第16話「旧神連盟の影」
◆ 建国祭の夜
黎明城の中央広場は、建国宣言を祝う人々の熱気に包まれていた。
焚き火の周りで踊る民、即興楽団の演奏、屋台で配られる焼き肉や甘い果実酒の香りが夜空に漂う。
「……すごい賑わいだな」
蓮は中央塔最上階から広場を見下ろし、微笑みを零した。
「当然よ。ここまで来たんだから」
イリスが隣でグラスを掲げる。
「……乾杯しようか。新しい国と、あなたに」
「……ああ」
二人のグラスが軽く触れ合う澄んだ音は、喧噪の中でもはっきりと響いた。
「それにしても……忙しいわよ? これから国庫や官僚制度の整備、魔導炉心の維持、交易路開拓……」
「分かってる」
蓮は微笑むと、無限アイテムボックスから一冊の分厚い革表紙の本を取り出した。
《国家基幹運営戦略集成》
「一応、帝国時代にまとめておいた」
「……あの忙しい最中によく……」
イリスが呆れと尊敬が混じった視線を送る。
「俺は逃亡者だったけど……同時に“創造者”になりたかったからな」
◆ 不穏な影
その頃、黎明城地下の魔導解析室では、ミストとノアが解析端末に向かっていた。
「……これは……?」
ノアが眉をひそめる。
端末に映し出された魔素解析グラフ。
通常なら平坦であるはずの魔素安定度が、極端な乱高下を示していた。
「異常だわ。この変動は……自然現象じゃない」
「誰かが干渉している?」
「……ええ。おそらくは“外部神格”」
ミストがタブレットを操作し、次元通信ネットワークに接続する。
瞬間、画面が紫黒色に染まり、謎の文字列が高速で流れ出した。
《……ゼ……イ……ワレラ……》
「このコード……!」
ノアが目を見開く。
「旧神連盟……!」
◆ 旧神連盟とは
かつて、神界黎明期に存在した神族連合体。
神々の統治を人類や魔族に強制し、“絶対支配”を理念としていたが、後の神滅戦争で滅びたとされていた。
「まさか……生き残りが……」
「正確には、生き残りではなく……“復活”よ」
イリスが解析室に現れた。
「虚空神王の消滅により、封印領域が崩壊した可能性がある」
「つまり……奴らは自由になった?」
蓮が険しい表情で部屋に入ってきた。
「国を創った矢先に……旧神連盟か」
「彼らは《創世の座》を狙うでしょうね。この国が創世神域に建っている以上、狙われないわけがない」
◆ 侵攻の兆し
翌日未明。
ノヴァリア北端警戒塔から緊急通信が届いた。
『緊急報告! 北方上空に神格級反応三体! 現在、雷雲上空を超高速接近中!!』
「神格……三体……!?」
リーナが剣を抜く。
蓮は無限アイテムボックスを開き、《対神格兵装セットA》を取り出した。
「シャム、カイエン、リーナは迎撃準備。イリス、ミスト、ノアは本部で後方支援。ネフェリス、マリルは市民の避難誘導を頼む」
「了解!」
全員が一斉に動き出す。
「旧神連盟……どんな奴らなんだ?」
シャムが走りながら問う。
「神族の中でも、特に古く強大で、思想が極端な連中だ。“人間は神の下僕であるべき”って本気で信じてる」
蓮は黒翼竜神グラディオルクスを召喚した。
「行くぞ。国を護るために」




