載ってたねぇ、芸術関係の本ってカタログみたいなものかな……カタログ? そうだ、カタログだ。


 ファッション誌とかデートスポットガイドとか、そういう関係の本が欲しいと思ってたんだよ。ガズ兄ちゃんのお店とかその本で紹介したら結構いい感じになるんじゃないかな。今の時点でも忙しそうだけど。


 文字が読めない人でも絵なら分かる。アデルラルド王国でそういうのが流行れば他の国も真似しそう。できるだけ安く、簡単な方法があれば広まりそうだよね。今後も他国へ行く必要があるわけだし、私のご当地グルメ堪能のためにも事前に何とかしたい。あと、エスカリテ様のご当地カップルとやらもデートスポットにならたくさんいるだろう。そっちはどうでもいいけど、何か足掛かり的なものを作りたいね。


「ラーザさん、今はお仕事忙しいですか?」

「一仕事終わったところだから今はそうでもないわね。でも、どうして?」

「私って流行に疎いんですよね」

「流行りの化粧品を使っておいて?」

「それはまあ、伝手があっただけですから」

「その製造方法もミナイル様の家にあった物らしいわね。ミナイル様って何者?」


 昔いた神様です。なぜかエスカリテ様やギザリア様に「うわぁ」って言われますけど。美を追求しすぎて残念なところが増えちゃったんだろうな。天は二物を与えないんだよ、神様だけど。


「それで流行に疎いマリアさんは何を言いたいの?」

「ファッションを紹介する本とか作ったりしませんか?」

「ファッション……服やアクセサリーを紹介する本ってことかしら?」

「私がいる国ではそういうのがなかったんですけど、他の国ならあったりします?」

「私は知らないわね。そもそも本が高いから。でも、その案、面白そうね」

「お! 本当ですか?」

「ええ、流行の服やアクセサリーを頻繁に買うなんて王族や貴族しかいないわ。本の値段が高くても需要はあると思う」


 んー、そうか。私としてはもっと庶民的なものにしたいんだけどなぁ。でも、貴族が着る服ならドレスとかで普段着とは違うから別枠って考えればいいのかも。


「もっと庶民的なものにしたいんですけど」

「本だと難しいと思うわ。本を買うお金で服が買えるもの」


 確かに本なんてこっちじゃ手軽に買えるってもんでもない。もっとこう……スーパーのチラシでも良いかな。月曜日はお肉が狙い目……いや、それはどうでもいい。


 あれ? でも、こっちの世界でも本はともかく紙って結構あるんだよね。大量の紙をどこかで見たんだけど、どこで見たんだっけ?


 ……そうだ、冒険者ギルドだ。あの依頼書、紙なのに大量に掲示板に張り付けてあった。質がよさそうな紙じゃないけど、庶民向けならあれでもよさそう。逆にラーザさんがあんな紙には描きたくないって感じになるかな?


「本は無理でも冒険者ギルドの依頼書に使われているような紙なら大量にあると思うんですよね」

「ああ、質は良くないけど、だからこそ便利に使える紙ね」

「ああいう紙に絵を描くとか嫌ですか?」

「そんなことは気にしないけれど、何枚も描くのは厳しいわね」

「あ、それがありましたね……」


 よく考えたら印刷機とかプリンターなんてないんだよ。簡単にコピーできるわけじゃないんだ。だいたい、私が思いつく程度のことなんて他の人がやってるか……。


「あの紙でいいなら複写の魔法が使えるんじゃないかしら?」

「複写の魔法?」

「別の紙に同じものを描き出す魔法って言えばいいかしら。そもそもああいう場所で使われている紙って錬金術で創り出したものなの。普通の紙とは違って魔法にも反応しやすいから、大量に複写するときにはよく使われてるわね。何かの催しとかで同じ絵が撒かれるのを見たことない?」


 ある。めっちゃある。たしか歓迎式典のときも事前にそれがばら撒かれてた。


 ……なんてこったい。答えはすぐ近くにあった。錬金術師なら滅茶苦茶伝手があるよ。複写の魔法に関しては誰がやれるか分からないけど、この辺りは冒険者ギルドのルルさんに探してもらえばいいかな。もしかしたら教団にいるかもしれないし。となれば、あとはベースとなる絵があればいいだけじゃない。


 ファッション誌とはかなり違うけど、そもそもご当地グルメを堪能したいとか、そういう理由で作ろうと思っただけだし、まずはチラシでもいいかな。ゆくゆくはデートスポットとかも載せてくれたらいい。地域限定の新聞みたいな感じだけど、そういう情報にこそお宝が眠ってんだよ……!


「あの、紙の伝手はなんとかなりそうなので、服の絵を何枚か描いてもらってもいいですかね? もちろんお金は払いますので」

「お金は要らないわ。あのミナイル様の本でおつりがくるくらいだから。今流行っている服やアクセサリーを何枚か描くだけならそこまで大変でもないし……どちらかといえば、私の方からお願いがあるんだけど」

「なんでしょう?」

「貴族向けの本は私が作っても構わないかしら。貴族向けの服飾店に提案すれば、お金を出してでも作って欲しいって言われそうな気がするのよね」

「貴族向けの服飾店ですか」


 庶民は服を買うときは店に行く。当然だ。ただ、貴族様だとお店の方へ服を持って来いとなるらしい。お店の方としては可能な限り持っていくわけだけど、それでも売れない場合もあるので、その辺りは困っているとか。その貴族御用達ってことになるから悪くはないけど、面倒なのは間違いないらしい。


 なので、まずは本を送って実物を見たい物だけ持っていくという形にすれば面倒が減るのではないかとのことだ。それに持っていかなくても提案しやすいとか。デザイン画でもいいんだろうけど、完成品の絵の方が分かりやすいとか。


 他にも本は未来に残りやすいとのこと。ラーザさんはインスピレーションを得るために、過去のデザインの服とかも調べているのだが、意外と残っていないので探すだけで難儀しているとか。いつ頃に流行った服とか本が残っていれば未来の人が情報を得やすいのはないかとのことだ。歴史に残らないような生活に関する本になるってことかな。


 それに服以外にも色々応用ができそうで、結構なビジネスチャンスになりそうとのことだ。私もお金の匂いがしてきたけど、これはちゃんとした絵が描けるラーザさんにしかできそうにないね。


「実は昨日渡された本を見てから似たようなことを考えていたのよ」

「ミナイル様の本ですか?」

「そう。ここまで明確な形にはなっていなかったけどね。実物ではないけれど、当時のことが書かれた本は貴重な資料とも言えるわ。ミリリン様がお仕えしていた方の本なのですから、偽物ってわけでもないでしょうし、芸術家だけでなく歴史学者にも貴重な資料でしょうね。なぜか神々は昔のことを語りたくないようで答えてくれないことが多いから」


 天使だからね。昔のことを語り過ぎると色々とボロが出る可能性があるんだろう。ちなみにエスカリテ様は天使たちが神を名乗っていても別にいいとのこと。そんなことよりも勇者さんと魔王さんを助けることが大事だそうだ。なので、ばらすつもりもなく、現状は放置となっている。今、天界の天使たちはどうなってんのかね。


『マリアちゃん、そろそろ司祭との待ち合わせじゃない?』

『おっと、そうでした』


 危ない危ない、この後、司祭様と待ち合わせをしてるんだった。細かい話はまた後でやるとして早く行かないと。ごめん、待った? をされるならともかく、するのは女のプライドが許せん。司祭様なら笑って待ってませんよとか言いそうだし。


『いい、マリアちゃん、たとえ到着が遅れても、ごめん、待ったは言っちゃ駄目よ』

『遅れないように行きますから言いません。むしろ私は言われる方になりたい』

『それも駄目だから! マリアちゃんの初ごめん待ったは最高の物にしないと!』

『エスカリテ様は横暴だなぁ……』


 どないせいっちゅうねん。同時に到着すればいいの? だいたい、リュートちゃんが一緒だし、初ごめん待ったって何さ。おっと、そんな馬鹿な話をしている場合じゃない。急がないとね。


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