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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第一章

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落とし物を返そう

 

『マリアちゃーん、今日は何する!?』

『人は神様みたいに毎日遊んでるだけじゃダメなんです』

『それは神に対する偏見だと思うの!』

『なら普段何をしているんですか?』

『……カップルウォッチング、かな……』

『それは仕事ですか?』

『……趣味、かな……』

『というわけで掃除と畑仕事が終わるまで待機してください』

『……はい』


 可能であればエスカリテ様だけどこかへ行ってもらってもいいんだけど、私から離れることができないみたい。最近は少し視点が伸びて私を中心に半径五メートルほどになったとか。信仰心さえあればどうとでもなるんだけど、この世界に顕現するほどだと今の信仰心じゃまったく足りないとか。最近は冒険者ギルドでもエスカリテ様を信仰する人が増えたらしいけどまだまだみたいだ。


 そんなことよりもまずは畑仕事。雑草は抜く。そしていけそうなら食べる。最近はお金もあるしそこまでしなくてもいいんだけど、一度染みついた生活習慣はなかなか抜けないね。前世を思い出したから結構抵抗があるんだけど、この畑、現在エスカリテ様の祝福があるので色々と栄養価が高い雑草が多い。むしろ雑草じゃない。名前も知らない美味しい草だ。自給自足最高。


 うお、エスカリテ様の鳩が足にすり寄ってきた。可愛い……が、本性を知っている。それに働かざる者食うべからずだ。


「餌をあげるから毎日キラキラする物を拾ってくるように」

「くるっくー、くるっくー」

「人を襲ったり、盗むのは絶対にダメ。それをしたら私の食料になると思って」

「くるる……くるる……」

「拾ってきた物によってはポップコーンを作ってあげるから頑張って」

「くるっぽー! くるっぽー!」


 めっちゃテンション高くなった。ポップコーンは好きか。私も好きだ。普通のトウモロコシも好きだけど、ポップコーンにできるトウモロコシがお安く売ってたので作ってみたら庭にいた鳩に襲われた。迎撃したけど、その日からポップコーンを寄越せという圧が強い。なので成功報酬にした。お金を拾ってこい。


 さすがはエスカリテ様の鳩というか、私が言ったことを理解できるようだ。ここ最近、その辺に落ちている物を色々拾ってきている。野菜の種を拾ってきて勝手に畑に埋めるのは止めて欲しいが、ちゃんと落ちている物を拾ってきているようだ。ただ、落ちていたものだとしても、お財布とかはさすがにネコババできない。お金単体なら誰のか分からないから貰うけど。


 司祭様に相談したら、財布とかむき出しの硬貨以外は預かってくれることになった。こっちの世界じゃ基本的に拾った人の物だけど、前世の感覚が抜けていないのか、罪悪感を覚える。なので、大聖堂に落とし物が集まっていると大々的に宣伝してもらって、そっちに受け取りに行ってもらっているわけだ。意外とそれで助かった人が多いようで司祭様から感謝されちゃったな。その感謝が私の食料になるという錬金術です。賢者の石よりも素敵だ。


 そんなわけで朝食を終えた鳩たちは飛び立った。毎日一個以上は拾得物があるから困るけどね。そろそろ溜まってきたし、また大聖堂に行って司祭様に渡しておこう。というか、落とし物多いな。


 さて、次はお掃除。ボロは着てても心は錦。教会はボロだけど、せめて綺麗にしておかないと。エスカリテ様の家だし、せめて気持ちよく過ごしてもらおう。実際には天界という場所にいるみたいだけど、ここはエスカリテ様の教会だからね。それに私も住んでいるんだから綺麗な方がいい。ホコリなど滅殺だ。


 それにしてもさすがエスカリテ様。最近、補助金を孤児院に送ったんだけど、本当に全額送ってもいいか聞いたら「いいよー」という軽い答えで済んだ。その額、金貨五枚。前世で言ったら五百万円くらいだよ。しかも鳩たちが持って行ってくれたから送料無料。ポップコーンでやってくれるんだからありがたい。それに手紙も持って行ってもらったし、お返しの手紙も持ち帰ってもらった。


 先生に感謝されちゃったね。巫女になったことに驚いたらしいけど、たった一ヶ月程度で仕送りが金貨五枚だったからどんな悪い事したんだって書かれてた。巫女に対する補助金だと書いたのに誠に遺憾です。


 それはそれとして、向こうの孤児院もこっちに負けず劣らずのボロボロだからね、自分たちで修繕はしてたけど、やはり素人だから壊れるのも早い。お金があるなら本職の人に頼むのもいいかもしれない。冬がマジでヤバいし。


 こっちの心配もされたけど、ギルドで邪神像破壊のお仕事をしたり、たまに寄付を貰えるからお金には困ってないし、生活には何の問題もない。お金が無くなったら、ガズ兄ちゃんのところで賄を食べさせてもらおう。だが、プライドがあるうちは行かんぞ。カップルたちのデートコース的な場所に女一人で行けるものか。むしろ毎日デリバリーしてくれ。それなら毎日貰う。


 それと補助金はエスカリテ様のおかげだから信仰するようにと書いたら、本当に信仰してくれているみたいだ。エスカリテ様が「なんか信仰心が増えた!」と驚いていたし。信仰はお金で買えるみたいだ。


 そしてその信仰心は現在、教会の畑に祝福という形で注がれている。作物の成長が早く、かなり美味しいものができる畑だ。じゃがいもとトマトの味には感動したね。しかも豊作。その分、名前も知らない雑草も多いけど、それもまた美味い。ガズ兄ちゃんのお店に卸そうかな。


 なんか上手く回ってきた。それもこれもエスカリテ様のおかげだ。なので教会くらいはしっかりお掃除。私は特になにもしていないから、これくらいはね。さて、さらなる信仰心を得るためにエスカリテ様の布教活動をして、いつか理想の彼氏を探してもらおう。理想は高くないけど、条件が滅茶苦茶狭いからね。ここは頑張らねば。


『なんかマリアちゃんからの信仰心が上がってるんだけど?』

『理想の男性を見つけてもらうために頑張ってます』

『ブレないわねー』


 自分がこれまで付き合った――違う違う、もう存在しないから、イマジナリー彼氏だ。そいつらが最悪だったからです。すっごい彼氏を作って本当に忘れたい。上書き保存するためにも完全消去したい。念入りに忘れてやる。


 おっと、怒りが掃除に反映されてしまった。もうピカピカだ。綺麗になっても、何もない台座はちょっと寂しい気がする。ここにエスカリテ様の像を置く予定だけど、いまだに像や絵が見つからないんだよね。姿が分かったらちょっと奮発した感じの像を発注しようかな。あと、カップル用のお守りとしてエスカリテ様が描かれたペンダントでも売ろう。あとは扇子とかにも描いて売っちゃおうか。目指せアイドル。


『マリアちゃん? なんか変なこと考えてない?』

『そんなまさか。ちなみにエスカリテ様は歌が得意だったりしますか?』

『え、何、いきなり? 得意じゃないよ。恥ずかしいから誰かに聞かせたことなんてないし』

『神様なのに何言ってんですか』

『神だって羞恥心くらいあるよ!』

『なら踊りは?』

『同じ理由で得意じゃないわね。あ、でも、踊りはよく見てた! お祭りとかでカップルが踊っているのを見るのは最高じゃない? 上手くなくてもいいの、下手でもね、頬を赤くして足を踏まないようにぎこちなく踊る子達を見て胸がきゅーとなったわ……いえ、違うわね、踊る前の誘うべきかどうか悩むところから最高よ! お祭りで女の子から誘うのが恥ずかしくて諦めて帰ろうとしたとき、誘おうと思ってた男の子の方から照れ臭そうに誘ったのを見たの! あのときは奇跡かと思ったわ! 大声で殺す気かって言っちゃたわねー』

『長いです。あと神様が奇跡と思うって。まあ、いいですけど、よくもまぁそんなレアケースを見ましたね』

『私、結構長生きだから。あ、年齢は言わないわよ!』

『二千年近く寝てたんだから年齢なんてもうどうでもいいでしょうに』

『これでも女神だから乙女心があるの。それでなんで歌と踊りの話をしたの?』

『エスカリテ様の歌をオルゴールにして売り出そうとか思いまして。あわよくば顕現した時に歌ったり踊ったりしてもらおうかと。コンサートをしてお金を稼ぎましょう。握手会とかもします?』

『……マリアちゃん、私のことなんだと思ってるの?』

『神様だと思ってますが?』


 神様が歌ったり踊ったりしてくれたら信仰心が爆上がりだと思うんだけど。前世の言葉で言うならバズる。いや、逆に炎上する可能性もあるのか? なんか思ってたのと違うとか言われて。ここは慎重になるべきところかも。


「くっくるー、くっくるー」


 あれ? 鳩が帰ってきた? 早くない?


「もう見つけたの? え? なに、この高そうな指輪? まさか人を襲って――」


 鳩がものすごく速く首を左右に振った。首が取れそう。


「くる! くるる、くーるるー、くるっぽ!」

『違うって。王都の外で見つけたものだって言ってるわよ』

『エスカリテ様、鳩の言葉が分かるんですか?』

『私は言語とか関係なく意思を直接理解できるの。言葉も分かるけど』

『へぇ、それはすごいですね』

『神様だからね。あと、ポップコーンくれって言ってる……エスカリテ様にもどうかお供えしてくださいとも言ってる』


 怪しい。


「エスカリテ様にポップコーンをお供えしてほしいって言った?」


 鳩がさっきと同じくらいものすごく速く首を左右に振った。


『あ、こら、裏切り者!』

『そんなことしないでも普通にお供えしますよ。なんでそんな嘘をつくんですか』

『複雑な乙女心だと思って……でも、やった! 食べたかったのよね! 私、塩! ちょっと塩をまぶしたやつ!』

『まあまあ、夜まで待ってください。今はこの高そうな指輪をなんとかしないと』

『えー』


 この指輪はちょっとまずそう。なんか貴族くらいしか持てない精巧な作りになっている。盗んだな、とか言われて変なことに巻き込まれる前にとっとと大聖堂の司祭様に渡してしまおう。


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