18
下り階段降りると、そこは薄暗い神殿のような場所だった。石造りの古びた地下施設、とでもいえばいいだろうか。
「この先?」
――えぇ、そうよ。でも邪魔者がいっぱいいるはず。全員倒してね?
レイティアの声が聞こえた時ちょうど、ルシウスの存在に気付いた男たちが慌ててちらに来た。
「何者だ!?」
ルシウスは騒がれる前に倒してしまおうと、地上にいた者たちと同じ要領で昏倒させた。だが、うち一人がまだ意識を保っていたらしく、懐から笛のようなものを取り出して思いっきりそれを吹いた。
警報装置のようなものなのだろう。向こうから慌てた様子の男たちはわらわらと現れる。
「 女神像はどこだ」
手短に問うと、彼らにざわりと動揺が走った。
「こいつまさか、 あれを狙って!?」
「お前、あれに何をするつもりだ!」
悲鳴のような声で問いかけられる。
「解放する」
「なっ!?」
再び男たちに動揺が走った。そこからいち早く立ち直った、中でも身分の高そうな男は慌てて周りに指示を飛ばす。
「 その男をここから通すな!! 非戦闘員は××××に報告に行け!」
指示された者たちはバラバラと各方面走り、残った者たちはこちらへ向き直った。
「お前は何者だ!」
先ほど市場とはしていた男が、改めてルシウスに問うた。
「ルシウス。お前たちから、愛する女神を解放しに来た」
それだけ言うとルシウスは、一気に彼らに距離を詰めた。アロンとの短い旅路で、近近接戦も、多少は腕が上がっていた。ナイフと光の力で十人ほどいた敵を、片っ端から無力化していく。
「その、光の力……」
床に倒れ伏しうめき声をあげる一人が、驚きに満ちた顔でルシウスを見た。
「どうして……? その力を持つならばお前は×××××のはずなのに……」
「……何を言ってるのかわからない」
ルシウスは呻く男を見下ろす。本当に所々聞き取れないところがあった。正確に言うと声は音として拾っているのに、意味が理解できなかった。
「ねぇ、どうしてかな、レイティア」
――あなたに必要のないものだからよ。
「そう」
ルシウスは動けなくなった男たちに背を向けて、また再び歩き出した。
「レイティア、だって……?」
先ほど呻いていた男がそういった気がしたが、ルシウスの関心はもうそこにはなかった。