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 一度目の時とは違い今度はすんなり屋根裏への道を見つけることができた。

 隠し方は幻術で見たときと同じだったため、鉄の棒に頭をぶつけるという愚を犯さなかった。

「よっと」

 身軽にはしごを登っていくアロンの後ろをルシウスは追った。右手の怪我のせいで、少々を上るのに手こずったが、どうにか屋根裏へとたどり着く。中の様子は幻術で見た時とさほど変わりはない。

「どこにあるんだろうなぁ……」

 そう言いながらアロンは、屋根裏の窓を開けた。長く閉じられていたためか錆び付いており開けるのに難儀していたが、最後はほぼ力ずくで開け放つことに成功した。

「よし、これでだいぶ中が見えやすいな」

 その時、外からの陽の光を受けてきらりと何かが反射するに気づいた。その光の反射をたどり、部屋の奥へとルシウスは歩いて行った。

「あ……」

「あったな」

 ルシウスの後ろからひょいと前をのぞきこんだアロンがそう言った。

 確かに「あった」。女神像は存在した。だが――

「違う……」

 ルシウスは暗い声で言った。

「おい、ルシウス?」

 異変を感じ取ったアロンが心配げに、ルシウスの顔を覗き込むとする。だがそれより前にルシウスはその女神像を()()()()()

 そう、つかみあげることができるのだ。

 その女神像は確かに水晶で出来たような透明な像であった。しかしルシウスの求めているのはこんなものではない。

 満月の光を落とし込んだような美しい月の色をした石、それでできた等身大の女神像だ。

「違う、彼女は、こんな矮小な存在じゃない……!!」

 ルシウスは激情に駆られるままに、その女神像を床に叩きつけた。

 ガシャンッ、とひどい音がして、女神像は粉々に砕け散った。それを見下ろしていても何の感情も、ルシウスの胸には浮かんで来なかった。

 ただ胸に渦巻くのは、彼女ではなかったという激しい怒りだけだ。

「お、おい、ルシウス……」

 アロンは怒るルシウスをなだめようとしているのか、ルシウスの肩に手を置いた。だがルシウスはそれを乱暴に振り払う。

「退いてくれ、僕は探さなきゃいけない。こんなものじゃない、もっと偉大な彼女を……」

  アロンはルシウスの剣幕にしばし呆然としていた。だがはっとしたようにルシウスを追いかける。

「ま、待て、ルシウス!」

「のけと言ってるだろう!?」

 激昂する ルシウスにアロンは、それ以上言葉をかけるのを少し躊躇しているようだった。だが意を決したように、ルシウスをまっすぐ見つめた。

「もう一つだけ知ってる」

「……何を」

「女神像を」

 ルシウスはアロンを睨むのを止め、少し話を聞く気になった。それにホッとしたのか、アロンの表情も多少和らぐ。

「オレも詳しいことは知らない。場所も大まかにしか知らないんだ。でも、お前がさっき壊した女神像を「矮小だ」と言えるような女神像を知ってる」

「どこにあるんだ」

「王都に。それ以上は知らない」

「……わかった」

 ルシウスはそう言って身を翻す。

「おい! ルシウス、お前はまだ怪我人なんだぞ! どこへ行くつもりだ!?」

「決まってるだろ」

 ルシウスはアロンの制止を振り切り屋敷を飛び出していった。

 行き先など決まっている。

 王都だ。

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