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「レイティア、君は王都にいるの?」

 王都への道をひた走りながら、ルシウスは頭の中に響く彼女の声に問いかけた。

 ――えぇ。そのとおりよ。

「 どうして最初から教えてくれなかったの?」

 ――あなたが私のために必死になっているのを見ていたくて……。ごめんね?

 そう言われるとルシウスも怒る気が失せた。愛する女のわがままだ多少のことなら何でも許せる気がした。

「王都に着いたら、君がどこにいるか教えてくれる?」

 ――えぇ。今度は意地悪なんかしないわ、ルー。

「よかった」

  ひたすらに歩いてみれば王都はそう遠い場所ではなかった。 ほぼ不眠不休で歩いたが、大して疲れを感じていない。右腕や、背中の傷も大したことなかっただろう。あの日以降ろくな手当てをしていないが、痛むことはなかった。

 光の力の持ち主として有名になりつつあったルシウスは、 王都へも 冒険者としての証明証を見せれば難なく入ることができた。

 門兵が何かを言っていたが、ルシウスには何と聞き取ることもできなかった。だが行く手を阻むわけではなかったので、それを無視してルシウスは王都へと入った。

「次はどこへ行けばいい、レイティア?」

 ――簡単なことだわ。私を隠しながら閉じ込めているの、そんなことができるのは限られているでしょう?

「…… 王宮?」

 ――いいえ、彼らは絶対に私をそこへは入れないわ。

「なら……?」

 ――もう分かるでしょう?

 ルシウスは顔を上げた。王都で最も目立つ建物は当然のことながらこの国の王が住まう城だ。だがもう一つ、この都の中で存在感を放っている建造物がある。

「あれのこと?」

 ――その通りよ。でも誰でも入れる所じゃないの。

「…… つまりどうしたらいいの?」

 ――私はあそこにとらわれてから空を見たことがないの。

「なら、地下に君はいるんだね」

 ――その通りよ、私のルー。助けに来てくれるわよね?

「もちろん」

 ルシウスはふらふらと歩きながら、その建造物の地下への道を探すことにした。


 レイティアの声がはっきり聞こえるようになると、それまで思い悩んでいた全てが些末なことに思えるようになった。

 情報のない女神像を探していた頃に比べて、なんと気が楽なことだろう。

 ――こっちよ、ルー。

 彼女の声に導かれるまま、ルシウスは王都の外れ、林の中に来ていた。

「随分建物から離れてしまったけれど、本当にこっちで合ってるのかい?」

 ――あら、私が信じられないの、ルー?

「そういうわけじゃないよ」

 ――じゃあ何も心配しなくていいわ。

 彼女の声のまましばらく進むと、小さな小屋があった。何の変哲もない山小屋のように見えるが、その前には武装した神官が立っている。

 明らかにただの山小屋ではない。

「まさかあれ?」

 声を潜めてレイティアに問う。

 ――そうよ。あそこの中から地下に繋がる通路が続いてるわ。

 なるほどと思ったルシウスは木々に身を隠しながら、神官たちを観察した。外套に忍ばせていた小さなナイフを取り出して構える。

「でもまあ、相手はこれを使うほどでもないけどね……」

 ルシウスは木の陰から飛び出して、二人の神官たちに迫った。

「な、なんだお前は!?」

 驚いた彼らの声も意に介さず、ルシウスは光の力で目くらましをした後、そのまま昏倒させた。

 ――殺せばよかったのに。

 レイティアの声が響く。

「……血で汚れるのが嫌だっただけだよ」

 ――ふふ、そうね。

 いかにも楽しそうにレイティアは笑った。

 ――さあ行きましょう。

 ルシウスは小屋の扉を開ける。その中は下の見えないほど長い下り階段があった。

 ――ここを降りればもうすぐよ。

 レイティアの言葉にルシウスは頷くと、その長い階段を一歩一歩降り始めた。

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