最終話『名もなき少年の記録――終焉、そしてその先へ』
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【Scene 1:目覚め】
ヒュゥゥゥゥゥ……(風の音)
少年は、草原の中に横たわっていた。
空は青く、どこまでも澄んでいた。
ユウ「……ここは……」
そっと手を上げる。
右腕は、もう“黒鉄の腕”ではなかった。
普通の、人間の腕――温かみを持った、自分の身体だった。
ミラ(小声で)「目を覚ましたわ……!」
カイ「ったく、3日も寝てやがった。バケモンかよ、お前」
ミラ「その言葉、そっくりそのまま返すわ。全部引き受けたのはあの子なのよ」
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【Scene 2:刻印の消失】
ユウの体には、もう“契約の紋章”はどこにもなかった。
ミラ「アモンの力は……完全に君の中で沈黙したの。
もう、どの刻印も反応しないわ」
カイ「“器”が、力ごと“封印”したってことか。
バカみてぇな選択しやがって……」
ユウ「……いや、ちげぇよ」
カイ「……あ?」
ユウ「俺は、忘れたくなかっただけなんだ。
“力”より、“名前”を選んだ。それだけだよ」
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【Scene 3:弟との再会】
夕暮れの中、村の丘の上に、一人の少年が立っていた。
ユウト「……にいちゃん!」
ユウ「!!」
ユウトは、かけよってきて、
まるで何もなかったかのように笑った。
ユウト「目、覚ましたってミラさんから聞いたよ。
また一緒に遊べるね!」
ユウ「…………ああ。今度は、もう忘れねぇ」
ユウはその手を、しっかりと握り返した。
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【Scene 4:最後の語り】
> 世界は、まだ完全には癒えていない。
アモンが遺した“闇”は、別の誰かの中で芽吹くかもしれない。
> けれど、俺はもう迷わない。
この手で選んだ“痛み”と、“名前”を忘れない限り――
――俺は、俺のままで戦える。
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✴️最終テロップ
> 『かつて、悪魔を封じた少年がいた。
その名は誰も知らない。
けれど、世界には今も彼の残した“爪痕”が息づいている――』