第9話『契約深度:解放(アンロック)――奪われた弟と、選択の代償』
【Scene 1:精神深層領域《記憶の檻》】
――シィィィィン……(音のない空間)
ユウは、気づけばどこまでも白く広がる世界にいた。
そこには、小さな子どもが一人、
砂場のような場所で膝を抱えている。
少年「……にいちゃん」
ユウ「……え?」
少年「にいちゃん……やっと、きてくれた」
ドクン……!
心臓が跳ねた。
聞き覚えのない声のはずなのに、懐かしい。
そして、なぜか涙が出そうになる。
ユウ「お前……誰だ?」
少年「……ユウトだよ。にいちゃんの弟。
アモンと契約したときに、全部忘れたんだ」
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【Scene 2:消去された記憶の真相】
フラッシュのように、過去が流れ込んでくる――
・小さな家
・両親の笑顔
・弟・ユウトと肩を並べてゲームをする日々
ユウト「でも、契約のとき……“一番大切なもの”を代償にって言われて、
にいちゃんは僕を選んだ」
> 『代償:弟の存在/関連記憶すべて』
『結果:弟は“世界から抹消”され、他者の記憶からも消去』
『契約部位:アモンの右腕』
ユウ「……俺が……自分で、お前を消したってのか……?」
ユウト「ううん。違うよ。
にいちゃんは、“俺を守るために”契約した。
あのとき――教団の襲撃で、僕、殺されかけた」
ユウト「それを止めるには、“力”が必要だったんだ。
だから――俺を代償に選んだんだよ」
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【Scene 3:選択】
ユウト「この記憶を戻すなら、刻印が変質する。
アモンの右腕は、強さと引き換えに“痛み”を思い出させ続ける。
忘れるなら、今のままでもいいよ」
ユウ「……忘れたままで、生きていけって?」
ユウト「どっちでもいい。僕は、にいちゃんが笑ってればいいから」
ユウ「……バカヤロウ。
俺が“誰かの命”を忘れて強くなって、
そんなもんで勝って、何が“正義”だよ……!!」
ユウ、右手を胸に当て、再契約を叫ぶ!
> 「契約深度:再接続――覚醒、痛みと共に!!」
バチィィィィィィィィィィン!!!!(雷鳴のような共鳴)
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【Scene 4:現実世界へ復帰】
ドゴォォォォォン!!!!(仮面に渾身の一撃)
ミラ「……っ! あの子、記憶を取り戻して――!!」
ユウ「――“右腕”の重さが違う。これが……俺の選んだ痛みだ」
> 『契約再構築完了:右腕レギュラ【刻印・断章回帰】発動』
特性:使用ごとに“失われた記憶”を再生/同時に精神干渉耐性を得る
アモン頭部の仮面は砕け、
中から、“黒い目”のような核が浮かびあがる。
ゴゴゴゴゴ……ッ(封印結界が崩壊)
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【Scene 5:アモンの囁き】
> 『これで、三つ目の鍵が開いたね――
次は、僕自身が目覚める番だ』
> 『でも嬉しいよ。キミはやっぱり、ボクの器だ』
ユウ「俺は……お前なんかの器じゃねぇよ!!」
> 『その答え、最後まで持つといいね。
だってキミは、次で“心”を覗くんだから』