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気が付くと、ルシウスは花咲き乱れる庭園にいた。
「……ここは?」
庭園の東屋に腰を下ろしていたルシウスは、隣にもたれかかるレイティアを見た。
「私の思い出の場所よ」
「思い出?」
「そう……。遠い、遠い昔の思い出……」
故郷の村の領主邸より、さらに大きな――城とでもいえばいいのだろうか、そんな建物が見える。
「どんな思い出があるの?」
「私が一番幸せだった頃、それが封じ込められた記憶の園……。今はもう存在しないけれど」
「どうして?」
「はるか昔に打ち捨てられてしまったから。だから今はもう、こんな風に花も咲いていないし、美しくもない。ただ枯れ果てた草木と朽ちた廃墟があるだけの場所よ」
レイティアの言うとおり、この場所はあまりにも美しかった。彼女の想像も含まれているのだろう。
「ここに戻りたいの?」
レイティアは黙ったまま頷いた。
「でももう戻れない」
「僕がいても?」
レイティアはその問いに何も答えなかった。
「……迎えに来てね、ルー。それが私を救ってくれるから」
ルシウスは、もちろんという意味を込めて彼女を抱きしめた。