第14話「創世神域への旅立ち」
◆ 星界の門
虚空神王との激戦から一夜が明けた。
雷神殿の崩壊を免れた神域中央広場には、黎明の光が差し込んでいた。
夜が明けるはずのない雷神界において、これは奇跡に等しい現象だった。
「……綺麗……」
ネフェリスが震える声で呟く。
虚空神王が残した“新世界創造座標ゲート”は、夜空に咲く極光のように淡い光を放ち続けている。
「座標確定……転移可能です」
ミストが魔導端末を操作し、全員へデータリンクを送った。
「だが、本当に行くのか?」
カイエンが剣の柄を握り締めながら尋ねる。
「当然だろ」
蓮は微笑んだ。
「ここまで来て、行かない理由なんてない」
リーナが彼の隣で頷く。
「でも……本当に“創世神域”なんて存在するの?」
「存在させるんだよ」
ノアが静かに言った。
「俺たちの願いと意思で」
◆ 旅立ちの前に
転移準備が整うまでの間、蓮は一人神殿の崩れた柱に腰掛け、空を見上げていた。
「蓮?」
背後からイリスが歩み寄る。
「どうしたの?」
「いや……」
蓮は無限アイテムボックスを開き、小さな木片を取り出した。
それはかつて彼がこの世界に来て最初に手に入れた、“旅立ちの杖”の欠片だった。
(あの頃は、ただ逃げたかっただけだったな……)
逃亡者として始まったこの世界での人生。
だが、今は違う。
「俺は……」
イリスが隣に腰を下ろす。
「あなたは?」
「……俺は、この世界に来てよかったって思ってる」
そう言った蓮の横顔に、イリスは微笑む。
「ふふ……そう。じゃあ、その続きを見せてよ」
「続きを?」
「“よかった”で終わらせないで。“幸せだ”って、言える未来を見せて」
蓮はイリスの手を取り、強く握った。
「ああ。約束する」
◆ 新世界創造座標ゲート
準備が整い、全員がゲート前に立った。
「これをくぐれば……」
マリルが小さく息を呑む。
「ここまで長かったけど……本当の始まりは、これからだよな」
リーナが剣を背に構え直す。
「建国だね……!」
ネフェリスが笑顔で頷いた。
「ようやく“自由な国”を創れるのね」
カイエンがその言葉に頷き返す。
ノアはタブレット端末を閉じ、蓮を見つめた。
「行こう。俺たちの国へ」
◆ そして創世へ
ゲートの前で、蓮は全員を見渡した。
かつて奴隷闘技場で地を這い、無力を噛み締めた日々。
人を救いたくて、それでも救えなかった日々。
それでも――
「俺たちはここまで来た」
無限アイテムボックスを開き、最初に作った“簡易宿泊テント”を取り出す。
「なんでテント?」
マリルが笑い、イリスもクスッと笑った。
「国を創るのも、テントを建てるのも、最初の一歩は同じだろ?」
「……ふふっ、そうだね」
蓮はテントを仕舞い直すと、ゲートを見据えた。
「行くぞ。これからが――俺たちの始まりだ」
◆ 創世神域
光が収束し、次の瞬間、眩い世界が広がった。
空は金色に輝き、大地には無数の魔力草花が咲き乱れ、遥か遠くには天を貫くような白銀の塔がそびえていた。
「ここが……創世神域……」
リーナが呆然と呟く。
「……何も……ない……!」
マリルがあたりを見回した。
人も建物も文明も存在しない、まっさらな世界。
だが、それは絶望ではなく、無限の可能性の象徴だった。
「そうだ……」
蓮は歩き出す。
「ここには何もない。だからこそ――何でも創れる」
彼の背に、仲間たちが続く。
「よし。まずは拠点設営班、周辺資源調査班、魔素解析班に分かれろ。イリス、ミスト、ノアは周囲の魔力環境の安定化を。リーナとカイエンは外周警戒。マリルとネフェリスは食料調達。頼む」
「おお……やっぱり蓮だね!」
ネフェリスが笑顔で駆け出し、リーナとカイエンは無言で剣を抜いて外周へ向かった。
イリスは蓮の隣で静かに言った。
「さぁ、“自由な国づくり”を始めましょう」
蓮は笑い返した。
「ああ。ここからが本当の無双建国だ」
◆ そして物語は――
星々が降り注ぐような光の中、蓮たちの新たな物語が始まった。
それは逃亡者が辿り着いた、誰にも縛られない世界。
――ここに、『黎明帝国戦記〈ノヴァリア・クロニクル〉』続編
『異世界逃亡者の無双建国』新章、“創世神域編”が開幕する。




