第六話 白銀の女神様
「うぅ……疲れた……」
私はそう言いながら、朝食の時もお世話になった使用人用の食事部屋の椅子に座って、机の上に上半身うつ伏せの状態になる。
あの後、結局早撃ちの訓練には苦戦して、さっきまでずっと訓練を続けていた……ほんとに疲れた。
なんか、身体も硝煙臭くなったし……早く身体洗いたい。
ご飯食べたら、さっさとお風呂に行こう。
確か、自室に備え付けられていたはずだ。
「頑張ったメイ様のご褒美として、早めに用意させていただきます……と言っても、今夜の食事をお作りになっている方はわたくしではありませんが」
「あれ? 朝食はエマが用意してたよね?」
「どうしても、ご褒美にご飯を作りたいとおっしゃっる方がいたモノで……あ、来ましたね」
厨房から、両手に料理が盛り付けられている皿を持って現れたのは……薄めのピンク色のエプロンを身につけたアイリス様だった。
「ア、アイリス様ぁ?!」
「やっほー。よく頑張ったわね、メイ!」
しかも、昨日よりも少し、いやかなりフラットになってるし。
恐らく、こっちが地だろう。
にしても、皇女様が料理出来るものなのか……ちょっと意外。
お偉いさんなんて、自分で料理しなさそうじゃん。
「ん、その顔は……私が料理しないと思ってる顔だ! 残念、出来るんだなー、これが。まぁ、趣味でやってるだけだけどね……普通、貴族とか皇族は自分で料理なんてしないしっと」
そう言って、2枚の皿を私の前に置いていく。
一枚には、パンと肉料理が盛り付けられており、もう一枚には生クリームたっぷりのケーキが盛り付けられている。
いずれも、かなり美味しそうだ。
「わざわざ、私のためにありがとうございます……アイリス様」
「いーの、これくらい。こっちの都合で、あなたの人生めちゃくちゃにしちゃったんだから。むしろ、これくらいしないと私、罪悪感でペチャンコよ」
どこまでも……どこまでも優しい皇女様だった。
支配者層の血筋にありがちな、傲慢で独善的な性格の片鱗もない。
どこまで行っても、純粋で美しい心。
まだ、彼女と出会って1日しか経っていないけれど……。
私は、彼女に惹かれつつあった。
「さ、早く食べて。感想とかも、聞きたいし」
「分かりました……それじゃ、いただきます」
まずは、肉料理の方を口にする。
……これは。
「美味しい! 美味しいですよ」
「良かったー」
彼女の作った料理に不味い料理は一品たりともなかった。