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第三話 我は勇者に有らず

お待たせしました、三話更新です!

「大丈夫ですか?」


 おっと、アイリス様に迷惑をかけちゃった。

 いけない、いけない。

 私は、セーラー服の袖の裾で目に溜まっている涙を拭う。

 ……よし、これで大丈夫。


「すみません、迷惑をかけてしまって」


「大丈夫ですよ。人生を失ったのだから、そうなるのは当たり前です。それで、自分の状況は理解できましたか?」


 そりゃ、もちろん。

 私が、この命以外の全てを失ったと言うことは嫌と言うほど理解した。

 まだ、若干俯いていた顔を上げて、しっかりとアイリス様の顔を見据える。


「はい。それで、私のことを勇者と言っていましたがそれは……?」


 正直、私なんて弓道部で適当に矢をバシュバシュ射ていただけの人間だ。

 だから、勇者なんて呼ばれるような要因はないはずなんだが……。


 勇者って……だってアレでしょ?

 RPGゲームとかに出てくる、聖剣だのめちゃくちゃ強い魔法とか使える神の寵愛を受けてる英雄中の英雄。


 私がそもそもそんなのである訳がない。


「ふふん、それはですね……」


 アイリス様は、ドヤ顔をして胸を張りながら説明を始めた。


 アイリス様が、今私たちの目の前にそびえ立っているお城の中にある凄い大きな書庫で見つけた古代のユグドラシル帝国に関する文章にこう記載されていたらしい。


 神の意志に反する魔物である悪魔が人類を滅さんとした際、第三代皇帝は異世界より呼び出した、神の加護を受けし勇者を召喚した。その勇者によって、悪魔は討伐され、人類は救われた。


 ……神の加護なんて多分受けてないよ、私。


「……という訳なんです。で、貴女も勿論神様と出会って加護を受けたんですよね?」


「……あの、その……」


「? どうしたのですか?」


「私、神様にそもそも会ってないです。そのままここに召喚されました」


「……へ? ちょ、ちょっと待ってください。右手の甲に聖痕がありますよね?」


 聖痕? 神からその加護とやらを受けた証みたいなものだろうか。

 まぁ、いいや。とりあえず、アイリス様に右手の甲を言われた通りに見せるか。

 そう思い、私は右手の甲をアイリス様に見せる。


 明かりが月の光しかないから見づらいけど……何もないねこれ。

 至って普通の、手の甲だ。


「……あ、あれ? おかしいですね。そ、それなら聖剣は?」


「見ての通り、持ってないです」


「……その背中に背負っているものは?」


「ただの弓ですね、何の変哲もない」


「……魔法ぐらい、使えますよね?」


「魔法ってどうやって使うのですか?」


「……」


 ついに黙ってしまう、アイリス様。

 ん? 肩が震え出した……?

 へ? 地面に膝をついた⁈


「ちょ、ちょっと、皇族がその姿勢は不味いのでは、アイリス様?」


「私の……私の努力は……」


「完全に無駄骨だったのですねぇぇぇぇぇッ!!!」


 そう叫びながら、アイリス様は左手で地面を殴り始めた。

 ……これって私のせい……じゃないよね?

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