2話「次女セカンディアは男勝り」
サーベリオ家の次女であるセカンディア・サーベリオは運動神経抜群の女性。万年ショートヘアで、その見た目は美男子のよう。性格も男勝りなところがある人物で、それゆえ異性との深い関わりや恋愛などは経験がなかった。
長年筋トレに励んでいたセカンディアに婚約者ができたのは、ある夏の日。
母親の姉である伯母からの紹介でローズオスという男性と婚約することとなったセカンディアは、渋々ながら彼とたまに顔を合わせるようになった。
だがローズオスはいつも文句ばかり言っていた。
ようやくできた婚約者が男性的な女性であるセカンディアであることに最初から不満を抱いていたようだ。
そんな彼はいつも周囲に「あんな男みたいなやつと婚約することになるなんて最悪だ」とか「俺の人生はなんでこんなに恵まれていないんだろう。初めてできた婚約者があんな野蛮な女だなんて」とかぼやいていた。
で、婚約から半年が経った頃に、彼は婚約を破棄する意向をセカンディアへ告げる。
ローズオスはセカンディアを急に呼び出すと「お前みたいな女と生涯を共にする気はない。そんなことをしたら不幸でしかないから。お前みたいなやつは嫌いだ、勝手にどっか行ってくれ」とはっきり述べた。
さっぱりした性格のセカンディアは「分かりました」とだけ返し、彼の前から消えた――そしてすぐに軍に入隊した。
以降、彼女が結婚の意思を持つことはなかった。
ただ彼女の人生は無意味なものではない。
なぜなら『軍隊で活躍する女性』という新しい概念の国に生み出したからだ。
男性が多い軍内でも彼女は折れなかった。そして多くの輝かしい功績を積み上げていった。腕力的には不利な女性ではあるものの、女性だからこそできることなどもこなし、周りから尊敬される人物として徐々に正当な評価を受けるようになっていった。
そこでの彼女はとても活き活きしていたそうだ。
入隊後のセカンディアについて語る者は、その多くが『彼女はいつも前向きだったし、皆が嫌がるような活動にも積極的で、肉体もそうだが何より心が強かった』と口にしていた。
女性に軍加入は無理。
誰もがそう思っていただろう。
肉体的にも、精神的にも――そこで女性が活躍することは不可能だと、皆、思っていたはずだ。
しかしセカンディアはその常識を書き換えたのだ。
女性の未来、その選択肢を増やしたのは、外の誰でもない彼女セカンディアであった。
ちなみにローズオスはというと。
後に惚れた女性にいきなりプロポーズして拒否されたことで心を病み、療養の末、ある夏の日に自ら死を選んだのだった。