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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第二章

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クールダウンしよう


 やる気どころか殺る気まんまんだったのに、皆から落ち着けって言われた。失礼な、私は落ち着いている。どうやって報復をするか大量の案を出せるほど落ち着いていたのに。やりすぎだって全部却下されたけど。馬鹿な、全部やったって足らんわ。


 でも、当事者のみっちゃんにも「お願いだから落ち着いて」と言われたし、司祭様、教皇様、執事さんの全員に落ち着いてといわれた。とどめになぜか教会にやってきたガズ兄ちゃんに「甘いものをやるから落ち着け」と子供扱いされた。なぜだ。


 とはいえ、言いたいことは分かる。まずは情報収集するから待って欲しいと言われたけど、それはその通りだろう。仕方ないので、ちょっとだけクールダウン中だ。ホットチョコが五臓六腑に染みわたるぜ。あまー。


 でも、また私の中で怒りがくすぶっているんだが? カウントダウンはすでにマイナスなんだが? ロスタイムなんてこっちにはねぇんだよ。レッドカード何枚出したと思ってんだ。


『報復なんてすぐやるべきなのに。そう思いませんか?』

『そうかもしれないけど、皆ドン引きしているから落ち着こうね』


 エスカリテ様にも落ち着けって言われた。過去一落ち着いているのに。でも、皆がそう言うなら仕方ない。しかしね、私以外が大聖堂で会議中っておかしくない? なんで蚊帳の外? まあ、みっちゃんのことではあるけど、国がヤバかったってレベルなので勝手に動いちゃいけないのはわかるけどさ。


 掃除も終わっちゃったし、畑仕事も終わったからどうしよう。会議はまだかかるだろうし、教会で待っているだけってのもね……あ、そうだ、出歩いてはいけないとは言われてないし、エスカリテ様のミニ像が出来たんだから、お世話になったところに配っておこう。


『エスカリテ様、ミニ石像に祝福してもらっていいですか?』

『え? 今?』

『はい、手持ち無沙汰ですのでミニ石像を配ってこようかと』

『あれ? 売るんじゃないの?』

『お世話になっているところには無料提供するつもりでして』

『それはいい考えね。ならすぐに祝福するわ!』


 ミニ石像を持つと、エスカリテ様が祝福してくれた。石像がぼんやりと青く輝くと、すぐに光が収まる。いいねいいね、これがあれば風邪を引きにくくなるって宣伝すれば石像を買って信仰してくれる人が増える気がする。せっかく教皇様を見に色々な国から人が来てるわけだし、他国へのグローバル展開も視野に入れないとね。


 ええと、無料提供するところは、司祭様の大聖堂、ガズ兄ちゃんが務めている飲食店、ルルさんがいる冒険者ギルド、カフェ&バーの店長さん、中央広場のカップルさん、エルド様、シュノアさんところの畜産場、ソナルクさんの錬金術師ギルドってところかな。おっと、みっちゃんに孤児院にも持って行ってもらおう。よく考えたら辺境でお世話になった人も多いな。そっちの皆にも持って行ってもらおうか。


 でも、まずは王都。配りに行こう。




 さて、エルド様には執事さんに持たせるとして、最後は大聖堂の司祭様だ。会議中だけど、私は参加しちゃいけないみたいだから、石像を受付さんに渡してすぐに帰ろう……と思ったら司祭様が来るらしい。会議の情報をくれるのかも。


 受付さんの案内でいつもの部屋に通される。そして大量のお茶菓子を用意してくれた。私ってお茶菓子大好き巫女って思われているんだろうか。正解です。


 それにしてもミニ石像はなかなか好感触。やっぱりただの石像じゃなくて祝福効果があるからかなり喜ばれた。目立つところに飾ってくれたところもあったし、これはエスカリテ様のブームが来るかもしれない。火付け役としてがんばっちゃうぞ。


『エスカリテ様の像、皆さん、よろこんでましたね』

『嬉しいわよねー。祝福を頑張った甲斐があったわ』

『定期的に石像が出来ますのでよろしくお願いしますね』

『まかせて!』


 どれくらいの値段が良いのかな。安すぎてもあれだし、高すぎたら買ってくれないかもしれないし。まあ、ちゃんと利益がでる値段、それでいて、誰でも買えそうなお手頃感……銀貨十枚くらい? 強気すぎるか?


 そんなことを考えていたら部屋がノックされた。


「司祭のフレイです。入ってもよろしいでしょうか」

「はい、どうぞ」


 立ち上がって司祭様を迎える。なぜか司祭様は満面の笑みだ。これは最大火力の報復が決まったってことかな。遠慮なくやっちゃって欲しい。中途半端にやると反撃されるからね。


「マリアさん、エスカリテ様の像をありがとうございます。それに祖母の分までいただけるとは」

「いえいえ、エルド様には大きなエスカリテ様の像を譲っていただけましたので。それに比べたら小さいので申し訳ないのですが」

「そんなことはありません。それに像はエスカリテ様が祝福してくださったとか」

「はい、風邪に耐性ができる程度ですが」

「……それは相当すごい効果だと思いますけどね」


 司祭様の祖母がエルド様というのはすでに執事さんと情報を共有済み。エルド様が先代王妃であることや、司祭様が王族であることは知らない振りをしている。説明されていないし、余計なことを知ってると大変だからね。


「それで報復の件はどうなりました?」

「まだ情報が足りないので検討中です」

「……そうですか……」


 遅いとは思うけど、国が絡んじゃうとこんなものか。相手はこの国よりも大きいから、下手なことをしたら逆に危ないからね。それに私が伝えたのは状況証拠的でしかない。みっちゃんの話も憶測だし、その辺がはっきりしない限りは動けないか。少なくともこのままってことはないと思うんだけど、なんかモヤモヤするなぁ。


「あの、マリアさん」

「はい」

「ちょうど良い機会ですので、この国の巫女に会いませんか?」

「そういえば、会わせてくださるお話でしたね。ならお願いします」


 怒りはくすぶっているけど、何もできない以上、他のことをしないと。でも、他の巫女様か。神様としてはエスカリテ様の方が上というか、天使と神様じゃ全然違うんだけど、巫女としては新参の私の方から挨拶に伺うべきだろう。ディアナさんみたいな人じゃないといいんだけど、大丈夫かな。


 司祭様の後について別の部屋へと移動する。もちろんお茶菓子はゲットだ。


「マリアさん」

「はい」

「歯がゆいでしょうね」

「ええと……?」

「決定が遅くて歯がゆい思いをさせてしまっていると思ったのですが」

「すみません、顔に出てましたか?」

「いえ、謝る必要などありません。ですが、マリアさんは不思議ですね。孤児院の皆を家族と呼び、ミシェルさんが酷いことをされていると分かってかなり怒っている」

「家族が酷いことをされていたら怒りませんか?」

「それは怒りますが、マリアさんはミシェルさんとは血が繋がっていないかと」

「夫婦だって血は繋がってませんよ。でも、家族でしょう?」


 え? 何? 滅茶苦茶驚いてない? しかも顔がちょっと赤い? 私、変なこと言った? いや、言ってない……はず。そりゃ、血の繋がりがある遠縁なら結婚して家族になることもあるだろうけど、夫婦って基本、血の繋がりがない他人だよね?


 家族の定義って血の繋がりだけじゃないと思うんだよね。孤児院に来た事情はそれぞれだけど、同じ釜の飯をたべて、同じ屋根の下で寝て、一緒に苦楽を共にした仲間であり戦友だ。家族以上の繋がりを感じることもある。


 だからこそみっちゃんにしてたことが許せん。


「血が繋がっていたって酷いことをする人は家族じゃないです」

「それは……その通りですね」


 みっちゃん、大丈夫かな。ルガ王国とはすでに縁を切った心持ちだったらしいけど、血が繋がった家族から捨てられただけじゃなく、酷いことをされてたショックは私では想像がつかないほどあると思う。それが王族の務めみたいな話もあるだろうけど、勝手に人生を決めていいわけがないだろうが。命を何だと思ってんだ。


 あー、やばい、暴れたい。


 ……落ち着こう。そもそも私に何ができるって話なんだ。できることとできないことをしっかり認識しないと。私の馬鹿な行動で色々なことを台無しにしたら、それこそ大変だ。


「マリアさんはどんな方と結婚されたいのですか?」

「………………へ?」


 え? なに? 時間が飛んだ? 脳が言葉を理解するまでに数秒かかっちゃったけど、司祭様は何を言ってるんだろう?


「突然すみません。その、マリアさんの結婚相手は幸せだろうなと思いまして。で、どのような男性がタイプで?」


 なんでいきなり? そんな話してたっけ? 司祭様もけっこう空気を読まないね。それとも私のことを気遣ってくれてるのかな。ならば筋肉がストライクと答えるべきだろうか。イケメンは申告敬遠。


『マリアちゃん、ちょっと待った!』

『エスカリテ様? 大きな声を出してどうしました?』

『マリアちゃんには私が最高の彼氏を見つけてあげるから!』

『は? 司祭様といい、エスカリテ様といい、いきなりなんです?』


 私ってそんなに落ち込んだ顔でもしてるのかな? それとも怒りで悪い顔してる?


『ここは黙秘! 黙秘権を行使しよう!』

『なんで弁護士ムーブ? 私って何かの容疑者なんですかね?』

「あの、マリアさん?」


 おっと、司祭様が不思議そうな顔をしている。


「すみません、ちょっとエスカリテ様が話しかけてきまして」

「そうでしたか……いえ、先ほどの質問は忘れてください。どうぞ、着きました」


 いつの間にか巫女さん達がいる部屋に着いたようだ。よし、みっちゃんのこともあるけど、まずはこっちだ。巫女さん達と仲良くなろう。男運はないけど、女運は結構あるんだぞ。


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