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067 ドキドキなりきり大作戦! 前編

 私の名前は豊穣瀾姫ほうじょうなみき

 スキル【動物変化】で動物さんに変身出来る超エリートなスパイです!

 ふっふっふーのふー!

 と言うわけで、超優秀最強スパイな私は奴隷商人さんの一人リモーコさんに変身して、奴隷商人さんのアジトまでやって来ました。

 奴隷商人さん達のアジトは、草や木が全然生えてない高い岩山にある洞窟です。

 光が夜空のお星さまとお月さまだけなのでめちゃくちゃ暗いです。

 街灯のありがたさがよく分かります。

 いくら私がスーパーハイパーウルトラゴージャススパイでも、ちょっと怖いなって思っちゃいます。

 でも、私は頑張ります。

 奴隷商人さん達にさらわれてしまった愛那を《まな》とラヴィーナちゃんを助ける為に、怖がってなんていられません!


「ん~? 新人のリモーコだモー。お前、見張りの交代の時間はまだ終わっでない筈だモー」


 さあ、待ってて下さいね、愛那ちゃん!

 今直ぐお姉ちゃんが助けに――


「おいっ。オデを無視するなリモーコ!」


「――っへう!? す、すみません! 調子に乗っちゃいました!」


「モー? まあ、わがれば良いモー」


 あ、危なかったです。

 そうでした。

 私は今リモーコさんでした。


 本当に危ない所でした。

 つい調子に乗ってしまった私は、洞窟の出入口で見張り番をしていた牛の獣人のレバーさんに話しかけられたのに、全然自分が話しかけられてると気が付きませんでした。

 それにしても、複雑な気持ちになります。

 レバーさんはフロアタムの宮殿で、愛那ちゃんから【鬼ごっこ大会】の要注意人物として聞かされた人です。

 愛那ちゃんに勧められて、一度どんな人か見に行った事がありますけど、のんびりしていて優しそうな人だと思いました。

 でも、そんな事はありませんでした。

 このレバーさんは愛那ちゃんとラヴィーナちゃんを誘拐した張本人です。

 その誘拐犯のレバーさんに、リモーコさんに変身しているとは言え、こんなに親しげに話しかけられると変な気持ちになります。

 なんと言うか、こう……モヤモヤした感じです。

 私の大事な妹を攫っておいて、よくもそんな親しげにって、プンプンしちゃいたい気分です。


「それでお前は新人の癖に早速サボりかモー? しっがり周囲の見張りをしろモー」


「はい……」


 困りました。

 せっかくの作戦が台無しになりそうです。

 でも、ここで諦める私ではありません!


「周囲を見て来たので、今度は中の様子も見て来ます!」


「お前は周囲だげ見張っでいれば良いモー」


「そんな事ありません」


「どう言う事だモー?」


「レバーさんや他の皆さんの分も、新人として私がいっぱい見張りをしたいんです!」


「おお、中々良い心がけだモー。……ん? お前、自分の事を私なんて言ってたかモー?」


「へう、そうでした。私じゃないです。アチシです」


「そうでした? 怪しいモー」


「ご、ごめんなさい! アチシ夜になるとテンションが上がっちゃうんです!」


「……そう言う事がモー。お前はコウモリの獣人だから、それも仕方がないモー」


「は、はい」


 危ない所でした。

 危機一髪です。

 スーパー超ミラクルエリートスパイの私でなければ、正体がバレてしまう所でした。


「まあ良いモー。やる気のある奴は嫌いじゃないモー」


「ありがとうございます!」


「うんうん。それじゃあ、フロアダムで捕まえだ奴隷達が大人しぐ寝でるが見で来るついでに、お前ど同期の新人がちゃんど見張りをしでいるが見で来てぐれモー」


「分かりました。任せて下さい」


 乗りきりました!

 アチ……私の変身のスキルは完璧です!

 今度こそ愛那ちゃんとラヴィーナちゃんを颯爽さっそうと助けちゃいます!


 私は洞窟の中に入りました。

 当たり前の事ですけど、洞窟の中は更に暗かったです。

 でも、思いのほか目の前が見えます。

 いえ、見えると言うよりは、洞窟の中の構造が分かると言った方が良いでしょうか?

 多分エコロケーションです。


 この体に変身してから、実は声とは違う不思議なものを口から出す事が出来る様になりました。

 洞窟に入ってからこの正体が分かったんですけど、多分これは音波の様なものです。

 これのおかげで目の前が見えなくても、反響で周囲の事が分かるんです。


 少しの間洞窟の中を進んで行くと、大きなお部屋に辿り着きました。

 お部屋には沢山のおりが並べられていて、沢山の人が入れられていました。

 そして、何人も見張りの奴隷商人さん達がいます。


「あら? 交代の時間?」


 不意に声をかけられて振り向くと、ムッキムキなお姉さんと目が合いました。

 初めて見る人です。

 でも、私は慌てません。

 今の私は超スーパーメガスパイ。

 この程度の困難は乗り超えてみせます!


「あ、はい。レバーさんに様子を見て来てって言われました」


「レバーに?」


「はい」


「そう。……ところであなた、雰囲気変わった?」


 お姉さんが眉をひそめて私を見ました。

 大ピンチです。

 私は焦りながらもなるべく表情を変えずに平静を装います。


「アチシ夜になるとテンションが上がるんです!」


 完璧です。

 レバーさんもこれでいちころになったし、きっとこのお姉さんもいちころです。


「夜になるとテンション上がる~? な~んか怪しいわね」


 へう。

 大変です!

 余計怪しまれちゃいました!

 このお姉さん強敵です!


「オメレンカさん、ちょっと良いですか?」


「あら?」


 お姉さんのお名前はオメレンカと言う名前らしいです。

 誰かがオメレンカさんに話しかけて、何か会話を始めちゃいました。

 これはチャンスです。

 気がつかれない様にこっそりこの場を立ち去ろうと思い、私は音を立てずに先に進みました。

 先に進むと、部屋が二つに別れていたので、超優秀エリートスパイの勘を働かせます。


 決めました。

 こっちです!


 エコロケーションでこの洞窟の中はだいたい分かるんですけど、今は深夜で皆さん寝ているので正直分かり辛いです。

 起きていてくれさえいれば、何となくでも檻の中に入ってる筈の愛那ちゃんの姿を、ボンヤリとでも捉えられると思うんですけど……。

 だから、とりあえず見張りが多い方を選びました。

 愛那ちゃんは超絶可愛いので、きっと見張りもうじゃうじゃいるに違いありません!


 ここから先は更に慎重に進みます。

 それに愛那ちゃんとラヴィーナちゃんを連れて逃げる時の為の、逃走経路をしっかりと確認します。


「リモーコ、やっぱりあなたが報告にあったフロアタムから来たスパイだったのね」


「――っ!」


 不意に声をかけられて振り向くと、さっき私を怪しんでいたオメレンカさんが立っていました。

 油断してしまいました。

 私は焦りました。

 このピンチを切り抜ける方法を考えます。


「ど、どうしてそう思うんですか? わた……アチシはそんなんじゃないです」


「あら? そんなの簡単じゃない。この先ではドワーフの国の王子様を監禁してるわ。それはあなたも知っている筈で、この先は新人は行ってはならない決まりを教えたわよね?」


 ど、ドワーフの国の王子様!?

 知らないです!

 じゃあ、愛那ちゃんはこっちにはいない?

 失敗しました。

 大失敗です!


「どう言う意図でドワーフの国の王子様の所に行こうと考えたのかは分からないけど、少なくとも私達にとっての反逆行為なのは間違いない」


 どどど、どうしましょう!?

 これは最大のピンチです。

 何か良い方法は……。


「確か名前はスミレだったかしら? 私達を欺くなんて、随分となめた事をしてくれたわね」


 スミレさん?

 あ、そうでした!

 うっかり忘れていました!


 そうなのです。

 スミレさんはここで奴隷商人さん達にバティンと偽りの名前を名乗っていて、それを知ったリモーコさんが報告すると言っていました。

 それに、同じ時期に奴隷商人になったリモーコさん自身も疑われていると言っていました。

 つまりです。

 スミレさんが潜入している事は奴隷商人さん達から既にバレていて、オメレンカさんは私をスミレさんだと勘違いしてしまったという事です。

 これは大変な事です。

 だけど、私は思いました。


 もし、私がスミレさんの代わりにフロアタムから来たスパイだと思わせ通せば、今後の作戦が良い方向に進みやすくなるかもしれません!


 私は覚悟を決めます。

 愛那ちゃんとラヴィーナちゃんを助けると決めた時から、私も怖い人達と戦うと決めたんです。


「バレてしまっては仕方がありません。オメレンカさんにはここで眠ってもらいます」


 右手で魔力を集中して、そして、左手でポケットに忍ばせておいた魔石を取り出します。


 この戦い、負けるわけにはいきません!

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