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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第一章

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18/40

希少な果物

 

 予想通り女神の吐息に関してはちょっとレアな果物が必要だった。この異世界は前世とほぼ同じ野菜とか果物があるんだけど、前世にないもので魔力を帯びた物ってものがある。エスカリテ様が祝福してくれた畑で採れた食物なんかも魔力を帯びてはいるらしいけど、原型は保っている。それ以上に魔力が込められると別の品種に変わってしまうとか。お米に魔力を込めたら何になるんだろう?


 今回の女神の息吹にどうしても必要な物が、魔力を持つ果物、サードオニキスオレンジ。橙色の宝石っぽいオレンジなんだけど、結構お高いとか。ちょっと贅沢な果物って感じで、すんごい値の張るものじゃないらしいけど。それ以外の材料はカフェに全部あったので、そのオレンジだけ手に入れば女神の吐息を作れるって話らしい。そんなことを店長さんが興奮気味に伝えてくれた。


「希少な果物を使う必要はあるけれど、これなら女神の吐息を再現させることができるのは間違いない。私も昔飲んだことがあるんだが、間違いなくできると思うよ」

「嬉しそうですね?」

「それはもちろん。女神の吐息は五十年くらい前に作り方が途絶えたんだ。それを再現できるのならこんなに嬉しいことはないよ」


 店長さんはそう言って子供のような笑顔で喜んでいる。素敵か。笑顔なのにそのへんの若造には出せない色気を感じる。血圧が上がるから止めて。


 希少な果物に関しては執事さんの主を通して手に入れてもらうしかないかな。さすがに市場ですぐに手に入るような果物じゃないらしいから、それなりの伝手がある人に仕入れてもらうしかない。店長さんも仕入れる気が満々だ。


「それでマリアちゃん、本当にいいのかい?」

「何がでしょう?」

「女神の吐息だけじゃなく、他にもレシピをおしえてくれたじゃないか。本当に無料でいいのかい? これは出回ってないものだし、かなり貴重な物だよ。どう考えても一財産になる」

「そもそも神様のレシピで私のではありませんから。それにレシピがあるのに活用されない方が問題だってエスカリテ様も言ってます」

「……ならエスカリテ様に感謝を。今日から出させてもらうよ」

「そうしてください。それに知りたい人には教えてくれていいとも言ってます」

「どう感謝していいのかわからないね。なら同業者に伝えておこう。もちろんエスカリテ様の恩恵だとも伝えておくよ」


 おお、これでエスカリテ様の信仰心が上がってくれるならいいんだけど。でも、もういないとはいえ他の神様の功績なんだけどいいのかな。


『エスカリテ様』

『なぁに? あ、そうだ、お酒ができたらお供えして。久々に飲みたいかも』

『あとでお供えしますね。そうじゃなくて、レシピってギザリア様の物ですけどいいんですか?』

『何が?』

『勝手に教えちゃっていいのかなって。これってギザリア様のものですよね?』

『いいんじゃない? 私だってお酒を飲んで感想とか書いたこともあったし、私のものでもある! たぶん!』

『なるほど……なら、いいのかな?』

『それにギザリアはお酒は皆で楽しく飲むものって言ってたから問題ないわよ。もちろん一人で嗜むのもいいけど、少なくともあの子はお酒を自分だけが楽しめるように独占しようなんて思ってなかったし』

『なら問題なさそうですね』


 神様にもそれぞれ個性があるのかな。一度くらいはお会いしてみたかった気もする。そうだ、ギザリア様の像が見つかったら教会に飾ってあげよう。今のところ邪神像しか見つかってないけど、エスカリテ様以外の像も見つかるかもしれないし。


 おっと、そろそろ日が落ちそう。今日はこれくらいにして、明日、執事さんが来たら希少な果物が手に入るか聞いてみよう。




『マリアちゃん、おはよー』

『おはようございます』

『なんかすんごく信仰心が上がってる。今ならダチョウでも召喚できそう』

『昨日のレシピが効いたのかもしれませんね。女神の吐息は作れませんけど、それ以外のカクテルを昨日の夜に提供してみるっていってましたから』

『ということは昨日の夜、お酒を使った恋の駆け引きが行われたのね……!』

『朝から何言ってんですか』

『マリアちゃんも気になるでしょ! 酔っちゃったとか言って彼氏の肩に頭を乗せるとか! フフフ、私は知ってる、アレは酔ってない、主演女優張りの演技なのよ! 大人の駆け引きってやつよね……!』

『だから朝から何言ってんですか』


 確かにそう言う駆け引きがあるのは分かる。そう言えば前世はお酒に強かった。酔っちゃったと言う前に男の方が潰れていた。そして二度と誘ってもらえなくなる。くそう、演技ができない自分が憎い。まだ飲めないけど、この体はお酒に強いのかな。強くてもいいけど、演技は覚えた方がいいかもしれない。今度みっちゃんに教えてもらおう。理想の男性を見つけてもらっても逃げられたら困るし。それに罠を張るには演技力が重要だ。


「おはようございます、マリア様」

「え? あ、おはようございます、執事さん」


 こんな朝っぱらから執事さんがやってきた。確かに昨日、明日来て欲しいって言ったけど、こんなに早く来るとは思わなかった。もしかして主さんに急かされた? 申し訳ないけど、レシピはあっても材料が足らんのです。


「朝早くからご無礼をお許しください」

「いえ、大丈夫です」

「急かすようで申し訳ないのですが、首尾はいかがでしたでしょうか?」

「はい、エスカリテ様のおかげでレシピは分かりました」


 執事さんはその言葉を聞いて目が大きく開いた。そしてエスカリテ様はたぶん天界でドヤ顔をしている。でも、レシピだけじゃまだ完成じゃない。問題はここからだ。


「ただ、希少な果物が必要でして」

「そ、その希少な果物とはなんでしょう? 必ずや手に入れてまいります!」

「は、はい、落ち着いてくださいね。サードオニキスオレンジという果物です。それを手に入れることはできますか?」

「サードオニキスオレンジ……確かに希少ですが、すぐに手に入れてまいります!」

「え? あ、ちょ! ちょっと待った! 待ってください!」


 急いで外に出ようとする執事さんを止める。執事さんも自分の慌てっぷりにちょっと恥ずかし気にしている。最近のナイスミドルはギャップ萌えが流行ってんのか。最高かよ。


「実はカクテルの作成に関して協力してもらっている方がいますので、もし手に入ったら、これからいうお店に届けてもらえますか」

「承知いたしました」

「それとご依頼の女神の吐息で間違いがないか執事さんに確認してもらいたいのです。それは大丈夫でしょうか?」

「問題ございません。それとサードオニキスオレンジはすぐにお持ちできると思います。主は美食家でもありますので、希少な食材はいくらでもありますから。すぐに食糧庫を確認してきます。もし可能であれば本日はその店でお待ちください」


 冷静沈着なはずの執事さんが慌てている姿は大好物ですが、ずっと見ているわけにもいかないので、お店の場所を伝えてから執事さんを見送った。馬車で来てたみたいだけど、すんごい早さで帰ったな。


 さて、それじゃ一通り仕事を終わらせたらカフェの方へ行こうかな。昨日渡したレシピがお客さんにとってどうだったかも聞きたいし。エスカリテ様の信仰心が上がったんだから結構おいしかったんだろうな。アルコールなしで飲ませてもらうのはアリかも。


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