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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第一章

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教会に逃げよう


 女は度胸、淑女は気合、そして乙女はど根性! みっちゃんから教えてもらった心意気で頑張ってはいるけど滅茶苦茶痛い。あの護衛、こっちは成人したばかりの女の子だぞ、大事に扱えと言いたい。あー、明日はあざになっちゃうね。辺境では魔物がいたから日常茶飯事だったけどさ。女性にモテなくなれ。


 お花を摘みに行きたいって言って席を離れたのにお手洗いから逃げ出したのがすぐにばれた。くそう、アクション映画張りの脱走だったのにあんなに早くバレるなんて。宿の外に出たのはいいけど、外にいた護衛に見つかって剣の腹で左腕を攻撃されたよ。こっちは装備が布の服しかないから防御力がないのに。痛みをこらえて蹴り飛ばしてやったから逃げられたけど、早く教会まで行かないと。


 多くの護衛達が私を追っているみたいだけど逃げきってやる。でも、ここどこ? 王都の地図が全部頭に入っているわけじゃないからここがどこか分からない。できるだけ暗い道を通っているけど教会まで逃げきれるかな。


『マ、マ、マ、マリアちゃん、だ、だ、だ、大丈夫!?』


 エスカリテ様はさっきまで怒りゲージが限界を突破してたのに、私が攻撃されたら冷静さを失っている感じだ。自分よりも慌てている人を見るとこっちが冷静になるよね。そのおかげで助かっているけど。


『落ち着いてください。平気ですよ、滅茶苦茶痛いだけですから』

『それは平気じゃないよ!』

『辺境にいた頃よりはマシですよ。少なくとも殺されるようなことはないでしょうから。痛いだけで済むなら問題なしです』

『辺境がハード過ぎるでしょ!』


 魔物相手の場合は食うか食われるかだからね。でも、今は私を捕らえようとしているだけだ。致命傷になるような攻撃はしてこないはず。私が死んじゃうようなことがあったらエスカリテ様を配下に置けなくなるから、護衛達もそれは気を付けているはずだ。戦神様がエスカリテ様を傘下につけられるかどうかは別にして、そんなこと向こうは分からないからね。


 むしろ私の頭を通してエスカリテ様が戦神様をぶっ飛ばして欲しいけど、天界で決着がついてもこの世界での決着がつかない。司祭様はともかく教団が味方してくれるかどうかも分からないし、戦神様とディアナさん――もういいや、戦神とディアナが私の知り合いを攻撃する前にまとめてエスカリテ様に分からせてもらうしかない。


 でも、なんで教会なんだろう? 痛みを紛らわせるためにも聞いてみようか。


『エスカリテ様、なんで教会なんですか?』

『え!? なにが!? そんなことよりも早く教会へ逃げましょう! 鳩たちに邪魔させているし、案内もさせるから急がないと!』

『鳩たちのナビと邪魔はありがたいですね。後で大量のポップコーンをあげないと』

『マリアちゃん、落ち着きすぎじゃない!?』

『エスカリテ様が慌てすぎなんですよ。痛みを忘れるためにも話してくださいよ』

『そ、そうなの? えっと、なんだっけ?』

『だからなんで教会なのかなって』

『あ、ああ、そのこと。簡単に言うとあそこにはマリアちゃんの私に対する感情が強いの。つまりあの場所でなら私への信仰心が強いから、頑張ればマリアちゃんの身体に憑依できる!』

『私のエスカリテ様に対する感情が強い?』

『無意識かもしれないけど、私のために教会をいつも綺麗にしてくれているでしょ。どんな豪華な場所よりも私にとってすっごく居心地がいい場所なのよ』


 単に教会がぼろいからその罪滅ぼしみたいなものなんですけどね。補助金を全額送るのに許可をくれたことの感謝もあるけど。でも、そっか。あの場所、エスカリテ様にとって居心地がいい場所だったのか。それはちょっと嬉しいかも。


『そんなに居心地がいいんですか?』

『うん。実はね、私、昔からずっと欲しかったものがあるの』

『え? 何の話です?』

『その欲しいものをマリアちゃんはくれた。だから絶対に守るわ!』

『ポップコーンがそんなに欲しかったんですか?』

『違うよ!』

『じゃあ、なんです? なにかあげましたっけ?』

『……恥ずかしいから言わない』

『なんですか、その面倒な彼女っぽい言動は。何か言いたげなのに、こっちから聞いたら内緒とかいう女性は嫌われますよ? カップルが別れる原因になりかねません』

『そんなやり取りをするカップルがいたら最高だと思うけど?』

『薄々思ってましたけど、エスカリテ様とは永遠に分かり合えない気がしています』

『ちょ! 信仰心は保って! これ以上減ったら憑依できないから!』


 わざとふざけている……というわけじゃないな。でも、いつものような会話で私の緊張をほぐそうとしているのかも。いいねぇ、ガズ兄ちゃんが孤児院を出た後は私が頑張らなきゃって思って大変だったけど、こうやって頼れる存在がいるって本当に助かる。しかも神様だよ。エスカリテ様の巫女になれてありがたいや。


 あれ? 鳩の動きが変わった? なんか変な方へ行こうとしてない? 道は分からないけど、感覚的にそっちじゃないと思うんだけど。


「よお、マリアの方から来てくれるなんてな。俺たちは運命の赤い糸で結ばれているのかもしれないぜ?」


 嘘でしょ。道を曲がったらあの詐欺師の正面だよ。しかも詐欺師に赤い糸とか言われて鳥肌がヤバい。すげぇ弱体効果だ。でも、鳩の裏切り? 唐辛子食わせんぞ。


『エスカリテ様、これってどういうことですか?』

『大丈夫! 鳩たちを信じて!』

『一生に一度も聞かないような言葉を言われても』


 手品師なら言うかもしれないが、私は服の中から鳩なんて出さないっての。しかしどうするかね。普通の状態なら詐欺師に勝てるとは思うんだけど、今は武装もしているし戦神の加護も受けているはず。不意打ちならワンチャンあるか?


「さて、マリア、いい子だからディアナ様のところへ行こうか? それともいくつかあざを作っておくか? 付き合ってた誼で多少は手加減してやるが、どうする?」


 きしょ。この野郎、顔は悪くないが性格が終わってる。なんで私に寄ってくる男ってこんな奴らばかりなのかな。前世を含めて私が何したってんだ。


「だから言ったろ、マリアは恋愛ごとに疎いんだから騙されるなって」

「え――ガズ兄ちゃん!」


 そういうことか。ガズ兄ちゃんとここで合流する形にしてくれたんだ。


「何だ、お前?」

「お前こそなんだよ。赤い糸とかキモイな。そういうのは付き合ってから言いな」

「一度はマリアと付き合ったんだぜ。まあ、捨ててやったが」

「付き合った? 寄生しただけだろ。しかし、運がいい奴だと思ったが、相当悪いんだな。王都に戻ってくるなんて」

「運はいい方だぜ、戦神様の巫女に拾われたからな。後はあの女も落としちまえば人生勝ち組だ。そのためにもマリア、お前が必要なんだ。元カレのために役に立ってくれよ。一緒に巫女様のところへ行こうぜ」

「お前が行く場所は山の中だよ。埋めてやる場所は決めさせてやるから、今の内から決めておきな。それとも魔物の餌がいいか?」

「戦神の加護を持つ俺に勝てるつもり――てめぇ!」

「おせぇな。戦神の加護も本人が弱いなら意味ねぇよ」


 おお、ガス兄ちゃんの持っている短剣……あれって包丁? いや、魚をさばくフィレナイフ? ちょっとペラペラな感じのナイフだけど、それが詐欺師の鎧の隙間にスッと入った。さらには血が出ている。ガズ兄ちゃん、腕は落ちていないみたい。


「マリア、行くところがあるんだろ。ここは兄ちゃんに任せろ」

「うん、お願いね」

「マリア! 逃がすか! テメェ! 邪魔だ!」

「逃がさねぇのはこっちだよ。マリアに頼れる兄ちゃんだと思ってもらえるように倒されてくれや」


 おお、すごい。ガズ兄ちゃんが戦神の加護を持ってる詐欺師を圧倒している。先生の次に強いと言われていたことだけはあるね。料理人にしておくのがもったいないよ。おっと、せっかくガズ兄ちゃんが足止めしてくれているんだ、すぐに教会へ行かないと。


『エスカリテ様、鳩たちにどんな味のポップコーンでもあげるから考えておいてと伝えてください』

『分かったわ! 私は塩で!』

『エスカリテ様の場合はディアナや戦神を分からせたときですよ』

『分かった! 燃えて来たわ!』


 意外と熱血なエスカリテ様だ。まあ、怒りで他の神様をぶっ殺しちゃったほどだしね。さあ、教会に急ごう。




 鳩のナビを受けつつ、移動してようやく教会までたどり着いた。でも、悲しいことに教会の前には豪華な馬車が停まっている。護衛もいるけどディアナ本人が直接来ちゃってるよ。私に気付くとなんかすごく残念そうな顔をされた。


「やっぱりここが本命だったようね。貴方、もっと賢いと思ったのだけど、その頭は飾りだったの?」

「その頭で考えたら貴方には従いたくないなと思いまして」

「残念な頭だったのね。従いたくないとは思ってもいいけど、従わなくていい未来があると思うなんて」

「楽天的なんですよ」

「でも、貴方の未来は悲観的な状況よ。私に逆らったんですもの」


 怖いね。そう考えちゃう思考がもうやばい。でも、貴族なら当然の思考なのかな。確かに悲観的な未来にしかみえない。強そうな護衛の数が多いよ。エスカリテ様が私に憑依するくらいで勝てるのか微妙。戦神に比べて信仰心がそんなにないと思うんだけど本当に大丈夫なのかな。


『エスカリテ様、大丈夫なんですよね?』

『もちろんよ! 教会に入ってくれたら絶対に負けないから!』

『わかりました。何とか隙をみて入ります』

『ねえ、マリアちゃん』

『なんです?』

『私のこと、信用してる?』

『なんです、いきなり。カップルに対する言動以外は信用してますよ』

『そこも信用して! でも、ありがとう。マリアちゃんの私への信仰心ってまだまだ上がるのね。これなら絶対に負けないわ』


 え? 信仰心がまだ上がってる? 私ってそこまでエスカリテ様を信じてたっけ? いや、それは今はいいや。教会に入ったらどうすればいいんだろう。


『教会に入ったら何をすれば?』

『何もしなくていいわ。私が憑依したら意識を失ってしまうけど、目覚めたら全てが終わっているから安心して』

『わかりました。頼みますね』

『そこも信用してくれるのね。マリアちゃんが私の巫女で嬉しいわ』

『私も声を聞けるのがエスカリテ様で嬉しいですよ』


 ちょっと恥ずかしいけど言ってみた。こういう時でもないと言えないしね。それじゃ、何とかして教会へ入ろう。その後はエスカリテ様にお任せだ。



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