第33話「神々の黄昏と黎明」
◆ 帝国完全独立宣言から三日後
黎明帝国ノヴァリア中央議事堂。
完全独立を宣言してから三日が経過し、帝国の新体制づくりは急ピッチで進められていた。
「南方浮遊大陸への農地拡張計画、予定よりも10日早く進行中です」
ノアがホログラムを投影しながら報告する。
「北端の防衛線も、神王戦で得られた《虚無次元合金》を用いた再構築が完了済み」
ミストが続けた。
「素晴らしい……」
蓮は感嘆しながらも、その瞳に一抹の影を落とした。
◆ 皇帝の不安
《創造者超越術式・全創世界開放》で原初神王アルファディウスを打倒したあの戦い。
あの瞬間から――
彼の体に、奇妙な違和感が残っていた。
(……俺の中に、何か別の“因子”が……?)
神の権能と同質、いや、それ以上の“混沌”とも呼ぶべき因子が、蓮の魂核に絡みついている感覚。
(これが……何なのかはまだわからない。だけど……)
◆ バルコニーの二人
夜、黎明城最上階。
蓮はいつものようにバルコニーで夜風に当たっていた。
そこにイリスが現れる。
「考え事?」
「……ああ」
蓮は無限アイテムボックスから湯呑を取り出し、イリスに手渡した。
「ありがとう」
イリスは静かに微笑むと、隣に座った。
「感じるわ。貴方の中の“揺らぎ”。それは……」
「わかるのか?」
「ええ。おそらく――」
イリスが言葉を選ぶように瞳を伏せる。
「“カオスの因子”よ」
「カオス……?」
「世界秩序と対を成す、混沌の権能。原初神王アルファディウスの奥底にすら届かない、“最古の神”の因子」
◆ 深界神王ルミナの残響
その時、蓮の意識に声が響いた。
『――創造者』
「ルミナ……!?」
かつて倒した深界神王ルミナ=ディザスターの声だった。
『貴方の中にある因子。それは《カオティック・オメガ》……混沌神の権能の欠片。私も恐れていた存在……』
「混沌神……?」
『“世界秩序”を創った原初神王たちをも超える、最初の神。それが《カオティック・オメガ》』
声はそこで途切れた。
◆ イリスの予言
「カオティック・オメガ……」
イリスは真剣な表情で蓮を見つめる。
「もし、その神が復活すれば、世界は完全に再編される。全ての理、秩序、運命が崩壊し、混沌の中で新たな世界が“生成”される」
「それって……」
「世界の終焉と創造を同時に起こす、絶対神災よ」
蓮は唇を噛みしめた。
(そんな存在が……この先、来るのか……?)
◆ 神界
その頃、創世神域最深部。
漆黒の玉座に座る巨大な影が笑った。
「――目覚めの時は近い。創造者蓮……貴様の魂に宿る混沌因子は、我が分霊」
暗黒の空間に赤黒い光が揺らめき、地鳴りのような声が響いた。
「我が名は《カオティック・オメガ》。神々の黄昏を超えし、混沌の最初神なり」
その言葉に呼応するように、創世神域の至る所で空間の裂け目が発生した。
◆ 帝国中央議事堂、緊急会議
「陛下!! 創世神域各地で異常次元震が発生!!」
ノアが駆け込む。
「深度解析……不明!! 既存の因果式にも秩序にも適合しない存在……!」
「まさか……」
ミストが青ざめる。
「混沌神……《カオティック・オメガ》……!!」
◆ 皇帝の覚悟
蓮は静かに目を閉じた。
(原初神王を超える存在……この世界を創り変える混沌神……)
彼は無限アイテムボックスに手を入れた。
(だけど、俺は――)
取り出した《創世剣〈イデア・エクスカリバー〉》が、夜の議事堂に白銀の光を放つ。
「俺は……負けない。この国を……この世界を……守り抜く!!!」
◆ 夜明け
黎明城最上階。
夜が明け、朝日が帝都を照らす。
イリスが蓮に寄り添い、そっと囁いた。
「一緒に戦いましょう。どんな相手でも……貴方となら勝てるわ」
蓮は小さく笑い、彼女の手を握り返した。




