25話「二十女ティモシリモティーナは自然な魅力の持ち主(1)」
二十女ティモシリモティーナ・サーベリオは長く美しい銀の髪の持ち主。しかも瞳は宝石のように輝く、そして、その色は夜明けの空のようなもの。整った慎ましげな顔立ちには言葉では言い表せないような上品さが宿っていて、唯一無二の魅力をまとっている。派手な顔立ちではないが自然と人を惹き付ける。
……しかしそんな彼女もすべての人から愛されるわけではなくて。
「ティモシリモティーナ、お前、相変わらず地味だな」
「は、はぁ」
「もう少し華やかになれないのか?」
「そう……言われ、ましても」
「だ! か! ら! なれるように努力しろよ。そんな地味なパッとしない容姿で生きてて許されると思ってんのか?」
悪い意味での自己中心的を絵に描いたような婚約者アインツベルはティモシリモティーナに対してことあるごとにいちゃもんをつける。
「俺の婚約者でいたいならなぁ、お前、もっと努力しろよ! 相応しくあれるように!」
「ええっ……」
「はぁ!? ええっ、じゃねぇだろ! 何を勘違いしてるんだお前は!」
「そのようなことをいきなり言われましても……困ります」
「まだ分からないのか? 俺みたいな偉大な男と一緒にいたいならな、最低限、俺が言う理想的な女になろうとするってのが礼儀だろが。それすらしねぇ、努力すらしねぇ、そんな女のどこに価値がある? そんな女、どこからどう見てもただのゴミだろが」
彼はいつもこんな感じだ。好き放題、心ない言葉を吐き出す。まるで日頃のストレスを発散するかのように。そういう時、彼は、相手もまた人間であるということを少しも考慮しない。分かっていないのか、分かっていながらそういうことをしているのか、そこは定かでないけれど。ただ、相手を尊重しながら接するという発想がない、ということだけは確かなことだ。そうでなければもう少しまともな接し方をするだろう。
……だが、そんな関係が長続きするはずもなく。
終わりは突然やって来る。
というのも、ある日の晩にアインツベルが不審者に襲われ誘拐されたのだ。
しばらく捜索しても彼の姿は見つからず。
その結果彼は死亡したという扱いになることとなった。
「まさか彼がこんなことになるなんてねぇ……」
「びっくりしたわ」
「でも、これまでの行いがあまり良くないみたいだし、天罰が下ったのかもしれないわね」
アインツベルの近所の人たちは彼についてそんな風に話していた。
意外にも、誰も、本当の意味で彼を心配してはいなかった。
だがそれも彼のこれまでの生き方ゆえだろう。
とても、とても、簡単な話。
彼が生きてきた道。
彼がしてきた選択。
その果てにある現在こそが、彼の人生のすべてだ。




