23話「十八女アンベリアは洗濯したい」
十八女アンベリア・サーベリオは洗濯が大好き。
家にいる日は大抵いつも朝から晩まで洗濯している。自分の服、家族の服、など。そして時には友人の服も。
もう、とにかく、洗濯が好きなのだ。
ゆえに彼女は周りから「良いお嫁さんになりそうねぇ」と言われながら育った。
……だが、彼女と婚約した青年オッズべーリオ・カオン・ティムシトリシカ・ティティ・ローレイは、彼女の指が乾燥していることを良く思ってなかった。
彼は口を開くたび「あの女、指先ババアでキツイ」とか「あいつはよどっかいかねぇかな」とかそんなことばかり言っていた。
そんなオッズべーリオは、ある日、泥棒と遭遇し鈍器で殴られて意識不明となってしまう。
……きっと天罰が下ったのだろう。
婚約者であるアンベリアを理不尽に侮辱した罪を償わされることとなったのだ、彼は。
「オッズべーリオ、意識不明だってさ」
「ええ~こっわぁ~い」
「けどあいつ悪いやつだもんな。婚約者さんのことも悪く言ってさぁ。性格最悪だもんな」
「ほんとそれ!」
「自業自得だよな」
「うんうん! そう思う! まさにそれ、って感じ! 性格最悪の極み!」
オッズべーリオの周囲は彼の身に降りかかった悲劇を耳にしても呑気に笑うだけだった。
その後、アンベリアとオッズべーリオの婚約はほぼ自動的に破棄となり、二人の縁はそこで切れた。
――あれから三年。
アンベリアは国内で初となる洗濯屋をオープンし大成功を収めた。
今では彼女は大金持ち。
誰もがその店の名を知っている。
アンベリアの洗濯屋、と聞いて、知らないと答える者はほとんどいないだろう――それほどの圧倒的な知名度を誇る事業によって、彼女は莫大な富を築いている。
そしてこれからも。
彼女は洗濯という道を極めた先の世界で輝き続けるに違いない。
もう誰も彼女を止められない。
……止める必要もないのだが。
アンベリアの行く道は、アンベリアだけの、その才能が無限に光り輝く道。
ゆえに、他の誰にも真似はできないし、その道を通れないよう塞ごうとしてもそんなことができる者もいない。




