第1話『封印の腕(アモン)』
ザァァァァアア……ッ(風の音)
木々がざわめく、昼下がりの森。空は鈍く曇り、今にも何かが始まりそうだった。
「ったく……なんで俺が薪拾いなんか……」
ブツブツと文句をこぼす、ひとりの少年――ユウ(15)。
茶色の頭巾に泥のついたズボン、背負った籠はまだ半分も埋まっていない。
カサッ。
ユウの足元で、何かが動いた。
一歩下がる。足が、何か硬いものを踏んでいたことに気づく。
「……石か?」
しゃがんでみる。
それは……**“黒い金属の腕”**だった。
ギィィ……ッ(音にならない呻きのような共鳴)
「な、に……っ?」
土からむき出しになったそれは、人の腕の形をしているが――
明らかに人ではない。
鋭く尖った指先。螺旋状の紋様。硬質な質感に、どこか“生”を感じさせる温もり。
そして、脈動していた。
ドクン――
ユウの手が、勝手にその腕へと伸びる。
「やめろ、動くな……!」
ドクン! ドクン!
ズルッ!
「――っ⁉」
その瞬間、黒い腕がユウの右腕に絡みつく!
ガキィィン!!(金属音+炸裂音)
「――あ、アアアアアアアッ!!」
ユウの身体が、跳ねた。
骨の軋む音。肉が軋み、皮膚が焼けるような痛み。
ボフッ――!
黒い煙が舞い、腕が完全に融合した。
> 『……我が名はアモン。』
『断罪の腕を持つ者よ――汝、契約は成された。』
「……は? なに言って……おい、外せ! これ、マジでやばいって!」
しかし、ユウの声は誰にも届かない。
いや、届いていた。
――ザザザザ……
森の奥から、何かがやってくる。
「なんだ……今度は何だよ……!」
バキバキバキバキ……!
木が折れる。鳥が逃げる。地響きがする。
ガサァア!!
現れたのは、全身鎧に包まれた謎の騎士。
頭部には紋章。目は空洞なのに、ユウを見据えている。
> 「"アモンの腕"、確認……即、排除する」
「対象:少年。危険度Aランク。処分、開始」
ギュンッ!!
突如、巨大な槍が宙を裂いた。
「なっ――!」
ザァアアン!!(地面に突き刺さる衝撃)
土がえぐれ、ユウは吹き飛ばされる。
腕をかばおうとするが、黒い腕が自動で動いた。
ガギィィィン!!
黒い腕が槍を受け止めた――まるで意思を持っているかのように。
「動いた……? 俺じゃ、ない……!」
> 『目覚めよ、契約者。お前はもう、“人”ではない』
ユウの右腕から黒いエネルギーが奔流する。
ズガァアアアン!!!!
木々が吹き飛び、風が逆巻いた。
「う、うそだろ……なんで、俺が……こんなことに……」
けれど、体の奥が疼く。
ゾクゾクするような、何かが覚醒していく感覚。
> 『汝の敵を、我が腕で裁け。』
「くっ……ふざけんなよ……!」
ユウは、拳を握った。
次の瞬間――黒い炎が、右腕から**“獣のような爪”**を形作る。
「――やってやるよ、悪魔。」
「だけど……この力、俺が使う! お前なんかに、負けるかよ!」