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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第四章

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第四王子の事情を聞こう


「ゼローグ様」

「マリアさん……でしたよね?」

「はい、こちら、カレーライスです。どうぞ」

「ありがとうございます。連れてきてもらった上に食事まで」

「困ったときはお互い様ですから」

「ははは、マリアさん達が困っても私には何もできないんですけどね」


 いきなり自虐ネタを突っ込んできたよ。ご兄弟と比較され続けた人生だろうから色々と自信がないのはわかるけどさ。せめて美味しい物でも食べてちょっとでも元気になってもらおう。私だって前世なら焼肉食ってコーラで流し込んだら元気になったもんよ。カロリー? そんなもん気にしたら負けだ。


 とりあえず私もカレーを食べよう。椅子はないけど、ちょっと大き目ない岩があるからそこに二人で座る。なぜか誰も近づいてこないけど、視線は注がれている。とくに司祭様の視線は目力を入れ過ぎ。そんなに気になるのかな?


 ……やばい、これ、本当に異世界で作ったカレーかよってくらいカレーだ。前世の記憶にあるカレーを完璧に再現しているって言っていい。ガズ兄ちゃんの料理の才能ってすげぇ。たぶん、一番おいしくなるようにカレー粉の配合を調整しているんだろう。その上で料理の腕があるんだからそりゃ美味いってもんよ。


 これだけ美味ければ王族のゼローグさんだってイチコロよ……うん、なんかすごく驚いた顔をして食べている。


「初めて食べましたが美味しいですね」

「そうですよね。実は作ったのは私の兄でして」

「ガズさんですね。有名な料理人なのですか?」

「いえ、有名というほどではありませんね。それに専門はスイーツの方でして」

「……そうですか、努力されたのでしょうね」

「努力というか料理が好きなんだと思いますよ」

「それでも苦労されたとは思いますよ」


 暗い、というか儚い。儚げ系男子も需要はあるが消え去りそうな存在感というのはちょっと困るね。ガハハと笑って素手でカレーを食べられても困るけど、なんというか達観しすぎててすべての状況を受け入れる的な感じになってるよ。若いのに枯れてるって言えばいいのかな。


 そうなってくると庶民の女性と結婚したいって言うのもなんか流されているような気がする。ふもとの村まで来るってことはそれなりにやる気はあるんだろうけど。


 ここは少し突っ込んだことを聞いた方が良いかな。おせっかいだとは分かっているんだけど、こういう人を放っておけないのが私ってもんよ。それで大変な目に遭ったこともあるけど。反省もしてるし後悔もしてるけど、止められないんだよね。


「ゼローグ様は庶民の女性と結婚されたいと聞いたのですが」

「ええ。そうですね」

「……」

「……」


 話が終わるやろがい。そりゃ、あんまり言いたくないんだろうし、王族だから庶民が助けて当然って思っているのかもしれないけどさ、連れて来てるんだから感謝しろとまでは言わないけど、事情に関してちょっとくらい教えてくれてもいいんじゃないの?


「そんなにお好きな方なのですか?」

「どうでしょうね」

「……」

「……」


 うおーい。え? なんなん? 私の質問の仕方が悪いの? いきなりすぎた? でも、別に嫌そうな顔もしていないし、迷惑って感じでもなさそうだけど、話がふくらまない。彼女のことを聞いたんだから多少はノロケてもええんやで? 出会いのエピソードとか語って欲しいよ。


 孤児院に入ったばかりの子供ならこんな風になってても根気よく話しかけるけど同い年だしなぁ。しかも王族なんだから色々と社交的なことも必須だと思うんだけど。


 あー、でも、女性には言いづらいかも。馬車の中だと結構話していたってガズ兄ちゃんが言ってたし、確かに初対面の私に対して事細かに言う必要はないか。ここはガズ兄ちゃんに頼んだ方が早いかもしんない。敗北を知ったぜ……!


「彼女は――」

「はい?」

「別に私のことを好きではないでしょうね」

「そうなんですか……?」


 おっと、語ってくれた。でも、相手が自分を好きじゃないってことを分かっているってこと? まだエスカリテ様が鳩を使って調査中だから何とも言えないけど、ゼローグさんはそんな風に思い込んでいるだけ?


「彼女に必要なのは私の王族としての地位でしょう」

「彼女さんがそう思っているのに結婚しようと?」

「彼女がそれを望んでいるので」

「ああ、ゼローグ様が相手を好きというわけですか」

「いえ、別にそこまで好きではないですね」

「なんでやねん」

「は?」


 おっと、王族の人に向かって本気のツッコミを入れてしまった。というか、ここでツッコミを入れずにいつ入れるんだって程のボケだよ。


「失礼しました。その、庶民の私としては良く分からない理論でして」

「王族や貴族でも分かる人は少ないでしょうね」

「詳しく聞いてもいいですか?」

「気になりますか?」


 ここはエスカリテ様のせいにしよう。もともとエスカリテ様が知りたいことでもあるからね。


「私というよりはエスカリテ様が知りたい感じですね、元気がなさそうでしたので」

「ああ、マリアさんは巫女でしたね。そうですか神にも心配されるほどでしたか」

「そうですね、心配しているみたいです」

「魔族は神に無関心なのですが、神はそんなことはなさそうですね」


 そう言ってゼローグさんはまた儚げに笑った。


 魔王ベルトさんが勇者エイリスさんと相打ちになったのは神のせいだって知っていたみたいだからね。一応大聖堂は魔国にもあるけど、何かの神を信仰している人は誰もいないとか。そもそも魔族は神の加護を必要としてないくらい強いってこともあるらしいけど。


 そんなことよりも事情を聞こう。


「彼女は私を必要としてくれているんですよ」

「必要としてくれている?」

「好きとかそういう感情ではなく、誰かにそう命令されているということです」

「命令ですか?」

「彼女は私と結婚しないといけない、だから彼女にとって私は必要な存在なんです」

「ゼローグ様にとってはその女性が必要ってわけでもなさそうですが」


 彼女さんにとってゼローグ様は必要だけど逆はない。それなのに結婚するためにこんなところまできてるなんておかしいような気がする。そもそもたいして好きでもないって言ってるし。


「他者にまったく必要とされていない人生ってどう思いますか?」

「え?」

「優秀な兄たちがいて、私は兄よりも劣る。私は必要がなく期待もされていません」

「そんなことは――」

「あるのですよ。何か一つでも兄に勝るところがあればよかったのですが、剣も魔法も頭脳も何一つ勝てない。努力が足りないと言われてしまえばそれまでですが、努力したところで兄たちに並べるかも怪しい。そして並んだところで必要とされるかどうかといえば、別にいてもいなくても困らないのです……いえ、いるだけ邪魔かもしれませんね」


 そういう感じなのか。優秀な兄たちがいるから自分は不要だと思っているわけだ。一人くらいならともかく、三人とも優秀ってことなんだろうね。確かにコンプレックスを感じちゃうかも。


「どんな理由であれ、自分を必要としてくれるのは彼女だけ。そう思うようになりまして、今は彼女の目的が自分の目的になっています」

「……ゼローグ様はそれでいいんですか?」

「いいんですよ。彼女にとって私は必要――利用価値がある、そう思えるだけでも嬉しいものでしてね、彼女を好きかと聞かれるとそうでもないとしか答えられないのですが、彼女のために何かをしてあげたいとは思っています」


 聞いた限り、そんなことはないだろ、とは思うんだけど、その彼女さんが猛アピールしたのかな。初めて必要とされたから、その反動で彼女さんの期待に応えたいと思っちゃったんだろうな。


 でも、こうなると目を覚ませとかそういう話じゃない。ゼローグさんはかなり冷静。恋は盲目というわけでもないし、彼女さんに対するお礼みたいなもんだ。これは何を言っても聞かないだろうね。


「彼女さんの具体的な目的を知っているんですか?」

「彼女は侯爵家当主の隠し子です。本人は一人で庶民の暮らしをしていますが、私と結婚出来たら侯爵家が名乗り出て縁続きとなるのでしょう。褒められた行為ではありませんが、魔族にとって血筋、血族というのは結構重いものでして」

「そこまで分かっているんですか?」

「私も王族の端くれですからね、調べようと思えばいくらでも調べられます」


 おっと、ただの悲壮感まるだしの儚げ男子というわけじゃないのか。まあ、期待はされなくともある程度は教育されるよね。


「今の侯爵家は野心家でしてね、王族に絡んで地位を上げようとしているようです。これもそのための策の一つなのでしょう。そして失敗してもたいして問題のない策……必死なのは侯爵から命令された彼女だけでしょうね」

「そんなことまで分かっているのに、結婚を?」

「ええ。彼女も私と同じように必要ないとされた者ですから、好きかどうかはともかく、同情や仲間、それに私と違って一人で生きているという面には尊敬の気持ちもあります。そこに愛はなくても、同じ者同士、仲良くできたらとは思いますけどね。まあ、彼女がどう思っているのかは分かりませんが」


 ゼローグさんはまた儚げに笑うと、座っていた大きな石から立ち上がった。


「ごちそうさまでした。色々話を聞いてくださってありがとうございます」

「いえ、こちらから無理に聞いたようなものでして――」

「それでも胸の中のことを吐きだせて少しすっきりしました」

「そう言ってもらえると助かります」

「そういうわけでして、ご迷惑をおかけしますが、しばらくよろしくお願いします」

「はい……ご結婚できるといいですね」

「頑張ります」


 ゼローグさんが微笑んでから頭を下げるとお皿を持って片付けに行ってしまった。


 聞いたはいいけど、複雑な事情というか環境の上に成り立っているわけだね。もともと私がどうこうするってことでもなく、事情を知りたかっただけだから無茶な介入はしないけど、兄たちに対するコンプレックスを解消するためにも、当初の目的通りなにか自信を付けさせてあげたいところだよ。それがどういう結果になるかは分からないけど。


 ゼローグさんの意見を取り入れつつ、オズモスの問題を解決して、少しづつでも実績を作ってあげるべきだろう。そうすれば結婚の可能性も出るってもんよ。願わくば彼女さんもいい人で、幸せな結婚になるといいんだけどねぇ。


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