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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第二章

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隣国へ向かおう


 状況から考えると浮かれちゃいけないんだけど、こっちの世界で旅行って初めてだから嬉しいね。最近まで辺境を出たことなかったし、王都まで行くのも小旅行気分だったけど、こんな大がかりの旅行は初めてだ。しかも今度はあの思い出したくもない野郎とは一緒じゃないし、楽しい旅になりそう。別に観光じゃないし、向かう先にはあまり行きたくないけど、ポジティブに行こうじゃないの。


 結局、司祭様のお願いにより、ルガ王国の王都へ行くことになった。


 感染源となっている呪神の巫女様はその感染力や症状が重く、エスカリテ様の像や石鹸で対処できるのか分からないとのこと。そのために今回の対処をしてくれたエスカリテ様の巫女、つまり私に来て欲しいとのことだ。間接的ではなく、直接対処してほしいってことなんだろう。


 その依頼だけど、国と教団が猛反対したらしい。ただ、そうなると巫女を殺すしかないと言い出したのでしぶしぶ同意したのだとか。みっちゃんにあんなことしてる上に、人質を使って交渉とか本当にひどい国――というかひどい王様だよ。


 ここまではいいんだけど、もうひと悶着あった。


 みっちゃんやエスカリテ様が猛反対してきたんだよね。ルガ王国へ行くことじゃなくて、司祭様と一緒に行くことに猛反対したんだけど、これが良く分からない。行かないというわけにもないので、誰もが納得する状況というのがこれだ。


「馬車の中、狭くない?」

「孤児院だともっと狭かったでしょ」

「あ、なら私は外にいますか? 歩きでも平気ですので!」

「そういうことでしたら私も外で――」

「ああ、そういう意味で言ったわけじゃないから。皆が平気なら大丈夫だよ」


 四人乗りの立派な屋根付き馬車の中にみっちゃん、アレイダちゃん、絶対零度メイドさん、そして私の四人が座っている。そしてもう一つの馬車があって、そっちには司祭様とガズ兄ちゃんが乗っている。なんでこの面子なら問題がないのか分からないけど、皆が納得しているならまあいいか。


 当然、これで全部じゃなくて、馬車の周りには他にもお世話をしてくれる人たちや護衛の人達がいて、相当な数になっている。ちょっと過保護のような気もするけど、教皇様やエルド様が手配してくれたので文句は言えない。それに最初は一個師団くらいの数だった。それは軍事行動ですとツッコミをいれたら、二百人くらいまで減ったけど。私としてはそれでも多い気がするんだけど、ルガ王国が何するか分からないということでこの人数になったらしい。ルガ王国、信用されてないね。


 大所帯もそうだけど、みっちゃんを連れて行くのもどうかと思った。でも、私が司祭様と二人で行くことを説明したら、猛反対した上に妥協案として自分とアイレダちゃん、そしてガズ兄ちゃんを連れていく条件をだしてきた。それならってことで孤児院メンバーと共にルガ王国へ繰り出すことになったわけだ。


 エルド様からも絶対零度のメイドさんを見える形の護衛として連れて行って欲しいと頼まれて、私の護衛としてお供してくれることになった。見える形の護衛ってことは、見えない形の護衛もいるわけで、そこまでするのかってちょっと驚いたよ。


 なので、せっかくだし仲良くなろう。たぶん、同年代のような気がするからね。


「あの、メイドさんのお名前を聞いても大丈夫ですか?」

「名前はありません。好きにお呼びください」

「名前がない?」

「私達は影と呼ばれているだけでして、個別の名前はないのです」

「ええ? つけてもらえなかったってこと? それともこういう仕事のために名乗れないってこと?」

「いえ、初めからないのです。隠すこともないので話しますが――」


 メイドさんの話だと、影と呼ばれる集団は、とある犯罪組織で育てられた子供達の集団だという。その犯罪組織を潰した時に子供達を保護したのがエルド様であり、他に生き方を知らなかった子達を改めて教育してくれたとか。


「名前を付けるという話は当然あったのですが、皆がそれを拒否しました」

「え? なんで?」

「犯罪組織にいた頃の名残でしょうか。任務を遂行するためには人ではなく道具のようになれという考えが残っていまして」

「名前を付けると任務に失敗するかもしれないと?」

「はい。なので好きにお呼びください。おい、でも、お前でも構いませんので」

「そう言われてそう呼ぶ人はいないよ」


 しかしね、名前がないのはいざというとき困るよね。仮の名前でもいいから名乗ってもらおうかな。


「せめてこの任務中は仮の名前を名乗ってもらってもいい?」

「コードネームですね?」

「え? そう、かな?」

「それでしたら黒犬とでも呼んでくだされば」

「犬はちょっと……」


 確かに黒髪だし、犬は好きだけど、もっと普通の名前がいいよね。センスはないけど私が付けよう。少なとも黒犬よりはマシになるはず!


「なら、リュートって呼んでもいい?」

「リュート……」


 絶対零度なのでアブソリュート・ゼロから取った感じ。それにリュートって楽器の名前でもある。メイドさんの声って表情に反して優し気な感じがするんだよね。どちらかといえば、こっちがメインだ。


 楽器由来だと伝えたら、メイドさんが無表情まま、両手を軽く上げてアワアワしている。どしたん?


「大丈夫?」

「……失礼しました。素敵な名前をありがとうございます。ぜひ、リュートと呼んでください」

「それじゃ、リュートちゃん、よろしくね」

「リュートちゃん……」


 リュートちゃんは無表情だけど、頬がピクリと動く。どういう感情か分からないけど、嫌って感じには見えないから喜んでくれてるのかな?


「マリア姉さん! 私にも名前を付けて!」

「みっちゃんはミシェルでしょ?」

「そこを何とか!」

「いや、なんとかって」

「ミシェル様、馬車で暴れるのはよくありません」

「……ちょっと、リュート? なんか、ドヤ顔してない!?」

「してません。気のせいです」


 なぜかみっちゃんはリュートちゃんの顔を見てそう言ってるけど、どう見ても無表情だ。そして喧嘩になりそうな二人を見て慌てているアイレダちゃん。色々とカオスだぜ。でも、女の子同士って感じでいいね。ここは恋バナもいっちゃうか?


 ……よく考えたら恋バナがねぇよ。だいたい、最後にバイオレンスな結果になるし、やめておこう。なら男に騙されないテクニックを……私、前科持ちか。恋愛に関する信用度が地の底だよ。


 そういえば、ガズ兄ちゃんの方は大丈夫かな。あまりよく知らない司祭様と二人きりとか間が持たないような気がする。料理人としてついて来てくれたのはいいけど、お店の方を休ませちゃったのは申し訳なかったな。稼ぎ時なのに。


 そんな風に思っていたら、外から話しかけられた。


 護衛の騎士さんの話だとそろそろ野営の準備をするとのことだ。本来ならどこかの町に泊まるんだけど、今は急いでいく必要があるとのことで、そうも言ってられないらしい。なんかすごく謝られたけど、孤児院育ちを舐めないでほしいね。あの孤児院はほぼ野宿と変わらん。


 そんなわけで野営の準備中。なんだ、テントがあるなら極楽と変わらないよ。雨風をしのげるだけで十分やろがい。


「おーい、飯はなんかリクエストがあるか?」

「ガズ兄ちゃんが作ってくれるんだ?」

「一応、料理人として来てるからな」


 一応って、ガズ兄ちゃんは料理人以外の何者でもないんだけど。みっちゃんがものすごく推してたから付いてきてくれたけど、もしかしてそういう関係って聞いたら二人とも「ない」って即答したよ。エスカリテ様の中のカプ厨が騒がないらしいから本当に何でもないんだろうね。それはそれでつまらないけど。


 それよりもご飯だ。こういう時の野宿飯って何があるんだろう。何を出されても食べるけど、特に思いつかないのでおまかせだ。ガズ兄ちゃんの手伝いをしようと思ったら、身体を休めておけって言われちゃったよ。頼りになるお兄ちゃんだぜ。


 そんなわけで作られた料理は干し肉とチーズとレタスをパンで挟んだサンドイッチだ。干し肉はめちゃくちゃ固いんだけど、ちょうど良い噛み応えになってるし、塩気が最高だ。それとジャガイモの温かいスープもある。ほっとするわー。もうこれだけで孤児院の時の料理を超えてるね。おかわりください。


 それに周囲からも美味しいという声が聞こえる。さすがはガズ兄ちゃんだ。どちらかといえばパティシエ寄りだけど、普通の料理だっていけてるよ。


「ホットチョコも飲むか?」

「え? 持って来てたの?」

「作ったものを魔道具の酒樽に入れて持って来てる。店長が貸してくれたんだ」

「そうなんだ? なら店長さんにお土産を買っていかなきゃなぁ」

「遊びに行くわけじゃないんだけどな」


 そんなわけでホットチョコを飲むと、甘い香りにひかれたのか皆が飲みだして、感銘を受けていた。なるほど、こうやってチョコのアピールか。今のところ独占販売だし、店長さん、策士だな。


 ……はて? 司祭様の表情がすぐれないけど、もしかして甘い物は苦手かな?


「司祭様、甘い物は苦手ですか?」

「いえ、美味しいです。甘い物が身体に染みわたるようで疲れが取れますね」

「それにしては浮かない顔をしていますが……?」

「これもマリアさんが発案した物なんですよね?」

「え? いえいえ、エスカリテ様の知識ですよ」


 本当は前世の知識だけど、私のやることは大体エスカリテ様からの知識にする。その方がいいからね。


「そうだとしても、マリアさんの功績に違いはありませんね」

「私は何もしてませんよ」

「本当に何もしてないならどれだけよかったか……」

「ええと?」

「差が開く一方でまったく縮まらない状況なんですけど、どうしたものですかね?」

「あの、お話が良く――」

「失礼しました、色々と考えることが多いもので。そうですね、諦めないとだけ言っておきます」

「私には想像できないような大変なことがあるんでしょうね。応援してます」

「ありがとうございます。頑張ります」


 良く分からないけど、色々な悩みがあるんだろうね。王族で司祭だからこその悩みなんだと思う。庶民は庶民で悩みはあるけど、悩みのレベルが違うんだろうなぁ。


「ちょっとリュート、アンタ何してんの?」


 いきなりみっちゃんの声がしたので、そちらを見ると、リュートちゃんがホットチョコが入ったカップを天に掲げていた。確かに何をしているんだろう?


「これは神の飲み物だと思います。崇めないと」


 うん。リュートちゃんは無表情なだけで面白い子だな? ルガ王国の王都まであと数日あるから、しっかり親睦を深めよう。


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