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誰もが幸せな明日を掴むため前を向いて生きてゆくのです。~姉妹たちの人生の物語~  作者: 四季


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16話「十四女マリアンネレッティアは土いじりが好き」

「ふーっ。つっかれたぁ!」


 十四女マリアンネレッティアは個人的に野菜を育てている。

 彼女は幼い頃から土いじりが好きだった。

 それがいつしかレベルアップして、気づけば彼女は自分の畑を持つまでになっていた。


「美味しく育つといいなぁ」


 けれども、そんなマリアンネレッティアのことを、婚約者である青年アンドリオは良く思っていなかった。


「マリアンネレッティア! また土いじりか!」


 アンドリオは時折マリアンネレッティアの畑へやって来ては怒りをぶつける。


「あ。アンドリオ」

「いい加減にしてくれ! 婚約者が野菜を育てているなんて……そんなことを周りに知られたら大変なことになってしまう。そんなことになったら、笑い者になるのは俺なんだぞ!」

「そんなに怒らないでください」

「怒る! 怒るに決まっているだろう! 土いじりする女なんか最低女だ!」


 それはもはやなんてことのない日常。

 ゆえに誰も驚きはしない。


「今さら言われても困ります。畑のことについては婚約前にお伝えしましたよね? それでもいい、そう言ってくださったではないですか」

「あ、あれは、言わされたんだ!」

「けれど笑顔で仰っていたではないですか」

「うるさい! うるっさい! うっさいなぁもう! うっさいなぁ! うざ! うざざざざるそばうっさいなぁ! おい! うるさい! うるさい! うっさいなぁ! もう! うるさい! うるさい! うるさすぎるだろうるさいなぁ! うっさぃ!」


 こういうことは数日に一回程度は起こっていることだ。

 なので、騒がれても威圧的な言葉を向けられても、マリアンネレッティアは驚かないし動揺することもない。


「畑で野菜を育てる女なんて恥だ!」

「私の趣味については最初にお伝えしたはずです」

「恥なんだよお前は!」

「後から口出ししないように、ともお話をしたはずですが」

「うるさい! うるさい! うっさいなぁうるさいなぁもう! うっさいなぁ! うざ! うざざざざるそばうっさいなぁ! おい! うざいってば! うっざい! うるさい! うるさい! うっさいなぁ! もう! うるうるさいさい! うるさすぎるだろうるさいなぁ! うっさぃ!」


 だが、その日は、これまでとは少し違っているところもあり。


「もういい! お前との婚約なんか、破棄する!」


 彼はついに関係の終わりを切り出した。


「お前みたいなうるさい女は俺には必要ない。そんな女と一緒にいても俺の価値が下がるまけだ。ただそれだけ。何の意味もない。だからここで終わらせる。お前との関係は、すべて。すべて、だ!!」


 こうしてマリアンネレッティアとアンドリオの関係は終わったのだった。




 婚約破棄から二年半。

 あの時見事なまでにばっさりと別れた二人のその後は真逆のものとなった。


 マリアンネレッティアは農業で富を築いた大富豪の男性から求婚され結婚。今はその男性を、妻として、また農業のパートナーとしても、しっかりと支えている。好きなことを好きなようにできる今の暮らしにマリアンネレッティアは大変満足している様子で。彼女の表情は輝いている。


 一方アンドリオはというと、結婚相手を探す活動を今も続けているのだが理想的な女性には巡り会えないままだそうだ。で、それに苛立ち、同居している母親に当たり散らす毎日だとか。怒鳴る、暴れる、と、その荒れようはかなり凄まじいものだそうだ。


 幸せを掴んだマリアンネレッティア。

 何も掴めないまま荒んでいったアンドリオ。


 二人の現在はまったく異なるもの。


 つまり、その現実は――捨てた側は幸せになれて捨てられた側は不幸になるといったような単純な話ではないのだと――そう証明しているかのようだ。

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