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女神(邪神)様はカプ厨!  作者: ぺんぎん
第四章

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山頂へ向かおう


「マリア姉さん、あの人を連れていく必要ってあったの?」

「ないんだけど放っておくのもどうかと思うし」

「まあ、何かしらの恩は売れそうだけど」

「そういう気持ちがなかったわけじゃないけどね」


 ふもとの村に着いた翌日、暗黒龍オズモスがいる山頂へと出発した。今や山道だろうと道なき場所だろうとエスカリテ様が祝福してくれたお馬さんや馬車に行けない場所はない。なので何の問題もなく道を進んでいる。寒いってのはあるんだけど、色々着こんでいるし、馬車の中は祝福のおかげで適温、なんか神殿騎士さんには申し訳ないくらいの快適さだよ。馬車を降りた時の寒さはつらいけど。


 そんな快適な馬車に乗って話をしているんだけど、みっちゃんの言い分はもっともだ。私の独断で魔国の第四王子であるゼローグさんを連れてきた。今は司祭様やガズ兄ちゃんが乗っている馬車にいるんだけど、男三人で会話があるのか微妙だ。そもそも司祭様とガズ兄ちゃんが雑談しているところが想像できない。司祭様も第三王子だし、社交的な部分も訓練を受けているとは思うけどね。


 それはそれとして、ゼローグさんには自信を付けさせる何かがないと駄目なような気がする。それを私がやってあげる必要は全くないんだけど、なんかこう放っておけない。これがダメ男に引っかかる私の悪いところとも言えるけど、仕方ないじゃんね。


 それになんかおかしい。魔国の第四王子って結構偉い方だと思うんだけど、護衛の一人もいないなんてありえる? 住んでいたところを飛び出してきたって話だけど、たとえそうでも一人は駄目でしょ。


「なんでゼローグさんが一人なのか分かる? おかしいよね?」

「魔族は十八から二年間は誰にも頼らずに一人で生きるって方針があるんだよ」

「え? そうなの?」


 みっちゃんの説明で事情が判明。知らなかったのは私だけみたい。いや、私だけじゃなくてエスカリテ様たちも知らなかったみたいだけど。


 古い習わしみたいで具体的な起源は分かっていないけど、魔族は一人で生活できて一人前というか当たり前という考えがあるらしい。そしてその期間に自分の得意なことや苦手なことを学ぶという面もあるとか。王族でもその考えは当然あって、第四王子であってもそれは避けられない。というか、王族だからこそ厳しくされている面もあるらしい。


 そしてゼローグさんは十八。しかも最近誕生日を迎えたとか。つまり、最初は護衛がいたんだけど、誕生日を迎えた日に護衛が帰ってしまったという話らしい。なんのコントだ。


 悪い人ではないのだが、周りが見えていないというか、色々なことに配慮が足りないという評価をされているようで、今回のこともかなり呆れられているらしい。庶民なら許されたんだろうけど、王族としてどうなのって感じだから、期待もされていないとか。


 この辺りの話は昨日イルディちゃんが聞きだしたとか。何の遠慮もなく聞いたんだろうね。私が連れて行こうって言ったのが先だからイルディちゃんが心配して聞いてくれたんだろうけど。そりゃ止めるだけでいいのに一緒に行こうと言い出したんだから心配もするか。余計なことしてごめんよ。


 でも、状況を聞いた限り、なんか手柄がなくても庶民の人と結婚したいって望みが叶いそうな気がする。そのうち放り出されちゃうんじゃないの?


「余計なことをしたかな……?」

「そんなことはないと思うよ。魔国としてはアレに余計なことをしてほしくないし、死なれても困るからね。私たちの目の届く範囲に置いた方が良いと思う」

「アレって」

「あんなのはアレで十分。いままで好き勝手生きられた理由を理解してないなんて、孤児院の子たちより劣るわ」


 孤児院の子達はまた特殊だけどね。わんぱくでたくましいし。でも、ゼローグさんは魔国でそんな評価だとはね。これは庶民の彼女さんも怪しいな。騙されてんじゃ――いやいや、確定していないのに思い込むのは危険だね。できるだけ中立というか、余計な推測は止めよう。そもそも、首を突っ込むような話でもないし、恋バナの行方はエスカリテ様が知りたいだけだ。


 一応ゼローグさんに色々聞いて彼女さんの勤め先を教えてもらったみたい。なにやら大きな宿で働いているとか。エスカリテ様の鳩が偵察に行っているみたいだからそのうち状況も分かるだろう。エスカリテ様がご立腹になる状況にだけはなって欲しくないね。


「イルディ様」

「どうしました?」


 いきなり馬車の外からカザトさんの声が聞こえた。なにかあったのかな?


「少々早いのですが昼食をとりたいと考えております」

「確かに早いですね。なにかありましたか?」

「順調に進み過ぎて休憩できる場所に予定よりも早く着いてしまいまして」

「そういうことですか。それでしたらすぐに準備をしましょう」


 さすがエスカリテ様の祝福、普通の二倍くらいの速度で進んでいるんじゃないかな。魔物も襲ってこないし、順調すぎるね。


 ……こういうときに「さすが私!」って感じになるんだけど、今日のエスカリテ様はずいぶん大人しいね。それになぜかギザリア様やミナイル様も大人しい。


『エスカリテ様?』

『……え? あ、なに? 何かあった?』

『いえ、何かあったかはこっちのセリフなんですけど』

『いや、別に何もないよ……うん? んん? いや、違うかな……?』

『え? どうしました?』

『この山に入ってからちょっと変というか、気になるっていうか』

『大丈夫なんですか? もしかしてギザリア様やミナイル様も大人しいのも?』

『まあ、なんか変な感じがするな』

『お肌に悪いわ!』

『ええ? 本当に大丈夫なんですか?』

『ああうん、大丈夫大丈夫。別に悪い感じじゃないから。なんかこう喉まで出かかっているけど思い出せないって感じなだけ』

『おー、分かる。俺もそんな感じだ』

『わたくしも。魔力が濃すぎて気配が安定しないのよね』


 この山に何かあるのかね。それとも暗黒龍に何かが……? 悪い感じじゃなさそうだけど、ちょっと心配。ここはガズ兄ちゃんの料理を食べてリフレッシュしてもらおうか。


 皆が馬車を降りて休憩の準備を始めた。私もガズ兄ちゃんの料理番補佐として頑張っちゃうぜ。


 料理は作ってエスカリテ様の家に置いておけばって言ったんだけど、何らかの理由で私がはぐれたときに困るからって食材なんかは馬車で運んでる。なので料理もこれからだ。


「ガズ兄ちゃん、手伝うよ」

「おう、助かる。ならカレーを作るから野菜を適当に切ってくれ」

「はーい」


 そんなわけでレッツクッキング。エスカリテ様たちのことは気になるけど、やばそうな感じではないから大丈夫だろう。それにカレーを食べれば悩みなんて吹き飛ぶよ。たぶん。


「ところでそっちの馬車に乗ってるゼローグさんはどう? ものすごく暗かったりする?」

「そういうところもあるが、司祭様とは話が合うようだったぞ」

「そうなんだ?」

「優秀な兄を持つと大変だって話が多かったな」

「なら意外と話が弾んだんだ? 誰も何も話さない状況かと思っちゃったよ」

「それはないから大丈夫だ。ただ、ゼローグ様はずいぶんと自分を過小評価しているな。自分は何をやっても駄目だと言ってる」

「そうなんだ」

「色々なことに反省するのはいいんだが、反省しかしていない気がするな。上手くいったこともあるんだから、それを次に活かそうとすればいいと思うんだが」

「性格的に難しいのかもねぇ」

「性格もそうだが、環境のせいなのかもしれないな。優秀な兄たちと比較される環境じゃ、誰だってあんな風になる可能性はある」

「環境の問題か」


 自分が兄の下位互換みたいに思ってるのかな。なにか一つでも自信があるものがあればいいんだろうけどね。とはいえ、料理が上手いとか王族に求められていないことで自信があっても意味がないだろうし、難しい問題だね。


 おっと、話をしながらでも野菜の切り分けが終わってしまった。お嫁さんスキルは確実に上がってる。カンストするまで頑張ろう。異性の心を掴むには、まず胃袋から掴めと言うからね……!


 そんなわけで作られたカレー。トッピングのコロッケが憎いぜ。話しながらコロッケまでつくるガズ兄ちゃんは怖いけど。


 さて、ゼローグさんを無理に連れてきたのは私だし、ちょっと話をしてみようかな。美味しいカレーを食べれば口が軽くなるってもんよ。


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