第22話「帝国拡張計画」
◆ 決戦の翌朝
黎明帝国ノヴァリアの首都、黎明城。
神界連邦軍との激戦から一夜明け、未明の大広間には、主要幹部たちが集まっていた。
「……今後の帝国運営について、話し合わなくちゃね」
ミストがタブレットを操作し、空中に地図を投影した。
創世神域全域を俯瞰するその地図には、無数の浮遊大陸、遺跡群、未知領域が点在していた。
◆ 拡張の必要性
「現状、帝国領は創世神域中心部のわずか10%。神界連邦は撤退したけど、あの程度で諦める相手じゃない」
ノアが淡々と報告する。
「こちらの基盤が整わないうちに、再侵攻されたらひとたまりもない」
リーナが剣を膝に立てながら言った。
「だから、拡張して拠点を増やす。資源も食料も、今は輸入頼りだしな」
カイエンが腕を組む。
「だが問題は人手だろ。行政も警備も、慢性的に人材不足だ」
◆ 帝国拡張計画
「……だからこそ、この計画を実行する」
蓮が無限アイテムボックスから一冊の黒革ファイルを取り出した。
《帝国拡張計画》
彼がページを開くと、詳細な拠点設計、資源分配、行政区再編、さらには農業魔導工場や治水ダム建設の図面までがびっしりと記されていた。
「これを……一晩で……?」
マリルが目を丸くする。
「こう見えて、俺は寝なくても動けるんだ。神族相手に鍛えられたからな」
蓮が苦笑する。
「この計画には、三つの柱がある」
彼は指を三本立てた。
「一つ、《中央圏防衛拠点網》の構築。
二つ、《資源循環型都市》の建設。
三つ、《統合行政学院》の創設だ」
◆ 一つ目:中央圏防衛拠点網
「防衛拠点網……?」
シャムが首を傾げる。
「簡単に言えば、城砦都市を神域中央部の各浮遊大陸に展開し、転移ゲートと通信網で結ぶ。こうすることで、どこを攻められても数分以内に増援できるようになる」
蓮が投影地図を操作すると、各地に城砦都市のアイコンが浮かび上がる。
「さらに、《超次元魔導砲》を配置しておく。神格級が来ても迎撃可能だ」
「無双国家だな……!」
カイエンが笑った。
◆ 二つ目:資源循環型都市
「次は《資源循環型都市》の建設。農業、林業、採鉱、精錬、工業、すべての産業を一つの都市圏で完結できるようにする」
ミストが目を輝かせる。
「資源輸送ロスが減り、食糧自給率も跳ね上がる……!」
「その通りだ。ただし、創世神域の魔素濃度は高すぎるため、環境改変結界と排魔結界を併設する必要がある」
蓮は指示書を次々に渡していく。
「……これ、全部私が解析するの?」
ミストが溜息をついた。
「頼んだ」
◆ 三つ目:統合行政学院
「そして最後が《統合行政学院》」
リーナが首を傾げる。
「学院……?」
「この帝国を長く維持するためには、理念を共有する人材育成が必須だ。行政官、外交官、軍師、魔導師、治癒師……各分野の専門家を育てる総合学院を創る」
イリスが頷く。
「素晴らしいわ。まるで“帝国士官学校”のようね」
「士官学校じゃない。ここは“自由黎明学院”。身分も種族も問わない。全ての民に学ぶ機会を与える」
蓮は強く言った。
「学びこそが国力。知識こそが自由を支える柱だ」
◆ 帝国の未来
作戦室に静寂が流れた。
「……まったく」
カイエンが呆れたように笑う。
「逃亡者だった男が、今じゃ完全に帝国皇帝様だな」
「やめろ、鳥肌立つから」
蓮が苦笑すると、皆が一斉に笑った。
◆ 迫る脅威
だが、その頃。
創世神域外縁、虚空の裂け目にて。
「ふふ……面白いじゃないか。人間風情が帝国を築き、神界連邦を退けるとは」
紫水晶の瞳を持つ少女神が、浮遊玉座から笑っていた。
「次は……私たち《深界連合》の出番だね?」
背後には、無数の神影が揺れていた。
◆ 新たな戦乱へ
夜。黎明城最上階。
蓮は一人、星空を見上げていた。
(帝国拡張……国づくり……そして、次に来る脅威……)
彼は無限アイテムボックスから《創世剣〈イデア・エクスカリバー〉》を取り出し、その刃を見つめた。
「……まだ終わらない。ここからが、本当の戦いだ」
剣が月光を受け、白銀に輝いていた。




