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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第二章

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戦神(別視点)

 

 私は何に期待していたのだろう。天使の身でありながら神に勝つなどあり得ないはずなのに。二千年という時の流れが考えを変えてしまったのだろうか。


 結果的に私は戦い、そして負けた。戦神と呼ばれているこの名がこれほど滑稽なことはない。そもそも自分の創造主であるバルノア様に勝ったのがエスカリテ様。どのような戦いだったのかは知らないが、バルノア様から神格を奪うほどのエスカリテ様に勝てると思っただけで――いや戦おうと思っただけで傲慢だったのだろう。


 情けない。多くの信仰心を得たという考えから勝てると思ってしまうとは。いや、頭を下げた時点で勝てるなどとは思っていなかったはずだ。ただ、もしかしたらという考えが頭をよぎっただけ。結果は悲惨なものだったが。


 神殺計画もエスカリテ様に直接戦いを挑むのではなく、別の方法であった。恐怖によりそれすら忘れてしまうとは。だが、エスカリテ様と戦った今なら分かる。


 あの計画は本当に成功するのだろうか。


 私にはそう思えない。エスカリテ様が眠っている状態なら可能性はあっただろう。だが、すでに目覚めた。しかも巫女もいる。たった二ヶ月程度であの世界の巫女に憑依できるほどの信仰心を得ているとは驚いた。エスカリテ様の言動から考えてあの巫女は寵愛を受けていると言ってもいい。


 真に恐れるべきはあの巫女だろう。かつてエスカリテ様が気に入っていた勇者と魔王。神々が余計な介入をしたせいでエスカリテ様の逆鱗に触れた。おそらく、あの巫女に手を出したら同じことが起きる。天使だからと言って見逃された前回とは違う。今回は教皇のおかげで事なきを得たが、次に何かあればこちらの命はないだろう。


 しかし、教皇か。いや、問題は初代教皇のコトか。まさか勇者エイリスが生きているとは。神々や天使たちを欺くとはたいしたものだ。神々の力の一部を与えられた各種族の勇者たち。天使はもとより条件さえそろえば神すら屠れるほどの力を持つ者。そんな者がまだあの世界で生きているとは。我々の脅威は魔族の勇者である魔王ベルトだけでないということか。


 それにどこかにいるかもしれない異世界転生者。我々天使を倒せる脅威であり災厄、世界の在り方さえ変えてしまう可能性を持つ異端者。いつの日か、神や天使どころか、信仰ということすらなくなってしまう世界にしかねない。


 ……いや、どうでもいい話だな。もう私には関係のないことだ。私は、私を信仰する者たちのために生きよう。神になろうとする夢などもう見ることはない。すでにエスカリテ様という神がいるのだ。


 天界中層にある神殿、その長い廊下を歩き部屋に足を踏み入れると、他の天使たちはすでに揃っているようだった――いや、一人いないようだが、あれは気にしなくていいだろう。


「すまない、待たせたな」


 そういうと天使たちは怪訝な顔をする。そもそも上位天使を集めるというのはかなりの緊急性があること。それだけならともかく、私が「すまない」などと口にしたからだろう。神を名乗ったこの二千年、だれかに謝ることなどなかったが、エスカリテ様に、お前は天使にすぎない、と言われたようなもの。謝罪の言葉などいくらでも出せる。


「マックス、お前、どうした?」


 他の神を名乗る天使たち、それが訝し気に尋ねてきた。


「どうもしない。それよりもすぐにでも伝えておかなければならないことがある」


 私の深刻な顔に気付いたのか、全員が静かに言葉を待っている。


「エスカリテ様がお目覚めになられた」


 空気が凍るという言葉がこれほど似合う状況はない。だが、お前達はマシだ。エスカリテ様と対峙した私は空気が凍るなんてものではなかった。一瞬で私という存在が消滅するほどの状況だったのだからな。


「それは確かなのか?」

「間違いない。すでに巫女が存在していて、その巫女に憑依するほどの信仰心を得ていた」


 天使たちの顔が引きつっているが、それはそうだろう。神殺計画の半分が破綻したようなものだ。


「私も巫女に憑依して戦ったが、髪の毛一つ斬れなかったと言っておく」

「お前が……?」

「ああ、斬撃を躱すわけでもなく全て受けていたが傷をつけることができなかった」

「……本気だったんだよな?」

「当たり前だ。詳しい状況は省くが、私は本気やらなければやられる状況だった。生き残ったのは運が良かっただけだ」


 天使たちのざわつきが大きくなる。それはそうだ。もしエスカリテ様に戦いで勝つとなれば信仰心を最も得ている私以外にはない。その私がダメだった以上、他の天使たちでも勝てるわけがない。


「おかげで目が覚めた。私はあの計画から降りる。あとはお前達の好きにしてくれ」

「お、おい! 本気か!?」

「本気だ。私は神を名乗っているのが恥ずかしい。どうやら私は二千年の間に神々への畏怖を忘れてしまっていたようだ。それに私の巫女を見逃してくださった恩もある。お前達の邪魔をするつもりはないが、手助けすることはないと思ってくれ」


 そう言ってから天使たちに背中を向けて部屋を出た。部屋の中からは何も聞こえないが、全員がどうするべきかを考えているのだろう。


 そういえば元々この計画に賛同していなかった天使たちがいる。ギザリア様やミナイル様の天使たちだったはずだが、一度挨拶くらいはしておくべきだろう。エスカリテ様が目覚めたことを話せば喜ぶかもしれない。


「おや、会議は終わってしまったかな?」


 いつの間にか目の前に自分と同じ黒髪の上級天使がいた。今思うと私達天使はコイツの言葉に乗せられたのだろう。なぜ私はコイツの言葉を信用したのか。今は同じ天使という立場だが、その在り方はまったく違う。コイツの言葉を信じるべきではなかった。


「どうでしょうね。私は言いたいことを言っただけで出てきましたので」

「ああ、そうなのか。で、どんなことを言ったんだい?」

「エスカリテ様が目を覚まされましたと伝えました」

「……ほう! それは大事件だね!」

「嬉しそうですが?」

「旧友の目覚めだ。嬉しいに決まっているじゃないか」

「友だったことがあったので?」


 黒髪の天使は笑う。だが、目は笑っていないな。図星を突かれて怒ったか?


「痛いところを突くじゃないか。確かに友ではないな。なら仇といえばいいかな?」

「仇の目覚めが嬉しいので?」

「それは複雑な男心というものだね。好きな子ほどいじめたくなるという心理と似たようなもので、嫌いな子ほど愛でたくなるのだよ。分かるかな?」


 調子が狂う。本心かどうか分からないことを言って相手のペースを崩す会話。どうでもいい嘘を交えることで本心を隠す話術だろうか……どうでもいいことだが。


「私は神殺計画から降りることにしました」

「そうなのかい? それは残念だ」

「邪魔はしませんので頑張ってください」

「そんな無表情で言われてもねぇ……どうやら恐怖を思い出したようだね」

「これでもかというほど思い出しました」

「そうかそうか。なら彼女、元気だったということかな?」

「元気でしたよ。私を一瞬で消滅させる程度のことはできたでしょうね」

「そうしていないところをみると、相変わらず甘い性格なのか」

「取るに足らない相手だっただけです。同格なら一撃で倒されましたよ。昔の貴方のように」

「……言うねぇ! だが、その通りだよ」

「次は勝てるのですか?」

「さあ、どうだろうね。だが、負けるつもりはないよ。そのために何百年もかけて人から天使にまでなったんだ。そしてもう一度神になってエスカリテと決着をつけないと」

「頑張ってください」

「だからさ、そのなんの気持ちも入ってない無表情で言うのやめない?」

「これが普段の顔なので。貴方の方こそ偽物の表情を止めたらどうです?」

「それが普段の俺なんだよねぇ。それじゃ部屋に入って皆と話してみるよ」


 それには答えずに頭を少しだけ下げる。その後、横を通り抜けて長い廊下を歩き、神殿の外に出た。


「頑張ってください、かつてナギスダ様だった方。たとえ神格を取り戻したとしてもエスカリテ様に勝てるとは到底思えませんがね」



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待ってましたー! 日々の楽しみが増えて嬉しいです(*´▽`*)
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