幼馴染が独立してくれません!!(5)
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女神に対して暴言を吐いていたドーマが精霊使いであり、悪魔の主君候補である事にセシアを含めた面々が戸惑いを隠せない中、突如として銀色の毛並みを持つ犬が現れたのであった。
そして、この犬はドーマに対して『僕の主』と言っている。 ドーマはしゃがみこんで犬に視線を向けた。
「おい、主って俺の事か?てか、お前はどっからきた?」
「はい!!僕は主の精霊です!!女神様から精霊使いとして選ばれたので…」
「…よし、わかった。俺の事は『兄貴』と呼べ。んで、名前は何て言うんだ?」
「フェンリルという狼の精霊の種族でこれといった名前はありません!!兄貴!! 」
この犬はドーマの精霊で狼の精霊『フェンリル』であると言うが、伝説上の狼の精霊『フェンリル』は山のように巨大だというのを本で読んだ事があった。
目の前にいるフェンリルと言い張るがどうみてもただの犬にしか見えない。
だが、セシアやアオイと言った精霊使いとして選ばれた人材はこの犬が狼の精霊であるフェンリルだというのだ。
「あーなら、『フェンディ』って名前を付けるぞ? 色々と聞きたいこともあるし…」
「フェンディ…!!ありがとうございます!兄貴~!!」
「わぷっ!?よしよし、わかったわかった…」
「えー!? 何でドーマだけもう精霊がいるの!?何かズルいよー!!!」
確かに女神に『聖霊使い』として導かれたセシアらにはフェンディの様に姿のある聖霊がいないのだ。
何よりもフェンディはドーマにかなり懐いている様にも見えたのかセシアが嫉妬したのだ。
先ほど、女神に頬を掴まれて『聖霊使い』と悪魔の主君候補に選ばれたばかりであるのに何故すぐにフェンディは現れたのか疑問であった。
ここでは一般人に見られ目立つ為に使者達が聖霊女学園『スピリチュアン』に一度戻ってから話し合いをするというのでそれに従い、用意された場所に乗ったがフェンディがドーマの膝の上を占領するとセシアが拗ねた為にドーマはセシアとフェンディを膝に乗せて馬車に揺られてる事になった。
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聖霊女学園『スピリチュアン』の敷地に戻ってきた一行であった。だが、ドーマは先に残っているイノガムラの解体を先にすると話すと他のメンバーは寮の中に入っているように伝えた。
イノガムラの肉は良質で火を通す事で旨味が増す猪の魔獣であるが、巨体ゆえに解体作業は大の大人が数人係りでやる作業である。
だが、魔物や魔獣が棲む森で一人修行していたドーマに取ってはこれくらい何でない作業であった。
無論だが、セシアや旦那様たちの前ではやっておらず常に一人で行っていたが、アオイらが興味を示して懇願してきた為公開作業になってしまった。 公開してもしらないぞ?と釘を一応指しておいた。
すると、フェンディが尻尾を振りヨダレを垂らしてイノガムラを見ていた。
「あー…食わねぇ臓器とか食うか?てか、聖霊って食えるのか? 」
「種類にもよって違いますよ? 僕は実態があるので食べ物つまりは魔物や魔獣の肉から魔力を補充する事も出来ますよ? 」
「あー…つまりはお前は俺の魔力が元で契約が成立して実態してるって事か? んじゃ、セシア達が聖霊を実態出来ない原因はわかるか? 」
「単純に体内にある魔力と契約が成立している聖霊と釣り合っていません!単なる魔力不足ですね!! 」
イノガムラの腹を裂いて解体作業を進めながら聖霊であるフェンディに疑問であった事を訪ねると理由は単純な魔力不足だという事であった。
つまりはセシアも他の4人も体内魔力量を増やせば選んでくれた聖霊を実体化させる事が出来るという訳になる。
一通りの作業を終えて一息ついたが、いならない部分の臓器や肉をバクバク食べる辺りかなりの大食漢な聖霊であると見た。
そして、何よりも困ったのは人懐きやすい性格である。
「兄貴!!大変ですよ!!このイノガムラは相当レベルが高いみたいです!!つまりお残しは勿体ないです!! 」
「身体小せぇ癖に良く喰うな。わかった。骨も牙も喰っていいから大人しくしとけ?今からセシア達の分の飯も作るから…」
「兄貴の料理!?僕も食べたいです!!」
「フェンディよ~?お前本当に何で俺を選んだんだよ?」
自分の体格以上あるイノガムラの臓器や骨や牙を食べてなお食べるとは恐るべき大食漢である。 そして、作業を見ていたアオイらの反応はそれぞれであった。だから、辞めとけといったのにとため息をついた。
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寮の厨房にイノガムラの肉を吊り下げてアオイらに許可を取ってまずはフェンディとともに風呂に入ったが何故かセシアも入ってきたのだ。
「あのなぁ…イノガムラ解体して血ちまみれで料理できねぇだろ? フェンディは身体洗ってやらねぇと出し… 」
「だってぇ~何かドーマ取られたみたいで嫌だもん!!!」
「大丈夫です。兄貴とセシアさんの関係は知ってますから!ずっと見てましたので!」
「あ? どーいう事だよ?」
フェンディは身体を洗われながら10歳の頃には既に自分とセシアの生活を側で見ていたと言うのだ。 女神から正式な手程を受けていなかった為に実体化出来なかったというのだ。
風呂から上がるとドーマとセシアを頬をあかめて見てきたが、こっちからしたら日常茶飯事の事であるのだ。
気にする事なく厨房に入ったが、フェンディが着いてこようとしたのでセシアらに聖霊について教えてやってくれと頼むとフェンディはその指示に従った。
流石に厨房にまで着いてこられたつまみ食いの量が足りないと思ったからだ。
テキパキと作業を進めてイノガムラの肉を使ったシチューとパンをテーブルに並べてフェンディ用の火を通した骨付き肉を用意し終えると使者とアルバルトはドーマにここで生活をともにして面倒を見て欲しいと頼まれたのだ。
勿論ではあるが、ラージャタン王国から生活費などは援助されるが、結局男1人と犬一匹そして女子力壊滅の5人の物語がここから始まったのであった。