第十六話 聖剣の巫女
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……確か、ここがアイリス様の部屋だったはずだ。
今、私は大きな扉の前に立っている。
ふむ……なんか緊張するな、扉の大きさの圧のせいで。
まぁ、仕事なのでさっさとノックしなければならない。
コン、コン、コンっと三回ノックする。
「失礼します、アイリス様」
「あ、メイ?」
「はい、そうです。今日一日アイリス様の護衛をするようにとエマから伝えられたので」
「うん、入って良いよ」
と言われたので、扉を開けて部屋に入る。
「……」
そ扉をきちんと静かに閉めてから、アイリス様の姿を見た私は思わず固まってしまう。
「えへへ。どう、かな? 一応、これがちゃんとした服装なんだけど」
彼女の服装自体は、最初に出会った時とあまり変わらない白のドレスを基礎としたものだ。
だが、あの時と違う装飾が二つある。
まず、頭の上に乗っている白銀の王冠に目が行く。
銀髪に白いドレスがある上に、この王冠が加わると元から強調されていた清楚さに加えて、皇族らしい偉大さも強く伝わる。
次に目に行くのは、両手で抱き抱えているエメラルドグリーン色の剣だ。
なんだろう、聖剣的なアレだろうか?
でも……なんかこうして見ると。
皇女というより何というか……。
まるで、皇帝と言われた方がしっくりくるというか……王冠もしてるし。
「何というか、美しいのですけど……皇帝陛下じゃないのに王冠を乗せるものなんですか?」
「あぁ……うーん、それには色々あってね」
アイリス様曰く。
どうやら、彼女の持っている剣は、神から授けられたユグドラシル帝国の象徴である授けられた聖剣なんだそうだ。
さらに、この聖剣を使える人は皇族の中でも限られていたため、建国初期のユグドラシル帝国はこの聖剣を使える者を皇帝としていたらしい。
ただ、この聖剣を使える皇族が別に為政者として優秀とは限らなかったそうで。
今では、為政者としての皇帝と聖剣を管理し祭事を取り仕切る聖剣の巫女に分かれたらしい。
ただ、聖剣の巫女は昔の名残りで祭事を行う際にはこの王冠を使うんだとか。
「なるほど……あ、ということは、今から何かしらの儀式的なのを行うのですか?」
「お、賢い。そう、最近何かと物騒なことが多いから……神様の代行である神樹ユグドラシルにお願いしに行くの。どうか、この国の動乱が収まって、平和になりますように……って。まぁ、絶対にその願いが叶うかは分からないけどね」
もう、神樹には力がほとんど残ってないからね、とアイリスは苦笑いしながら言う。
……まさしく、神頼みって訳か。
ほんとに、切迫詰まっているのだろう。
「じゃ、行こうか。護衛、よろしくね」
「任せてください」