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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第一章

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30/32

女神、ときどき邪神

『へー、そんなことがあったんですか』

『そうなのよ! エイリスちゃんやベルトちゃん、それにコトちゃんってすごくない!?』


 色々あった翌日、目を覚ましてからエスカリテ様に話を聞いたんだけど、終始テンションが高い。私のために怒っていたエスカリテ様はどこへ行ったのだろうか。まあ、こっちのエスカリテ様の方がいいけどね。


 それにしても色々と状況が変わってて驚いた。私は教会に逃げ込もうとしたとき護衛の攻撃で吹っ飛ばされて気絶したんだけど、うまい具合に教会の中に吹き飛ばされた。そうなるように位置取りを頑張ったんだけど上手くいってよかったよ。


 その後、エスカリテ様が私に憑依して無双してくれたみたいなんだけど、戦神マックス様がまるで相手にならなかったとか。神、というか天使の強さを知らないけど、戦神様って言ったら子供でも知っているメジャーな神様なのに。


 でも、それが神と天使の差なんだろうね。目を覚ました後、巫女のディアナさんに滅茶苦茶頭を下げられた。前世を含めて土下座なんてされたのは初めてだよ。しかも性格が変わったというか、傲慢な感じから謙虚を通り越して自虐的な感じになってた。ジェットコースターかと言いたい。


 戦神様とディアナさんは許された。その場になぜか教皇様と司祭様がいたらしく、事情はどうあれ、神無き世界で魔物たちから人を守ったのは天使であること、戦神様のようなメジャーな神のいなくなって加護が消えた場合、世界の混乱は必至ということで教皇様がエスカリテ様に助命を嘆願したとか。


 教皇様は神々の事情を知っていたらしい。聞いてびっくり、教団の教皇は代々コト様の血筋がやっていたとか。そのコト様から情報を受け継いでいたわけだ。そして一緒にいた司祭様も情報を共有したとか。


 二千年前の勇者であるエイリス様が生存していることを知ったエスカリテ様は機嫌が良かったらしく、戦神様とディアナさんを許した。本当はぶちのめす予定だったから、私にはごめんねとエスカリテ様は謝っていたけど、無茶な要求をしてこないなら別にぶちのめす必要もないんだよね。エスカリテ様が分からせてくれたなら十分だ。


 そういえばディアナさんが私を脅すために私の知り合いのところにも護衛を送ったらしいんだけど、どの場所も返り討ちにしたとか。ガズ兄ちゃんの飲食店やカフェ、冒険者ギルドや畜産場などがそうなんだけど、戦神様の加護を持ってる護衛を退けるってすごいね。それに私を追っていた護衛達が十数人、いつのまにか倒されていたとか。なにがあったんだろう?


 あの詐欺師だけは行方不明っぽい。ガズ兄ちゃんがなにかしたんだろうけど、たぶん、王都から追放したんだろうね。さすがに山に埋めたとかはないと思う。どうでもいいけど。


 このことでこの国の王族がものすごく怒っているらしく、教団やディアナさんの国に対して猛抗議しているとか。巫女って国力を上げる存在だからね。その巫女に攻撃をすることは、国に喧嘩を売っているようなものらしい。教団やその国から賠償金が支払われるっぽいけど、その調整はこれからなのかな。


『それでね、マリアちゃん。ちょっと聞いてほしいの』

『なんですか、改まって』

『私、エイリスちゃんとベルトちゃんを助けなきゃいけないの』

『お二人とも生きているんなら当然じゃないですか』


 エスカリテ様の機嫌がいいのはこれが理由だよね。神に操られた二人がお互いのために神の支配を打ち破って相手を守った。いつの日かコト様が仕えるエスカリテ様が助けてくれるだろうと信じた上での行動だったんだろう。カプ厨のエスカリテ様には最高のシチュエーションだよ。天界で夜通しパーティーをしてたみたいだ。一人で。


 エイリス様は教団の本拠地とも言える聖国の神殿、その地下に安置されているとか。魔剣に貫かれてはいるけれど、その魔剣の力で時が止まっている状態。致命傷だけど死んではいないわけで、魔剣の力を解除して、さらにはエイリス様に治癒を施せば、元通りってわけだ。もちろん魔王であるベルト様も聖剣の力で生きているから、二人とも助ければ二千年越しにカップルが誕生というわけだ。


 しかしコト様はすごいね。その戦いの場にいたわけだけど、二人の状況をすぐさま理解して、当時はまだいた神々に悟られないよう悲し気な演技をしながらエイリス様を運んだとか。あとでエスカリテ様に報告しようとしたけど、エスカリテ様は神々をぶっ殺しに行っちゃって連絡がつかなかったみたい。後にその状況を天使から聞いて、エスカリテ様、マジ女神って思ったとか。


『二人を助けるには、もっと信仰心が必要でね、今の私じゃ聖剣と魔剣の力を解除できないの』

『はい、それも分かってます』

『協力してくれる……?』

『当たり前でしょう。もちろん手伝いますよ』

『……私の巫女ってなんでこんなにいい子たちなのかしら。これも私の普段の行いのせいね!』

『それって神様にも適用されるんですか?』


 普段の行いが良くていい事が起こるのは神様が見ていてくれているって話なんじゃないかな。まあ、前世の話だけど。それにエスカリテ様の信仰心を増やすのは私の目的でもある。ちゃんと理想の彼氏を見つけてもらわないと。


「マリアさん、おはようございます」

「え? ああ、司祭様、おはようございます」


 司祭様が教会に来るなんて珍しい。それに大聖堂で会うよりも嬉しそうというか、なんでそんなにニコニコしているのだろうか。というか、前髪を少し切ったのか、目が良く見える……やばい、イケメンだ。朝からやめてくれ。まぶしすぎる。ここはすぐにおかえりいただこう。イケメン耐性がないんです。


「昨日はありがとうございます。勝手に手紙を送ってしまって申し訳ないとは思ったのですが」

「いえ、何の問題もありません。何か困ったことがあったらいつでも来てくださるように言ったのは私です。結局私は何の役にも立ちませんでしたが」

「そんなことはありません。教団に味方いると思えただけで精神的に助かりました」


 これは本当。教団はともかく、司祭様は味方してくれると思ってた。結局大聖堂へは行かなかったし、司祭様の手を借りることもなかったけど、心の支えにはなってた。それに司祭様は色々と情報を共有している。今後もお世話になる気満々です。


「そう言ってもらえるのは嬉しいですね。ただ、それだけでは申し訳ないと思いまして、今日は贈り物を持ってきました」

「贈り物ですか?」


 お茶菓子かな。司祭様が用意してくれるお茶菓子はかなり好きだ。ギルドのルルさんが出してくれるお茶菓子も好きだけど。そんな風に思っていたら、布で覆われた何か大きなものを教団の人が数人がかりで運んできた。なにこれ?


「この像をエスカリテ様に確認してほしいのですが」

「エスカリテ様にですか?」

『え? 私?』


 司祭様は微笑んでから布を取る。そこには等身大の像があった。立ったまま両手を軽く広げ、微笑む女性の像。びっくりするほど美形だけど、これが何だろう?


『私だ! 私の像!』

『え? これがエスカリテ様?』

『うん、そう! うわー、まだ残ってたのね! すっごい嬉しい!』


 エスカリテ様がかなりはしゃいでる。しかし、滅茶苦茶美人じゃないの。そりゃ時代が違えば美の感覚も違うだろうけど、普遍的な美ってあると思う。エスカリテ様はまさにそんな感じ。でも、なんでこれを司祭様が?


「いかがでしょう? これはエスカリテ様の像だと思うのですが」

「はい、エスカリテ様も自分の像だと言っています」

「良かった。なら、これはこの教会に置きますね」


 司祭様が指示すると像を持ってきた人たちが改めて像を動かして礼拝堂の奥、その中央に像を置いた。ギザリア様と並んで神々しく見えるよ。バランスが悪いからもう一体くらい欲しいけど、エスカリテ様の知り合いの像とか見つからないかな。


 これを贈り物としてもらえるのはありがたいんだけど、色々と疑問が残る。


 像を運んでくれた人たちが教会を出て行こうとしたので銅貨を渡した。受け取れないと言ってたけど、そういうわけにもいかないのでしっかり渡す。お礼を言って帰って行ったので、次はこの像のことを司祭様に聞かないと。


「あの、司祭様」

「はい、なんでしょう?」

「この像ですが……」

「ええ、ちょっと伝手がありまして」

「その伝手も気になりますが、なぜエスカリテ様の像だと分かったのですか?」

「実は昨日、マリアさんに憑依したエスカリテ様を見たのですよ」

「私に憑依したエスカリテ様?」

「憑依しているときはエスカリテ様の顔になるようですね」


 え? そうなの?


『エスカリテ様、そうなんですか?』

『そうなのよ。神が憑依するからそれに耐えられるような形で身体を一部作り変えるみたいな感じだからね。ああ、副作用とかはないから安心して。それにあくまでも一時的だし、今は完全に戻っているから』

『そうでしたか』


 司祭様がエスカリテ様の顔を知っていたのはそういう理由みたいだ。でも、問題はこの像をどこから持ってきたのかという話だ。


「司祭様はエスカリテ様の像がどこにあるのか知っていたのですか?」

「像がある場所は知っていましたが、エスカリテ様だと分かったのは昨日ですね」

「ああ、そういうことですか。では、この像はどこにあったのですか?」

「私の実家にありました。祖母の部屋に飾られていたのです」

「そうだったんですか」

「事情を話したら祖母はぜひこの教会に置いて欲しいと快く譲ってくれました」

「それはありがたいですが……教団の経費で落ちますかね?」

「いえいえ、無料での提供ですからお金は必要ありません」

「ええ? でも、それはさすがに――」

「むしろこの像がエスカリテ様の像だと知って、祖母の喜びようはすごかったですよ」

「そうでしたか……なら、感謝しますとお礼を伝えてもらえますか」

「はい、承知しました」


 なんか釈然としないけど、ありがたいことはありがたい。さっそくこれに似せた小さい像を作って販売しようかな。お金と一緒に信仰心も稼ぐぜ。でも、その前にしっかり拭こう。ぴかぴかにしてあげないとね。昨日の戦いで教会の中も荒れてるし今日は一日掃除かな。あ、鳩たちにポップコーンをあげないと。


「ところでマリアさん」

「え、あ、はい、なんでしょうか?」

「聖女に興味はありますか?」

「聖女……?」

「はい、教皇様はマリアさんをお守りするためにも聖女という肩書を与えた方が良いのではと考えております」


 私はエスカリテ様の巫女として一部の天使に命を狙われる可能性があるとのことだ。今すぐにどうこうって話じゃないらしいけど、いつか巫女たちを通して天使が接触を図る可能性が高いとか。聖女という肩書があれば攻撃を躊躇させる可能性が高いという話だけど、聖女なんて柄じゃないし、私にはエスカリテ様がいるからたぶん安全だと思う。


「いえ、聖女なんて恐れ多いです。そもそも何もしてないのに聖女なんて言われたら恥ずかしいですし」

「マリアさんが何もしていないなんてことはありません」


 真剣な顔で言われた。イケメンは顔の攻撃力が高いぜ。だが、引かんぞ。聖女になったら彼氏ができずに結婚が遠のく気がする。聖女様とは付き合えないとか言われたらどうする。


「私がエスカリテ様の巫女になったのは偶然です。運だけで聖女になったら歴代の聖女様たちに申し訳ありませんので」

「……何もしていないとはそういう意味ではないのですが。聖女であれば高位貴族や王族との婚姻も可能になりますよ? それにこの像は名もなき聖女の像と呼ばれておりまして、そんな像がエスカリテ様だったことや、そのエスカリテ様がマリアさんに憑依されたなど、聖女に何かしらの縁があると思うのですが」


 王族や貴族と結婚したいわけがない。下手したらギロチンだからね。しかもなんだろう、像の名前のこじつけ。そんなわけないのに。でも、名もなき聖女の像? なんかどこかで……ああ、冒険者ギルドのルルさんから聞いたんだっけ。確かやんごとなき方が購入したとか……ん? なにかおかしくない? たしか先代の国王じゃなかった? それが司祭様の祖母の部屋にあったの?


 ……何も聞かなかったことにしよう。スルー能力は人生で必須のスキルだ。


『ねぇねぇ、マリアちゃん、司祭様って王族なの? この像ってこの国の前の王が買ったんじゃなかった?』

『エスカリテ様、ちょっと黙ってください。私は何も知らないのでスルーしましょう。知らないって大事。好奇心は猫も危ない』


 あくまでも推測だからね。いつの間にか先代の王様がどこかに売った可能性はあるから、司祭様が王族というのは可能性の話でしかない。大体、なんで王族が司祭をやってるんだって話だし。それに箱は中を見るまで結果は分からないのだよ。私は玉手箱やパンドラの箱を開けないタイプだ。


 とりあえず、聖女という肩書はいらない。彼氏を捕まえるのに邪魔になりそうなものはすべて排除だ。普通最高。


「聖女に縁があったは嬉しいですが、そんな理由で聖女の肩書はいただけません」

「そうですか……残念です……」


 滅茶苦茶残念そうで、捨てられた子犬みたいだけど今回は揺るがんぞ。そういうので何度も失敗してきたんだ。もう同じ轍は踏まない。


「では、気が変わったらいつでも言ってください。教皇様はマリアさんのためなら何でもする勢いですので。もちろん私もです」

「ありがとうございます。そのお言葉は覚えておきます」


 司祭様は「では、また」と言って帰って行った。なんかすっごい疲れた。でも、エスカリテ様の像を貰えたのは嬉しいね。どこにあったかは絶対に調べないけど。


『マリアちゃん、ちょっといい?』

『いいですよ。もしかしてどこか盛られてます?』

『これだよ! しっかりとこれ!』

『ならいいんですけど、何か気になることでも?』

『うん、私の中のカプチュウが騒いでいるんだけど……』

『いきなり変なことを言わないでください。生き物じゃあるまいし』


 カプ厨が騒ぐって何さ。というか、エスカリテ様が普通にカプ厨って言うと違和感あるね。そういえば、コト様もカプ厨だったらしいけど何派だったんだろう。


『あの司祭のことなんだけど……』

『司祭様がなんです? 出自とか調べませんよ』

『ううん、そうじゃなくてね……』


 なんだろう、エスカリテ様が黙ってしまった。


『どうしました?』

『……うん、決めた』

『え? 何をです?』

『マリアちゃんの彼氏は私が認めた子だけだからね!』

『はい?』

『マリアちゃんにはもっと超絶スペックのイケメン彼氏を用意してあげるから!』

『いきなり何言ってんですか。それに私の理想はもっと普通ですよ』

『そういう志が低いのは認めない。マリアちゃんには世界一の彼氏じゃないと!』

『なんでですか! いきなりカプ厨を発揮しないでくださいよ!』

『あー、あー、聞こえない、聞こえない!』

『なに、神様がベタなことしてるんですか! ちょ、聞いてくださいよ!』


 自分のカップリングしか認めないってカプ厨の本領を発揮してきた。しかも本人の前で神様が。私の理想が狭いのはともかく、高くされるのは困るよ。探してもらって検索結果がありませんとか出たらどうする。だいたい、世界一の彼氏ってなにさ。


 なんか知らんけど、いきなり私の理想のハードルが上がった。くそう、いつかエスカリテ様を倒さないと彼氏ができないんじゃ……コト様が残した言葉じゃないけどさ、エスカリテ様、マジ邪神、カプチュウ過ぎる!


ここまでで第一部完となります。書き溜めてから第二部を始めますので、再開までしばらくお待ちください。引き続きよろしくお願いします。

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