9/30
9
「……ん」
ルシウスはあたたかい抱擁の中で目を覚ました。
「 目が覚めたのね」
その涼やかな声にハッとして身を起こす。
「レ、レイティア……?」
「ふふ、やっと応えてくれた」
「応えて……? ああ、もしかして……、何度か助けてくれていたかい?」
「そうよ、聞こえていたの?」
「聞こえていた、のかな。うん、多分聞こえてた」
「そう……。なんだこれからはもっと、私の声を聞いてね」
「うん。助けてくれてありがとう、レイティア」
「当然よ、私のルー。ああ、でもそろそろ目を覚まさなくてはいけないわ……」
「……どういう?」
そう尋ねながらも、ルシウスは急速に意識が遠のいていくのに気付いた。
ここにはレイティアとルシウスしか存在しない。きっといつもの夢の中なのだろう。
「ねぇ、レイティア。また、会えるよね……?」
「あなたが迎えに来てくれるなら」
「……必ず行くよ」
その言葉を最後にルシウスは現実の世界へと戻っていった。