第一話 帝国へようこそ
過去に私が書いた短編"革命の裏側で"のリメイク作品です。本作は、約10話で完結の予定です。
私は、陽が落ちて暗くなった道を歩く。
車や人はほとんど通っていない。
まぁ、田舎だから仕方ない。
電柱にある電灯も時折点滅していて、より暗さが増している。
……私、神崎命は普通の女子高生だ。
多くの人と同じよう、平凡にしかれたレールを渡っている。
今だって、弓道部の帰りに、世界史のテストの勉強をしている。
仄かに照らす月明かりを頼りに世界史の授業で配られたプリントを読む。
「んーっと……三国同盟側がドイツ、イタリア……オーストラリア? いや、オーストリアね。うーん、見づらいなぁ」
紙に顔を近づける。
あ、紙が手から滑り落ちた!
「やっば、ここら辺草まみれなのに」
そうぼやきながらも、私は中腰になって地面をよく見ながら歩き回る。
「あれぇ……どこだって、うわぁっ」
コンッ、と何かに私の頭が当たる。
この柔らかさと私の姿勢からして……人のお腹?
慌てて、頭を上げる。
「あ、すみません……ってえ?」
「あ、ほんとに召喚出来ました!」
私の目の前には、腰まで伸ばした、美しい銀髪を持つ少女が立っていた。
まるで、外国人のような顔立ち。
彼女の綺麗な青い瞳が私を射抜く。
服は、現代日本には来てる人も着こなせる人もいないであろう中世ヨーロッパの貴族や王族が着ているような高級感溢れる白い可憐なドレス。
胸元には、青く輝く大粒の宝石が付いていた。アクセサリーだろうか?
月明かりが一瞬強くなり、彼女にスポットライトが当たる。
夜風が吹き、彼女の髪が靡く。
「きれい……」
……同性にも関わらず、思わず見惚れてしまった。
「えへへ、褒められちゃいました。ありがとうございます、勇者様」
「……って、すみませんそこの方」
「ここが何処か、ですよね?」
そう、彼女ばかりを見ていたせいで気づかなかったが、ここは先ほどまで私がいた場所ではない。
草は確かに生えてたが、薔薇なんて咲いてはいなかったし、目の前にどでかいヨーロッパ風のお城なんて絶対になかった。
「……ここは、あなたが元いた世界とは異なる世界。そんな世界にあるユグドラシル帝国という昔栄えていた国です」
異世界ってヤツか。
普段なら、んな訳あるかとツッコむ所だが、ここまで先ほどとは違う風景だと素直に頷いてしまうというモノだ。
「そうですか……それで、何やらあなたが私を召喚したようなことを言っていましたが、私に何か用ですか?」
「えぇ……あなたにどうしてもやって欲しい事があります。そして、これはあなたにしか出来ないことなのです」
彼女は、私に向かって右手を伸ばす。
「どうか、私たちの帝国を救っていただきたいのです。私の勇者様」
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