24話「十九女フィーナは成績優秀」
十九女フィーナ・サーベリオは勉強が好きで、それゆえ、幼い頃から成績優秀だった。
彼女のことを知る者は誰もが言う――彼女は賢い、と。
ただ、そんな彼女でも、この世のすべてを完璧にできるというわけではなくて。
「あんたさぁ、もっと可愛くできねぇのか?」
「え」
「フィーナ、あんた、ほーんと可愛くねぇよ」
親戚の人の紹介で知り合った婚約者サウスオーベンからは可愛くないからと好かれていなかった。
「てことで、婚約破棄するから」
「……婚約破棄、ですか」
「そうそう。婚約破棄。だってさ、あんたといてもちーっとも楽しくねぇし。あんたといて良かったことなんて一個もねぇ。だからもう関係はおしまいにするんだ」
サウスオーベンは元より勉強ができるフィーナのことを良く思っていなかった。なぜなら、自分より勉強ができるから。女性でありながら自分より優秀なフィーナを彼は受け入れられなかったのだ。
「じゃあな、ばいばい」
そんな風にして。
ある日突然彼は婚約の破棄を告げた。
……それも、かなり一方的に。
フィーナは何もできないまま、理不尽に、婚約破棄されることとなってしまったのだった。
――だがその翌日サウスオーベンは亡くなった。
彼は朝早く起きていつものように家の前を散歩していたのだが、見知らぬ男に声をかけられる。そのことを不愉快に思った彼は、あからさまに睨んだ上、冷ややかな態度を取った。声は冷たく、言葉も心なく。
で、それによって見知らぬ男を怒らせてしまった。
実は闇組織のお偉いさんであった見知らぬ男は、複数人の部下を呼び出すと、部下たちにサウスオーベンをぶちのめさせる。
その結果、サウスオーベンは落命することとなった。
複数人の屈強な男たちから殴る蹴るの暴行を加えられてそれでもなおケロッとしていられるほどサウスオーベンは強くなかった。
一方フィーナはというと。
婚約破棄後、再び学問の道へ戻ることを決め、高度な学校へ入学し最高の成績で卒業。それから留学。そちらの学校でもかなり高い評価を得て、それからは研究者への道を進んだ。
女性研究者はまだかなり珍しい。
けれども彼女はその道を選んだ。
珍しい選択ではある。それは事実だ。だがその道を選んだのは彼女自身。ゆえに彼女が生きる道を選んだことを後悔することはないだろう。それは彼女が選んだ道であり、また、彼女が一番輝ける道なのだから。




