第十八話 終わりの号令
これでDay5は終わりです。
完結まであと少し!
「ここは……どこですか?」
そもそも、ここは何処なのだろうか?
確か、さっきまで目の前に大きな城壁があったはずなのだが。
この湖は……流石に隠してたのだというには無理があるし。
「ここはね、神樹のある特殊な空間……かな。私たちが普段いる空間より高次な場所なんだって。で、ここに入るための鍵となるのがこの剣、入り口があの魔法陣なの。ちなみに、どんな高位の魔法使いにもあの魔法陣もこの聖剣も複製出来ないわ。神様が作ったものだから」
ふーん、要するにここは元居た世界でも今いる異世界でもない謎空間って訳か。
……うん、よく分からん。
まぁ、もうこの空間は置いておこう。
「で、儀式ってぶっちゃけ何するんですか?」
「あー、うん。ぶっちゃけ、祈るだけだからすぐ終わるよ」
メイはそのままそこに居て、と言いながら水際までアイリスが歩いていく。
そして、そこで神樹の方に向かって跪き、両手で持っている聖剣を天に向けて持ち上げる。
「ここに御坐す主の代行者たる神樹よ。願わくば、迷える我らユグドラシル帝国を安寧へと導き給え」
光の玉が飛んでいたり、いつもに増して高貴さのある装いをしているアイリスのせいで、よりこの場の神聖みが上がっている気がする。
ただ、ちょっとした祈りの句を読み上げていただけなのに、何故か見入ってしまった。
「さて、これで終わりよ。びっくりするほど短いでしょ? さ、戻ろうか?」
「あっ……は、はい」
と、再び視界が光に埋めつくされ……光が収まると目の前には先ほどまであった城壁があった。
ちゃんと戻って来たんだ。
横には、きちんとアイリスの姿があった。
ふう、安心。
そんな風な感情を抱いていると……ジャリッという音が私たちの後ろから聞こえた。
「……まさか」
私は懐から拳銃を素早く取り出し、振り向く。
そこには、黒いフード付きの上着を着ているいかにも怪しげな男性が居て……ソイツの右手にはナイフが握り締められていた。
……まさか、城内にまで刺客が来るとは。
ほんとに不味い状況なんだな、この帝国。
「チッ、バレたか」
「アイリス様、私の後ろに」
「え、えぇ」
……さて、少なくともこれでアイリスの心臓を一突き、というような最悪の状況に陥る確率は低くなった。
さて、どうしたものか。
とりあえず、銃の照準を男の頭に定める。
「一応、聞いておく。武器を捨てる気はある?」
まぁ、捨てないだろうな。
意地でも殺すって言わんばかりの鋭い目線を向けてくるし。
「へっ、決まっるだろ」
そう言いながら、男は身を屈めてナイフを私に向かって投擲する。
私は、もちろん拳銃の引き金を引く。
命を奪う一撃にしては、やけに引き金は軽かった。
相手に頭に1発風穴を開けたのを確認した後……。
「ッ……! イッたいなぁ」
腹部にはきちんとナイフが刺さっていて。
白いシャツに大きめの赤いシミが出来ていた。
開幕、話しかけずに撃てば……良かったのかしら?
……それは、恐らく私には到底無理な話だ。
平和に過ごして来た私が……問答無用で人を殺すなんて。
私の意識が遠のいていく。
「メイ、メイッ! 今すぐ治癒の魔法を」