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オーディナリーデイズ  作者: 志藤天音
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あの頃の思い出5

眠らない街『新宿』〜いつまでも2女と1男の気分〜

新宿と言えば、大学生の時はしょっちゅう飲みに来てた街だ。あちこちから通っている学生が集まりやすい場所だからなのか、サークルの大きな飲み会は歌舞伎町でやってた。新宿で飲む時は終電間際まで飲んじゃうから最後改札までダッシュしたり、切符売り場の長い列にイライラしながら並んだりしなきゃいけなかったんだよなぁ。でも学年が上がるにつれて、それすら面倒くさくなっちゃってオールで飲んでたもんね。朝、始発で帰るっていうやつ。まあ、飲んでたって言うよりカラオケボックスで喋ったり寝てたり、たまに歌って踊ったり、度が過ぎてグラス割っちゃったり、そんな感じだったけど。

最初は「女の子が飲んで朝帰りなんて恥ずかしい」って親に怒られたけど、だんだん当たり前のようになってきたのか呆れられたのか、何も言われなくなった。

最後に私たちが新宿で集まって飲んだのっていつだろう。大学卒業してからは新宿にすら来てない。西新宿で働いてる子はいたかな?どうだったかな…

でも覚えてるのは、沙織と由香里が幹事で飲み会を開いてくれたあの日だな。沙織は多分あの大晦日の騒動から立ち直ったんだと思う。

あの日は私たちの代の女子と一個下の代の男子が集まった。それでも10人以上集まってたよね。当時のサークルのメンバー構成っておかしくて、何故かうちの代は女子ばっかりで男子は4人だけ。代わりに下の代は男子ばかりで女子は3人しかいなかった。絢香を中心に下の子の面倒をよく見てたからか、私たちと後輩君たちは結構仲が良かった。ちなみにサークルでは一年生の男を1いちだん、女を1いちじょとまとめて呼んでいた。同じ感じで一個上の私たちは2にじょね。学年が上がるにつれ呼び名は変わるけど、私たちの関係はずっと1男と2女みたいにわちゃわちゃしてた。卒業後もそれぞれ数名ずつとは会ってたんだろうけど、まとまって会うのは久しぶりだった。

「にっしー!久しぶりじゃん!今仕事何やってるの?彼女は?結婚は?」

「お久しぶりです!仕事はSEです!彼女いませんし結婚もしてません!てか、この流れ3回目です!」なかなか普段から顔を出さない西岡が、みんなから質問攻めにあっているけど、みんながみんな同じ質問を浴びせてたようだ。

「沙織さん、何で今日はこの店なんですか?コンセプトは?さっき入り口にペンギンいましたけど何なんですか、この店。」

「うるさい、チャラ男。お前は黙って飲んでろ。」チャラ男こと中村に被せ気味で突っ込む絢香。早すぎておかしかった。場は盛り上がったけど、相変わらず中村は面倒くさい奴だな。

「チャラ男ー、今回はペンギンに惹かれて予約しちゃったんだよー。『ペンギンのいる居酒屋』っていう名前の店だよー。すごくない?」

「でも料理と酒は普通ですよね。」

「うるさい、いいから飲んでろ。」チャラ男と絢香のコンビ、ウケる。

チャラ男っていうのは学生時代、この代の男子で唯一奇抜なスタイルでいたからだ。金髪だったりピアスだったり。他の子は地味だったし、大人しかったから余計目立って見えた。でもサークル活動やイベントの参加率も高かったし、悪い奴ではないことは確かだ。今はもちろん金髪じゃないけど、呼び名だけチャラ男のままだった。

「そうなんだよねー、店探してたらさー、『コンパといえばセンパ』も『大馬鹿』も予約取れなくてさー。一次会から『一休』っていうのも嫌じゃーん?」沙織、懐かしい名前出してくるなぁ。ちょっと気合い入れた飲み会は『セントラルパーク』っていう店でやってた。ちょっとした集まりは『大馬鹿地蔵』っていう店で。二次会とかぐだくだな会は『一休』だった。今日の歌舞伎町はいつもに増してごった返していた。何かのイベントとかぶったのかな。それとも世間の人たちと飲みたいタイミングが重なっただけか。

確かにさ、チャラ男の言う通り、ペンギンがいたっていうだけで印象に残らない店だったよ。失礼ながら。飲み過ぎたのかな。何飲んだか(ビールに決まってるけど)何食べたか覚えてない。

「そろそろ締めよう!二次会行く人ー!」サークルの飲み会っぽい終わり方。テキパキお金集めて会計して出て行く。酔ってても、これだけはちゃんとやるんだから大したものだよ。

「二次会の場所押さえてくる!連絡するね!」と由香里が率先して出て行った。チャラ男がサラッと由香里について行く。あのチャラ男が、大人になったなぁと由香里は思った。

通りを揉みくちゃになりながら、行き当たりばったりでたどり着いた店に交渉する。席に通されたので、沙織に連絡して場所を教えた。

「全然みんな来ないね。先に飲んじゃおうか?」沈黙に耐えられなかった由香里がチャラ男に声をかけた。

「由香里さんとサシで飲むって初めてですよね。何か緊張するな。」ビールを飲みながらチャラ男が呟いた。

「ホントだ。いつもいるのに、二人は初めてだ。えーっと、ご趣味は?」ヤバいな、話題がないわと由香里は焦りながらも冗談混じりに話題を振る。早くみんな来てくれー。

「やだー、二人でラブラブじゃーん。」やっと来た。遅いよー、何やってたんだよー。

「酔っ払い大勢で歩くの大変なんだよねー。外に人がいっぱいいるしさー。」確かに、到着して早々にみんなぐったりしてる。何だよ、せっかく場所押さえたのにもうお開きか?一杯二杯飲んで解散することになった。

いやー、歳とったな。あの頃のようには飲めなくなったね。っていうか、あの頃の飲み方がめちゃくちゃ過ぎたんだろうね。無茶しなくなった分、大人になったって考えた方が良いかな。

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