第12話「雷霆の審判」
◆ 雷の神域へ
雷雲が渦巻く空を裂き、蓮たちの前に現れたのは、天空を覆い尽くすほどの巨大な浮遊大陸だった。
そこは《雷神界ヴォルトレイア》。
神話の時代、雷神ライデアスが住まうとされ、全ての雷と嵐の理を統べる領域。
だが同時に、神ですら容易には踏み入れぬ“絶対の領域”でもあった。
「まるで……空そのものが怒ってるみたいだね」
ネフェリスが震える声で呟く。
周囲では雷鳴が轟き、紫電が絶え間なく走り続けている。
「気を抜けば、即死級の雷撃を食らう。結界を最大展開で進むぞ」
蓮が指示を飛ばすと、マリルとカイエンが補助結界を連動させ、ミストが雷属性魔素の解析を進めた。
「やはり……この雷素密度、通常の攻撃魔法は通用しないでしょう」
「いや、それどころか、下手に雷耐性装備を使えば逆に焼かれる可能性もある」
ノアが魔導端末を叩き、警告表示を浮かび上がらせる。
「イリス、位置座標は?」
「雷神殿と思われる魔力収束点を特定した。距離、約五十キロ。ここからなら、半日で到達可能」
リーナが剣を抜き、前を見据えた。
「なら進もう。どのみち帰る道なんてないんだから」
「そうだな」
蓮は微笑み、皆に背を向けて歩き出した。
その足取りは確かで、決して揺るがなかった。
◆ 雷神の審判
雷神殿に到着したとき、空はすでに真夜中を過ぎていた。
だが、この雷神界には昼夜の概念は存在しない。ただ永遠に雷鳴と嵐が轟くだけの世界。
荘厳な双扉を開けると、そこには白銀の鎧を纏った巨人が玉座に座していた。
「ようこそ、異邦の創造者たちよ」
雷神ライデアス。
白銀の長髪と青白い雷光を宿す瞳。
体躯は蓮たちの三倍はあろうかという巨躯であり、その存在感だけで空間が震えていた。
「我は雷霆と破断の理を司る神。汝らの来訪、すでに知っている」
「俺たちは、お前の力が必要だ。世界を……創り直すために」
蓮の言葉に、雷神はわずかに眉を動かした。
「世界を創る……面白い。ならば問おう。汝は“破壊”を恐れぬか?」
「……恐れるさ。だけど、破壊なくして創造もない。痛みも、悲しみも背負った上で、それでも進む。それが、俺たち人間だ」
静かに、しかし力強く告げる蓮の声。
雷神は、瞳を細めた。
「では――審判を受けよ」
次の瞬間、神殿全体が白光に包まれた。
◆ 神雷舞踏
雷撃が降り注ぐ。
通常の雷撃とは次元が違う。空間を裂き、存在の情報構造すら破壊する“神雷”。
「全員、展開陣形!」
蓮の号令と同時に、リーナが雷を裂き、ネフェリスが雷鎖を断ち切る歌声を響かせる。
カイエンとマリルが補助結界を張り続け、ノアは雷の軌道解析と回避経路を即座に伝達。
「来るぞ……!」
ミストが叫んだ次の瞬間、雷神自身が剣を抜いて突撃してきた。
その速度は、光よりも速い。
しかし――
「遅い」
蓮が呟き、無限アイテムボックスから一振りの大剣を引き抜いた。
《雷殺の魔刃・グラディウス・レクス》
かつて神滅戦争で雷神族を葬ったと伝えられる封印武装。
「なっ……それを、どこで……!」
雷神が動揺した隙を突き、蓮は雷殺剣を雷神の胸元へ突き立てた。
「これが……人間の“無限”だ」
◆ 盟約
血のような雷光が弾け、雷神が膝をつく。
「……敗北、か。良いだろう。汝らに雷霆の理を託そう」
雷神の体が光となり、蓮の胸の緋星核へと吸い込まれていく。
《雷霆核〈ヴォルト・コード〉》――雷と破断の神性因子。
「これで……残るは虚空だけだな」
蓮の呟きに、イリスが頷く。
「そして、その虚空には“灼滅の神王”が待っている……」
「行こう。終わらせるために。そして――創るために」
夜空では、最後の戦いを予感させるかのように、雷と星光が交差していた。




