お土産を配ろう
ひゃっほー、カレー粉ゲットだぜー。
いやぁ、ルガ王国にカレーに必要なスパイスが全部そろっててよかったよ。それにガズ兄ちゃんの料理の才能が影響して、いい味のカレー粉ができた。このお土産なら皆にも喜ばれるんじゃないかな。今日は皆のところへ挨拶がてら渡しに行こう。我がお土産センスに震えよ。
教皇様の歓迎式典があるから強行軍で帰ってきたけど、帰りは楽だったから元気いっぱいだ。野宿もあったけど、カレー料理があったから疲労になんかには負けないね。匂いにつられて魔物が寄ってきたけど、元気な騎士様たちの敵じゃない。
そして教会はやっぱりいいね。実家のような安心感。色々あったけど、これでミッションコンプリート。掃除や畑仕事はご近所さんやエスカリテ様の鳩に頼んでいたけど、ちょっと気になってたから早く帰ってこられて良かった。
みっちゃんやリュートちゃんは色々とご報告があるようで、お城の方へ向かった。教皇様へのご報告は司祭様がやってくれるようなので今は私一人だ。とはいっても、リュートちゃんのお仲間である見えない護衛さんたちは近くにいるけど。
そしてこの教会に住人が増えた。いや、住猫かな。それとも住猫神? なんかギザリア様が面白そうだし酒が飲めそうとか言ってついてきたんだよね。それはいいんだけど、向こうの国の酒屋さんが泣いて喜んでいたのが気になる。ギザリア様、猫の姿で何してたんだろう。それに噴水にいた鴨たちが噂してなかった……?
『俺の像だ! 懐かしいなぁ!』
ギザリア様が教会に飾ってある神の頃の像を見て喜んでいる。さっきまでエスカリテ様の鳩と縄張り争いでバトルを繰り広げていた猫なのに、やっぱり神様なんだね。でも、像の足に体をこすりつける仕草とか、まさに猫なんだけど。
『この像を見たとき、変な感じがしたんだけど猫に転生していたからなのね』
『変ってなんだよ?』
『この像となにかの魂が繋がっていた感じだったの。貴方と繋がっていたのねー』
『あー、そういうことか』
魂の繋がりを感じる……? よく分からないけど、転生している可能性を感じ取っていたってことかな。ということは他の神様たちも転生しているかどうか分かるってこと? ギザリア様みたいに記憶を持ったまま転生しているかどうか分からないけど、エスカリテ様の友達なら会いに行ってあげたいね。
……もしかして、エスカリテ様がブチギレてぶっころしちゃった神様たちも転生しているのかな? それはそれで面倒なことになりそうな気がするけど。
『それよりも! お土産を渡しに行くんでしょ!?』
『行きますけど、なんでそんな興奮気味に?』
『あの国も! 移動中も! カプいことが全然ない! これは由々しき事態! ご立腹! 私、ご立腹だから! もっと信仰心があったら天変地異間違いなし! 川の水をトマトジュースに変えるわね!』
『なんて迷惑な。でも、カレーライスをあーんで食べさせていたカップルがいたじゃないですか。しかも僕はいいからまずは君がお食べって言いながら』
『アレは確かによかった……張り切ってカレー粉を祝福しちゃったわ。でも足りない! 全然足りないの! 今の私はそう! 飢えた狼!』
『相変わらずおめぇは恋愛狂いなんだな。長生きなんだから落ち着けよ』
『酒狂いに言われたくないわ!』
『ああん!?』
なんか猫のギザリア様が空中に向かってひっかいている。もしかしてそこにエスカリテ様がいるの?
『あの、見えませんけど、そこにエスカリテ様がいるんですか?』
『え? ああ、最近信仰心が爆上がりしたから、視点だけじゃなくて、体ごとこっちに来れるようになったのよね。ただ、次元調整ができるほどじゃないから見えないし、触れられないけど。もっと稼げば顕現できそう』
『はぁ、なるほど……?』
『俺は見えるしひっかける!』
『たとえ猫でも手加減しないわよ! しゃー!』
猫が何もない空間を見つめているのは神様がいる説、あると思います。私から見ればギザリア様が一人で遊んでいるだけのようにしかみえないので、仲裁しておこう。エスカリテ様、ギザリア様に会えてテンション上がってるのかね。
『はいはい、神様同士なんですから喧嘩しない』
『まあいいわ、勝負はお預けね。それよりもカップルを見に行かないと』
『そうだな。というか酒場行こうぜ、酒場。もう千年くらい禁酒してんだ』
神様たちが自由過ぎて困る。教皇様、何かの手当てはでませんか。一人どころか一人と一匹の元神様がいるんで、補助金を二倍にして欲しいよ。
そういえば、本当に今回の件で褒賞を貰えるのかな。ルガ王国で勝手に宝物庫のお金を使っちゃったからね。その分の補填をしないといけない。下手するとエスカリテ様への信仰心が減っちゃうからね。最悪、来年の補助金を使うか。新たなお金稼ぎも考えないといけないね。
それにしても、うまい具合に私の株を下げられたよ。自分の頭脳が怖い。ルガ王国を出るときに、悪女とか悪巫女とか言われたし、いい感じじゃないの。笑顔で手を振りながら言われたけど、私がルガ王国からいなくなるからよかった的な感情か。
とにかくこれで私を聖女にしようという司祭様のお考えはなくなったはずだ。そういう部分を教皇様にもきちんと話をして欲しいね。勇者様や魔王様を助けるのは当然だけど、私の株が上がり過ぎるのは良くない。結婚どころか彼氏も作れなくなっちゃうよ。敢えて言おう、イチャイチャしてぇんだよ、こっちは。
……はい、イマジナリー彼氏とイチャイチャする妄想は終わり。そもそもまともな彼氏がいたことないから想像力が足らん。私の想像なんて前世の友達からの情報と創作物からの知識だけだ。漫画は色々なことを教えてくれるぜ……!
そういえばデートスポットの雑誌とかファッション誌が欲しいと思ったっけ。さすがに紙自体が高値だし、そういう本は売ってないかな……なければ作ればいいんじゃね? おっと、これもお金の匂いがプンプンする。やるしかない。
さて、帰って来たばっかりだけど、まだまだ元気。さっそくお土産を配りに行こう。留守にしてたのは一週間かそこらだけど、みんな元気かな。
「おや、マリアちゃん、大活躍だったらしいじゃないか」
ちゃん付けいただきました。ありがとうございます。カフェ&バーの店長さんはいつ見てもナイスミドル、いや、ロマンスグレーか。そんなに魅力をまき散らしたらなんかの罪で捕まりそうで心配です。
おっといけねぇ。アホな考えをしている場合じゃない。それにここはエスカリテ様のアピールタイムだ。
「いえいえ、私はついて行っただけで余計なことばかりしてました。大活躍なのはエスカリテ様ですよ」
「そんな風には聞いていないが、本人がそう言うなら、そうなんだろうね」
「そうですよ。私なんか宝物庫から勝手にお金を持ち出すような悪女でしてね」
ここでも悪女アピール。隙あらば聖女にはふさわしくないと言っておかないと。どちらかと言えば、魅惑的な女性を目指してます。無理だと分かっていても山は登らないといけないんだよ。
でも、店長さんは聞いたって言った? もしかしてルガ王国のことがすでにこっちに伝わっているのかな。大聖堂なら離れた場所でも話せるらしいから、そこから広まったのかも。
「それで最近の悪女は白猫を連れているのかい?」
「あ、すみません、飲食店に入れてはいけませんよね」
元神様だとしても今は猫。毛が落ちるなら入っちゃだめだよ。猫カフェの猫は毛が落ちないような特殊な訓練を受けていると聞いたことがあるけど、本当かな?
「うん? 別に構わないよ。暴れるようなら困るけど、大人しいみたいだしね。それでこの猫は? さっきからワインの瓶を触ろうとしているけど?」
「ルガ王国で見つけまして、色々あって同居することになりました」
「ふうん、変わった猫だね」
飲食店に猫がいても気にしないのかな。最近は石鹸が普及されてみんな小綺麗になったけど、衛生面はあまり気にしていないのかも……ファッション誌もそうだけど、クリーニング業もいいなぁ。いや、それよりも洗濯か。手間が掛かるし、全自動洗濯機とか欲しいよ。魔道具とかでなんとかならんもんかな。
『なあなあ、ここ酒店だろ、酒奢ってくれ』
ギザリア様、猫のアピールを心得ている。千年も猫をやってると板につくのか、あざとさが可愛いぜ。でも、ここは心を鬼にして言わないと。
『猫はアルコールを分解できないので飲んじゃ駄目です』
『俺の身体は神に近いから大丈夫。プチ不老不死なんだって』
『他の猫が真似したら困るので駄目です』
『くそう! ここでも駄目か! 俺、いつになったら酒を飲めるんだよ!』
『猫に転生した時点で飲んじゃ駄目なんですよ』
『俺が何したってんだ!』
『前世でお酒を飲み過ぎたんじゃ?』
身体は不老不死に近くても、痛みとかはあるらしいからね。変なものを飲んで苦しくなったら大変だよ。転生してから一滴も飲んでいないみたいだから、ちょっとかわいそうな気もする。ダメ元で聞いてみるか。
「店長さん、猫でも飲めるお酒ってあります?」
「また変なことを言い出したね。水以外を与えたら良くないと思うけど」
「ですよねぇ」
「エスカリテ様にまた調べてもらったらどうだい。それか酒神イシュラグ様ならそういうお酒の情報を持っているかもね」
「酒神様ですか」
どの国にいるのかは知らないけど、酒神を名乗っている天使なら確かにそういうお酒を作れるかも。教皇様経由で巫女様を紹介してもらおうかな。そもそもこの時代に巫女様がいるかな?
『イシュラグ? 俺の天使じゃねぇか』
『え? そうなんですか?』
『おうよ。よっしゃ、アイツに作らせよう! これで問題解決だな!』
猫というものすごい需要の狭そうなお酒を神様というか天使に作らせるのか。そもそもイシュラグ様ってギザリア様に対してどう思ってるのかな。いきなり敵対してくるような天使じゃないといいんだけどね。おっと、それよりもお土産だ。




