プロローグ 死ぬ間際の走馬灯
肩が熱い。
胸が熱い。
体が熱い。
――死ぬ間際の、走馬灯。
―「儲かれば良いんだよ‼︎」
「そんな幸せなんていらないわ!」
「そんなに嫌なら、何もかも捨てて出て行けよ!」―
怒声と共に、打たれる音が聞こえる。
走馬灯って、こんな物か。
もっと、幸せな走馬灯を見たかった。
肩から流れる血を見た。
熱いのに、頭だけは確かに冷静。
人は死ぬ間際に走馬灯を見るらしいし、これも通常通りのはず。
「お願いです!死なないでください!」
「ウチ、人呼んでくるわ!」
少女達が、側に駆け寄ってくる。
淡い群青色の瞳からも、茶色の瞳からも、大粒の涙が零れ落ちる。
死にたく無いと思った。
三年ぶりに、生きる意味を感じた。
手放したく無い幸せ。
手放したく無い親友。
やっと見つけた、自分の居場所。
それを守って死ねるなら、幸福。
恨むなど、もっての外で。
永遠に、貴方達の幸せと繁栄を願う。
――だから。
だから。
差し出された手に、指に、自分の指を絡める。
恋人繋ぎの様に。
愛し合っている印の様に。
そう、私は貴方達を愛する。
――だから。
泣かないで。
繋いでいない方の手で、涙を拭ってやる。
止まらない清流の様に、彼女の涙は乾かない。
彼女の嗚咽は絶えない。
揺れる尻尾。
仕切りに動く茶色い毛の耳。
そんな彼女に対して微笑みかける。
人が死ぬのは当たり前。
百歳まで生きられるとしても、期限はある。
そう、だから、
――私は八十四年早く死ぬだけ。
体は拒絶反応なのに、心だけが死を受け入れている。
ドクドクと波打つ、胸に手を当てる。
ぐらぐらと、視界が揺れて。
朦朧とする意識の中で、懐かしい声を聞く。
「貴方を、愛しているわ」
くすぐったくて、柔らかい声。
記憶の彼方にある声。
掠れた声で、声に応える。
「私もですよ。お母様」
三年ぶりの笑顔は、ぎこちなかったと思う。
プロローグなので、なんのこっちゃ、、、だったと思いますが、読んでいただき、ありがとうございます!
まだまだ素人ですが、次回も頑張ります!