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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第二章

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女王(別視点)


「……もう一度言ってくれる?」

「カリア様に対する支持が高まっています」

「マリアじゃなくてカリア、私の聞き間違いじゃないのね?」

「もう三度目ですが、もう一度言いますか?」

「いえ、いいわ。でも……なんで?」


 お父様やお母様に付き従っていた貴族や役人を排除し、国の方針を決める大事な会議には信頼できそうな者たちを呼んだ。任命はこれからだけど、今後はこの者たちと一緒に国を動かしていかなくてはならない。宰相だけは両親の考えとは真逆だったのでそのまま残していたんだけど、これは罠なのかしら?


 だいたい、まだ何もしていないのに私の支持が高まっているって何事? 色々あったけどミシェルたちは朝早くに帰路についたから、これからが本番だと思っていたのに、何もしないうちから支持されているってどう考えてもおかしい。


 たしかに昨日は色々あった。エスカリテ様の巫女であるマリアって子が王都の広場で勝手に炊き出しをした。しかも宝物庫からお金を盗んで。自分で公言しているほどだけど、何度考えても何をしたいのか分からない。私の睡眠時間を返して欲しいわ。


 周辺国との取り決めで、この国の対処は最後、つまり、呪病を防ぐエスカリテ様の像を手に入れるのは最後ということになっている。でも、炊き出しのおかげで、それを食べた人が治った。しかも、炊き出しに使っていたらしい祝福された調味料だかスパイスだかが王都以外にも広がって治っている人が徐々に増えている。


 まさかとは思うけど、それが関係しているのかしら。それに関して私は何もしていないんだけど、なんで私の支持が高まってるの?


「簡単に言いますと、エスカリテ様の巫女、マリア様のおかげですな」

「そうだとは思ったけど、因果関係を分かるように教えてくれるかしら」

「長くなりますが、よろしいですか?」

「構わないわ」

「マリア様に炊き出しを頼んだのがカリア様ということになっています」

「……してないけど?」

「ですが、民はそう思っております」

「なんで?」

「炊き出しはマリア様が国の宝物庫から勝手にお金を奪ってやっていることだと宣伝しているからでしょうな」

「そこが良く分からないんだけど」


 マリアって子が勝手にやったことは分かっている。自分でもそう言っている。宝物庫に報酬を勝手に貰うと置き手紙もあった。でも、なんで私が炊き出しを頼んだことになっているのかしら。


「マリア様の言葉を誰も信じていないことが影響しております」

「信じていない? 実際に宝物庫から勝手にお金を奪ったわよね?」

「はい。それもマリア様が奪ったことが分かるように手紙まで残されておりました。ですが、そんな傍若無人な行動をマリア様がするとは誰も思っていないのです」

「そう、なの……?」


 確かに事情を知らなければあのマリアって子がそんなことをするとは思えない。ミシェルから話を聞いた後だと、そんなことをする人物だとは私だって思えない。でも、実際は本当にお金を奪っている。どういうことなの?


「マリア様がそう言うのは事情がある、民はそう考えたようですな」

「事情?」

「この国の呪病の対処は最後ということを民も知っています」

「ええ、そうね」

「その事情から、こういう状況だと民は思っているようです。カリア様が呪病の対処をマリア様に頼みましたが、周辺国との取り決めでそれはできない。ですが、マリア様が勝手にやったことにすればこの国は周辺国から何か言われることはない。なのでマリア様は自分が悪者となって呪病を対処してくれたのではないか、と」

「……民が勘違いしているってこと?」

「そうなります」


 呆れた。私って勘違いで支持されているの? しかも何もしていないのに? 恥ずかしいったらないわね。


「私が何もしていない事実を公表して。そんなバカげた支持なんていらないわ」

「それは無理でしょうな」

「なんで!」

「落ち着いてください。カリア様がマリア様に依頼していないと公表したとしても、それは周辺国への対策だとしか思われません。それにマリア様が宝物庫からお金を勝手に持ちだしたことは置き手紙、つまり証拠があります。カリア様は何もしていない、それは公表するまでもなく、民にとっては事実なのです」

「なん、ですって……?」

「民はマリア様が宝物庫から勝手にお金を持ち出して炊き出しをする悪い巫女だと笑いながら感謝しております。そしてマリア様が自分を貶めてまで炊き出しをしてくれたのは、カリア様が相当頭を下げたのだろうという憶測です。そのおかげでカリア様の支持が高まっているということですな」


 宰相が笑ってる。初めて見たわ。私はたぶん、これまでにしたことがないくらい渋い顔をしていると思うけど。


 あら? 急に険しい顔になった?


「恐ろしいですな」

「恐ろしい?」

「そもそも対処する必要はないのですが、こちらには全く打つ手がないという状況は恐ろしいとは思いませんか。事実を公表したところでそれは周知の事実、ですが、それは誰も信じていない。こうなった以上、周辺国も文句は言えないでしょう。さらに困ったことに我々は強制的にマリア様に借りを作ることになったということです。勝手に宝物庫からお金を持ち出したことを咎めることはできますが、そんなことをすれば暴動が起きかねませんぞ」

「……そうね」


 民を助けただけでなく、王家の信用を少しだけ回復することができた。私達がどうしてもやりたかったことをマリアって子は一人でやった。しかも、どこからも文句を付けようがない状態で。いえ、文句はあるけど、それすらも封殺された。


 そして巫女の呪病の対処だけでなく、その後の対処にまで借りを作ってる。どこまで計算しているのか分からないけど、確かに恐ろしいわね。敵に回したらと思うと震えがくるわ。


「言っておきますが、借りはこんなものではありませんぞ」

「どういうこと?」

「マリア様が炊き出しを行ったのはカレーライスという食べ物なのです」

「カレーライス?」


 カレーって南の方にある国で作られているカレー粉のこと? 滋養強壮に良いから高値で取引されていると聞いたことがあるわ。ライスというのはお米のことだったかしら。うちの国では結構作られているけど、主に家畜の餌よね?


「マリア様はカレー粉を市場にあるものだけで作ったようですな」

「……あれは南の国だけが作れるから高値で取引されているのよね?」

「多くのスパイスを配合したものであることは分かっていましたが、その種類や配合率が分かっておりませんでした。マリア様はエスカリテ様からの知識でそれを作ったそうです」

「うちの国でカレー粉が作れるってこと……?」

「マリア様は大量のカレー粉を作るのに王都にいる料理人を使ったようですな。今や炊き出しを手伝った料理人全員がカレー粉を作れます」


 え? ちょっと待って? この国でカレー粉が作れるなら高値で輸出できるわよね? 周辺国への賠償金の一部に充てることもできるかしら?


「カリア様」

「……考え事をしてしまってたわ。何?」

「マリア様はカレーに関しても小麦粉などでとろみをつけ、従来の食し方とは異なる方法も提供してくださいました」

「とろみ……?」

「カレー味のシチューが一番近いと思います」

「……すごいわね」


 あれってスパイスよね? 肉に振りかけるとかじゃなくて? 高値がつく物だから南の国以外では食べ方の研究なんかできなかったはず。つまりカレー粉を使った料理まで教えてもらったわけね。


「それを炊いた米の上にかけた料理。それがカレーライスだそうです」

「炊いた米……?」

「主に家畜の餌とされている米ですが、人も食べられますが雑味が多い。ただ、精米して炊くことによってずいぶんと変わるようです。家畜用でしたが、人でも美味しく食べられるとなると――」

「食糧問題も解決するわね」

「炊き方を教えるだけで我が国の問題が色々と解決できそうですな」


 すごいというよりも呆れるわ。たった一日、たった一日でこの国の抱えている問題の大部分が解決しそう。でも、できすぎというか、こんなこと計算で出来るの?


「私、マリアとは話していないんだけど、そんなに優秀なの?」

「私も存じません。優秀でなければこの結果は何だとお思いですかな?」

「……ただの偶然かしら」

「では、マリア様はアデルラルド辺境への干渉も偶然潰しましたことになりますな」

「……なんですって?」

「辺境の貧困化、英雄の懐柔、反乱の扇動、それらを潰したのはマリア様です」

「……はぁ?」


 いけない。素で驚いた声を出してしまったわ。でも、この場にいる全員が同じような顔をしている。口を開けてぽかんとしているわ。


「ミシェル様から話を聞いても信じられませんでしたが間違いないようです」

「偶然……じゃないの?」

「ミシェル様もたまたまそうなっただけだとおっしゃっていましたね」

「なら――」

「ミシェル様の言葉を信じられますか?」

「……」

「ミシェル様がマリア様に注意が向かないように仕向けている、もしくは、マリア様はミシェル様も欺いているほどの方という可能性はどうでしょうか」

「……可能なの? あのミシェルを欺ける?」

「わかりません。ですが、マリア様を敵に回すのはこの上ない愚策だと進言させていただきます。今回のことも、私には力を見せつけた牽制、そしてつまらないことをすれば潰すぞという最終通告としか思えません」

「最終通告……」

「今やマリア様の言葉はそれが嘘であろうと全てが真実。この状況でマリア様がカリア様に頼まれたと言えば、周辺国がこの国を潰すように動きますぞ。恩を売りつつ喉元に刃物を突き付ける、いやはや、恐ろしい相手ですな」

「……すぐにアデルラルドで工作している者たちを呼び戻しなさい。あの国への侵略行為は今この時を持って終わりよ。そしてこれからはあの国とは――マリアがいる国とは友好な関係を結ぶ。これは徹底させて。マリアへの敵対行為は滅亡への道でしかないと心得て」

「賢明な判断です」


 この国の女王になるのは罰ゲームですって? それどころか判断を誤ったら一瞬でゲームが終わるような罠が仕掛けられてるじゃない。しかもどんな状況からでも一瞬でゲームオーバーになる状況だったなんて。


 それに宰相に言われてようやく理解した。ミシェルはマリアが自分よりも優秀だと認めているのね。助けられた恩もあるだろうけど、どちらかといえばそっちが本命……あの子が自分の姉と認めたのはマリア。


 なんとくなけど、悔しいわ。私はミシェルに劣る血の繋がった姉、そしてあの子は血の繋がっていない優秀な姉を慕っている。慕われたいと思っているわけじゃないけれど、姉として認められていないのは悔しい。


 ……いいわ、十年よ。十年でこの国を世界一の国にして見せる。すでにマリアのおかげで問題の一部が解決した。それはミシェルが言っていた想定には入っていないはず。ならこの国を十年存続させるだけではダメ。もっともっと良い国にしないと。見てなさい、ミシェル。私は必ず貴方よりも優秀な姉になってみせるわ!


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