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平助と王 日・台爺い絵巻  作者: 真桑瓜
13/22

『観』

『観』



蹴りが、あらぬ方向から飛んで来た。踵が真上から落ちてくる。

メイメイの躰は宙に浮いていた。

左の鎖骨をやられた、とっさに首を捻って避けたからだ。

メイメイはおよそ戦いに相応しくない格好をしていた。

ドレスのように開いたスカートの中から、縦横無尽に足が飛び出してくる。

吉田は、メイメイの躰軸の僅かな傾きから、蹴りの出てくる方向を予測するしかなかった。

スカートが目眩しとなって蹴りの初動が見えない。スカートが翻る度に、吉田の傷は増えて行く。薔薇色のスカートが、まるで闘牛士のケープのように吉田の眼を幻惑する。

いずれ、あのケープの中から十字剣が飛び出して、吉田はトドメを刺されるのだろう。

勿論、メイメイは剣など持っていないのだが、吉田はそんな幻想に囚われた。

見なければいいのか?否、見なければ確実にやられる。

今は、メイメイの軸の揺らぎだけが頼りなのだ。

見て、考えるんだ。否、見たままを感じるのだ。

武蔵はなんと言っていたかなぁ?ああ、そうだ『見の眼弱く、観の眼強し』

『そうだ、観の眼だ!』吉田は思考を断ち切った。

メイメイの躰が揺れた瞬間、吉田の一本拳がメイメイの鳩尾に突き立っていた。


「それまで!」平助の声がして、吉田は現実に引き戻された。

「吉田君、介抱してやれ」平助の声が命じた。






数日後、王は台湾へと帰って行った。誰も見送りには行かなかった。

それが王の望みであり、武術家の別れだからである。

「出逢いも別れも『一期一会』じゃからのぅ」

宴の最後に王が言った言葉だった。


ただ、吉田だけは国際線のロビーで、メイメイと見つめ合っていた。

「僕、必ず迎えに行きます・・・」

「待っています・・・」

「きっと・・・」






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