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オーディナリーデイズ  作者: 志藤天音
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好きになるということ

男女の友情は成り立つか➖仁美

私と真一との出会いは大学1年の秋、もともと違うサークルに入っていた真一が、学部友達か何かの繋がりでうちのサークルに入ってきた。つかみどころのない、なよなよした男だな、なで肩だし。だけど話は面白いなという印象だった。

2年生になって、サークルの幹部が私たちに代替わりするという時に、同期で幹部決めの話し合いをしたんだけど、ちょっとその時に私たちには珍しく揉めに揉めちゃって。

というのは、その年の春に卒業したばかりのケンさんが原因不明で突然亡くなったということがあったからだ。その先輩はまさに『サークルの顔』という感じで、イケメンではないんだけど面白いし盛り上げ上手だし、みんな大好きだった。同期の女の先輩と付き合ってたけど、実は私もちょっと好きだったんだ。

私たちが1年生の時にケンさんが特に可愛がってた倉田が、私たちの中ではサークルの会長候補だったんだけど、葬儀の後からは一切サークル活動に参加しなくなった。その頃は新入生も倉田の存在をあまり知らなかったんじゃないかな。

「俺はサークルに出るとあの人のことをどうしても思い出してしまう。あの人がいたから楽しく参加出来たんだ。だから俺はサークルには出ないし、もう辞めようと思ってるんだ。だから会長なんか絶対やらない!出来ない!今日だって来たくなかったんだ。」いつも穏やかな倉田が珍しく声を荒げて主張した。

「悲しいのは倉田だけじゃないよ!そしたらうちらも何も出来ないじゃん!ケンさんがうちらにしてくれたように、うちらもサークルを盛り上げようよ!」絢香はうちの代で唯一ケンさんに勧誘されて入ったメンバーだった。後輩思いなのはケンさん譲りなのかな。

「だからっていきなり出てきて俺が会長ですってなったらおかしいだろ。誰だお前って後輩に思われるぞ。」

「じゃあ明日から毎日ホールに顔出しなよ。テニスの練習にも、今度のボウリング大会にも、イベントには毎回出て。幹部交代の夏合宿までに顔売っといて。私たちは倉田が会長じゃなきゃ嫌だから。」由香里も珍しく主張した。私は由香里が副会長だったらいいなと思ってた。

「実は俺もいたんだぞってアピールしとけ!」アユが続けて言った。

そうして倉田が会長になった。何故か女副会長には私がなってしまった。絢香と真里はお酒が強いから会計係に、他のメンバーはテニス係になった。全員で助け合いながら頑張ろうっていうことでまとまった。

結構熱い話し合いだったんだけど、どうでもいい感をずっと出してたのが真一。お酒も飲めないから途中から顔真っ赤にして寝ちゃうし。天の邪鬼的な存在だから、たまに面倒くさい。絢香なんてすでに嫌がってる。やる気無ければ来なくていいのにとすら言ってる。

私たちの代は男4人、女13人が主なメンバーだったと思う。幽霊部員みたいなのがいて増えたり減ったりしてたから、はっきりした人数は定かではないんだけど。だから男子がやるような仕事も女子がやることが多かった。お酒の席で体を張った芸を見せたりね。これもケンさん譲りなのかな。見た目はしっかり女子なのに男前な子が多かった。私たちは旅行にも男女混じって行くし、合宿でもいつの間にか同じ部屋でみんなで雑魚寝もしてたし。たまに先輩に呼び出されて行ったものの、気づくと女は自分一人だけだったっていう飲み会もあった。本当に誰も自分の身の危険を感じない、安心安全なサークルだった。謎の信頼関係があったね。

サークル内で付き合ってたのは沙織と男副会長の三宅ぐらいだった。サークル内恋愛は禁止みたいな訳の分からない決まりがあったようななかったような。一個上の代の女副会長にさとみさんという強烈な個性の先輩がいて、その人が勝手に作ったルールだったんだと思う。実際に当時サークル内で交際していた沙織は、さとみさんにめちゃくちゃいじめられてた。また、とある飲み会の後、ちょっとしたノリで由香里が後輩の男の子と手を繋いでいただけで、それをさとみさんに注意されたりしてた。だけどね、さとみさん自身もケンさんの代の会長だった人と付き合ってたんだよ!意味がわからない。自分は良いけど他人は駄目っていう中学時代の部活の先輩かと思うぐらい理不尽だった。

そんなこともあり、私自身はサークル内では恋愛しないし、出来ないなと思ってた。そもそも付き合いたいと思える男子がいなかったっていうのもあるけど。

でも、ひょんなことから真一と付き合うことになってしまった。自分でも全く想像もしなかったことなので、最初のうちはみんなに伝えることも出来ず、迷惑もかけてしまった。

男女の友情は成り立つか?こんな私が言うのもなんだけど、成り立つと思うよ。今でもそう思う。あのサークルでの活動が全てを物語ってるよ。出会いが目的だった人はあそこにはいなかったと思う。みんなあそこにいて、自分もみんなも一緒に楽しみたいっていう人が集まってたから。でもね、友達から好きになるっていうことはあると思うよ。真一みたいに。しかも真一、私が弱ってる時にすーっと入ってきたの。あいつ、そういうの上手なんだよなぁ。だけど私は真一と友達同士みたいな感覚でずっといるから、真一に対しての恋愛の好きとか嫌いっていう気持ちがあんまりない。真一には失礼かもしれないけどね。うん、結構失礼だわ。

でもなんだかんだで結婚して、望んでた子どもが産まれてさ。毎日忙しくて大変なんだけど、毎日楽しくて幸せだよ。あ、真一のフォローとかじゃないけど、真一のおかげだと思ってるよ。

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